電気事故には大きく分けて「漏電」と「短絡(ショート)」があります。
漏電については以前にお話ししていますので、今回は短絡(ショート)を主に説明いたします。
1.概要 短絡(ショート)とは
短絡(ショート)とは通常の電気回路での抵抗値が低くなることで、電気が予測していた経路ではなく抵抗値が極端に低い(抵抗値がゼロに近い状態)経路を通る(流れる)現象を言います。このことによってその回路内で非常に高い電流が流れる事になります。
短絡(ショート)程の電流は流れないが、その電気回路に流せる電流容量を超えて電流が流れる事による要因もあります。
2.短絡(ショート)の原因
短絡(ショート)が発生するにはいくつかの原因があります。
2-1 配線の劣化
配線の絶縁体の劣化や破損によって電線の内部(心線)が直接接触し合う事によって発生します。このことによって短絡(ショート)を引き起こします。特に古い建物などでは、経年劣化による絶縁不良による事もあります。
2-2 過負荷
その回路の設計値以上の過剰な電流(大電流)が流れる様な場合に配線や機器が加熱することで絶縁体が溶けて短絡(ショート)が発生することがあります。
2-3 誤配線
配線作業の際に誤って電線を接続することが原因で短絡(ショート)が発生することがあります。これは特にDIYの電気作業で起こりがちです。
(*)DIYの電気作業:DIYといっても電気工事を行うには電気工事士などの国家資格が必要となります。
*一般用電気工作物(一般家屋、小規模商店、600V以下で受電する電気設備等)では第二種電気工事士の資格が必要です。
2-4 金属片の接触
金属製の工具や異物が電気回路内に落ちてその電気回路の異なる電位を持つ部分と接触することによって短絡(ショート)が発生します。
3.短絡(ショート)による影響
短絡(ショート)が発生すると次の様な危険があります。
3-1 加熱と火災のリスク:
・配線の加熱:
短絡(ショート)によって通常の回路では想定していない大きな電流が流れると、配線が加熱します。特に老朽化した古い配線や適切な絶縁処理を施されていない配線(電線)に於いては、この時の加熱が配線の外部まで達して(伝わって)火災の引き金(要因)となることがあります。
・火災の発生:
短絡(ショート)が火花を発生させたり、加熱した配線が周囲の可燃物(紙・木材・布など)に引火したりすることで火災が発生します。電気火災は急速に拡大し建屋全体を危険にさらすことがあります。
3-2 電気機器の損傷
・回路の破損:
短絡(ショート)によって電気機器の内部回路が高電流にさらされると、電子基板や電子部品が損傷することがあります。このような損傷は修理不能な場合が多くその電気機器自体が修復不可能になることもあります。
・データの損傷:
電子機器が短絡(ショート)によって損傷した場合、その電子機器で使用(保存)しているデータが失われる可能性があります。特にパソコンやサーバなどのデータを取り扱う電子機器ではこのようなリスクが顕著になります。
3-3 感電のリスク:
・直接要因:
短絡(ショート)によって通常では電気が流れない部分に電流が流れると、その場所を触った際に感電するリスクが発生します。特に保護がなされていない金属部分や、水気がある場所などでは危険となります。
・間接要因:
短絡(ショート)によって発生した花火や熱が、感電の間接的な要因となることがあります。また短絡(ショート)により周囲の金属部品が通電状態になって感電するケースもあります。
3-4 停電や電源障害
・局所的な停電:
短絡(ショート)によってブレーカなどが作動すると、その回路に接続されているすべての電気機器が停止することになります。これはご家庭や会社オフィスなどのでは特定の場所(回路)が影響をうけます。
・広範な停電:
大規模な短絡(ショート)事故の場合は電力供給システム全体に影響を与え広範囲に停電が発生することもあります。このようなときは公共サービスや交通機関・医療機関などの活動が停止に至って大きな社会的影響を及ぼす可能性があります。
