可変電圧可変周波数(VVVF)制御とは

VVVFインバータ制御ともいわれ、インバータ装置などの交流電力を出力する電力変換装置において、その出力交流電力の実効電圧と周波数を任意に制御する方法です。

1.概要

可変電圧可変周波数(VVVF)制御は、電動機や電動機駆動システムで広く使用される制御手法の一つです。この方法は、電動機の速度とトルクを効果的に制御し、様々なアプリケーションに適用されています。

交流の周波数(同期速度)と同期して回る交流モータを使う場合、従来は任意周波数の電源がなかなか得られず、商用電源周波数(日本では交流50Hzまたは60Hz)固定の電源で使用させるため、設計された回転数以外の任意での速度での運転ができませんでした。商用周波数での同期速度付近でのみ運転可能で、起動トルクが小さかったり・効率を落としたり・定常運転時は大出力交流モータを軽負荷で使用していました。そうした経過で、その動作特性や、取扱い方法も商用周波数固定でのものが広く知られていました。

ちなみに、交流モータの回転数の求め方は次の様に求められます。

回転数=周波数/(極数/2) (rps:毎秒回転数)

・60Hz、2極:

 回転数=60Hz/(2極/2)=60rps(毎秒回転数)

・60Hz、4極:

 回転数=60Hz/(4極/2)=30rps(毎秒回転数)

となります。

ちなみに、毎分(rpm)にするのであれば 60を掛けた値になります。

【回転数(毎分回転数)=周波数x60/(極数/2)】

の様に回転数は固定になります。

その回転数を任意に出来る様にしたものです。

2.可変電圧可変周波数(VVVF)制御の方法

2-1 VVVFとは

VVVFは出力周波数と出力電圧を可変しますが、汎用インバータでは
【出力周波数/出力電圧】が一定になるように可変しています。
その理由を簡単に説明しますと、周波数だけを低くするとモータ電流が多くなり効率も悪くなり最悪焼損する恐れがあるからです。
・三相誘導電動機に周波数だけを下げて電圧を加えると、励磁電流が増加し磁束が増加します。磁束が増加し磁気飽和を起こすと過電流が流れ電動モータのコイルを焼損してします。

磁束=K(V/f)・・・式1

磁束は式1で計算できます。

K:比例定数(一定の値になります)。

出力電圧(V)/出力周波数(f)を一定にする事で磁束も一定になりますので焼損を防げることになります。

(*)磁束:
磁石(永久磁石)はネジや砂鉄などの鉄を吸い付けます。
これは、磁石に磁力があるからですこの時、磁石の周辺では架空の線(磁力線)がN極からS極へ向かって出ています。この磁力線の束の事を磁束と言います。

(*)磁気飽和:
磁気飽和とはその名前のとおりで、磁気が一杯になりこれ以上増える事が出来ない状態の事を言います。
磁気を発生させるのに電気磁石を用いた場合、電流を増加させると電流値に比例して増加していきます。しかしあるところで電流を増加しても磁気が増えなくなります、この状態を言います。

2-2 トルクブースト(トルク補償)

V/F制御では、基底周波数と呼ばれる周波数以下では、出力電圧と出力周波数の比を一定にするように制御します。即ち、出力周波数が低い領域ほど、出力電圧も低くなります。一方、インバータからモータに電流が流れる場合、モータ巻線での電圧降下がありますので、この分、モータに真にかかる電圧が下がることになります。電圧が下る影響は、低周波数域ほど大きく、このため低周波域でのモータトルクが低減します。これを補うために⊿ V分の電圧を上げることをトルクブースト(トルク補償)と呼んでいます。

内容が難しい・良く分からないとおっしゃる方は【トルクブースト】という言葉だけでも覚えておいてください。

(*)基底周波数:
基底周波数とは、モータが定格トルクを連続で発生できる最高の周波数を言います。一般的にインバータでは、50Hzまたは60Hzとなります。

3.VVVFの制御方式

3-1 モータ特性に合わせた制御

VVVFインバータ制御は交流モータの誘導電動機や同期電動機の基本特性に合わせて、その回転数や周波数に応じた電圧を印加する制御方式です。
以前では供給電源の周波数を任意に変更出来る装置が容易に実現する事ができなかったために、電圧を何段階かに切り替えたり・巻線の結線を変えたり・回転数のコイルにすべり周波数に見合った直列起動抵抗を挿入して最大トルクが得られる様に調整するなど、電気特性的にはイレギュラーな簡易的起動方法を採用して、起動後の定常運転状態では軽負荷で使っていました。
大電力用半導体素子が開発されインバータとして任意な周波数と電圧を生成する事ができる様になったことで、モータ特性に合わせた電力供給が実現されて定常運転出力にあった小型のモータで使用ができるようになりました。

3-2 電圧/周波数 ( V/F制御 ) 一定制御

設定されているシーケンスで電圧/周波数を連動制御=電圧と周波数は正比例するように制御されています。
モータにとっては電圧と周波数が一定の状態であることが最適で、右肩上がりの直線特性になるのです。(例えば周波数が過剰に低いと、モータ巻線インピーダンスが低下し、過大な電流が流れてしまう)

・特徴
制御回路が単純で安価である。
外乱による変化に対応しにくい。

・用途
ファン・ブロワ・圧縮機・ポンプなど、2乗低減トルク負荷の部分負荷時の省エネルギー用。

(*)2乗低減トルク負荷:負荷トルクが回転速度の2乗に比例するような負荷

4.鉄道電車車両でのVVVF制御

以前は抵抗制御でモータを駆動していた電車ですが、電車にもVVVF制御が利用されています。
電力を鉄道電車走行の動力源として適切な形に変換して主電動機(モータ)を駆動する制御装置として使用されています。
鉄道車両の様な装置では、受電した直流電源を交流電源に変換し、また走行速度などに応じて供給電力(電圧・周波数)を制御します。また、減速時は、モータからの電力を回生することができます。
これにより電車の滑らかな発進・停止や加減速を実現します。

(*)鉄道の電気
電化鉄道では直流電流の使用が多い様です。
架線や第三軌道などがプラス側となっている様です。

 鉄道用のVVVF装置は基本的にPWM方式で直流を三相交流へ変換しています。PWMはPulse width modulationの頭文字で、「パルス変調方式」とも言います。
 パルス変調方式とは簡単に言いますと、スイッチをオンにして最大電圧を出力している時間とスイッチをオフにしている時間の比率を変化させているものです。これによって出力する電圧を変化させています。
 VVVF装置は緻密な高速スイッチングを行うことで電圧を変化させ、出力する方向を周期的に反転させて交流電流の正弦波を擬似的に作っています。スイッチング素子は出力方向が逆向きの2個で回路を構成しています。このスイッチ回路を3組搭載して正弦波を120度ずつ、位相をずらした三相交流として出力しています。
 周波数と電圧の制御は、現在ではセンサレスベクトル制御方式が主流となっています。センサレスベクトル制御は、あらかじめ設定された電動機の抵抗値などの特性定数や電流・電圧から電動機の回転速度を推定して、出力すべき電圧をベクトル演算で決定するものです。低速での短時間トルクを増大させるほか、空転再粘着性能が大幅に向上しています。
 なお、交流電化区間を走る交直流車や交流車は、単相交流、三相交流をPWMコンバーター(初期はサイリスタ位相制御の整流装置)で直流に変換してVVVF装置に入力します。コンバーターとインバータを搭載しているので、制御装置を「CI」もしくは「主変換装置」とも呼びます。

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