3-5 ブレーカやヒューズの損傷
・ブレーカの故障:
短絡(ショート)によって過電流が流れるとブレーカが動作してその電流を遮断します。しかしその現象が繰り返し発生するとブレーカそのものが損傷して正常に機能しなくなることがあります。
*ブレーカが動作した時はその要因を取り除いてからブレーカを復帰されることが大切なことです。
・ヒューズの溶断:
ヒューズは過電流を防ぐための電気部品ですが、短絡(ショート)によってヒューズが飛(溶断)んだ場合はヒューズの交換が必要となります。再度ヒューズを飛ばさないように要因を取り除く必要があります。
3-6 電磁的な影響
・電磁障害(EMI)の発生: 短絡(ショート)が発生することによって、強力な電磁波が周囲に放出されることがあります。この時の電磁波の影響で近くの電子機器に悪影響を及ぼし誤動作やデータの破損の破損を引き起こすことがあります。
4.短絡(ショート)の防止策
短絡(ショート)を未然に防ぐためには、次の様な対策が有効です。
4-1 適切な配線と絶縁の維持
・高品質な絶縁材料を使用:
配線に使用する電線やケーブルは絶縁が適切なものを選択しましょう。絶縁が不十分な場合電線同士が直接接触し短絡(ショート)が発生するリスクが高まります。
・劣化した配線の交換:
使用している配線が劣化した場合絶縁性能が低下することで短絡(ショート)の原因になります。特に古い建造物では配線の状態を定期的な点検を行い必要に応じて交換を行う事が重要です。
・適切な配線方法:
配線を行う際は電線が過度に曲がったり・押しつぶされたりしないような配慮が必要です。電線が物理的なダメージを受けると絶縁部の破損につながる事があります。
4-2 過負荷防止
・定格容量の確保:
回路や電気機器には各々定格電流・定格電圧があります。これらの定格値を超えないように使用することが重要です。定格値を超えて過負荷が加わると配線や機器が加熱して短絡(ショート)が発生するリスクがあります。
・過負荷保護装置の設置:
ブレーカやヒューズを使用して、回路に過負荷が加わった場合自動的に電流を遮断する仕組みを構築することで、短絡(ショート)を未然に防止することが可能となります。
4-3 正しい配線作業と保護
・正確な接続:
電気配線を行う際は正しく接続を行う事が重要です。誤配線や締め付けなどが緩いと後に接続が外れ、短絡(ショート)の要因となります。また接続箇所は確実に絶縁が施されているかを確認します。また確認が容易にできる構造や接続方法を行うと良いです。
・電線保護カバー:
電線が物理的に損傷しないように、適切な保護カバーを使用します。特に注意が必要なのは、配線が通過する壁や床の内部・家具などの後ろなどでは電線が損傷しやすいので注意が必要です。
4-4 定期点検・メンテナンス
・定期的な点検:
電気回路や配電盤の点検を定期的に行い、異常が無いかの確認を行います。特にブレーカやヒューズの状態を確認し劣化などが確認した場合は早めに交換を行います。
また内部の配線や接続部分に異常がないかも点検し異常があれば速やかに専門家による修理を行います。
4-5 湿気と水気の管理
・湿気の管理:
湿気の多い場所では、絶縁性能が低下しやすくなり短絡(ショート)のリスクが高くなります。湿気対策として除湿器や適切な喚起を行って湿度を適切に管理することが必要です。
・防水対策:
水気の多い場所での設置・配線には特に防水処理の徹底が必要となります。配線が水には触れないように配慮することが重要です。
4-6 感電防止装置の使用
・漏電ブレーカの設置:
漏電が発生した際に電流を遮断する漏電ブレーカを設置することでより安全を担保できます。
・アース(接地)の適切な設置: 電気機器本体(筐体)の確実な接地(アース)も重要な事です。漏電した際確実に電気を接地(アース)に逃がすことで感電を防止できます。