電子機器の信頼性を高めるための「設計段階での工夫」

~長期安定運用を支える設計思想と実践~

1.はじめに:電子機器に求められる“長寿命設計”の重要性

産業機器や社会インフラ向けの電子機器では、導入後10年、20年という長期運用が求められるケースも少なくありません。
しかし、電子部品の寿命・環境劣化・設計上のマージン不足といった要因が重なると、想定より早い段階で故障や不具合が発生する可能性があります。

こうしたトラブルを未然に防ぐためには、製造後の「保守」対応だけでなく、その前段階である設計段階における工夫が極めて重要です。
本稿では、電子機器を長期間安定して運用するための設計上のポイントと、保守段階を見据えた信頼性設計の考え方について詳しく解説します。


2.信頼性設計の基本方針:トラブルを“想定”して設計する

2-1 過酷環境を前提としたマージン設計

電子機器は、温度・湿度・振動・ノイズなど、さまざまな外部環境にさらされます。
特に産業機器や屋外設置装置では、想定を超える条件下で動作することも少なくありません。
そのため、定格ギリギリの部品選定ではなく、十分なマージンを確保した設計が基本となります。

たとえば、電解コンデンサや半導体部品は、定格電圧の70~80%程度で運用することで寿命を延ばすことができます。
また、熱設計では単に放熱板を追加するだけでなく、熱伝導パスや筐体内部のエアフロー設計を工夫し、発熱集中を避けることがポイントです。

2-2 MTBFを意識したシステム全体の設計

信頼性設計では、単一部品の寿命だけでなく、システム全体の「MTBF(平均故障間隔)」を考慮します。
一つの小さな基板やコネクタの不良がシステム全体の停止につながるため、**故障影響解析(FMEA)や信頼性ブロック図(RBD)**を用いて、ボトルネックを洗い出しておくことが有効です。

これにより、「どの部分が最も壊れやすいか」「予防保全すべき箇所はどこか」を可視化できます。


3.製造段階での品質確保:再現性とばらつき管理

設計上の工夫があっても、製造段階でのばらつきが大きければ、最終的な信頼性は確保できません。
そのため、量産を見据えた段階から以下のような取り組みが重要です。

  • 部品ロットの品質ばらつき管理(特にコンデンサ・コネクタ類)
  • はんだ付け条件・リフロー温度プロファイルの最適化
  • 基板実装後の外観・電気検査による初期不良の排除

また、製造工程で得られるデータを設計フィードバックに活かす「設計と製造の一体管理」も有効です。
これにより、量産時の不具合傾向を早期に把握し、設計改良につなげることができます。


4.保守段階:トラブルを防ぐ“設計段階の工夫”

電子機器の信頼性は、設計段階での「保守性の考慮」によって大きく左右されます。
ここでは、長期運用後の点検や修理が容易になるような、保守を見越した設計ノウハウを紹介します。

4-1 メンテナンス性を意識したモジュール構造

長期使用後に部品交換や基板修理を行う際、モジュール単位で取り外せる設計にしておくと作業効率が大幅に向上します。
たとえば、電源ユニットや通信モジュールを分離し、独立したユニット構造とすることで、トラブル発生時に対象モジュールのみを交換することができます。

また、コネクタ接続部分には「挿抜回数保証」を持つ産業用コネクタを採用し、ケーブル断線や接触不良を抑えることも有効です。

4-2 トレーサビリティの確保と保守情報の共有

電子機器の長期保守では、「いつ・どのロットの部品を使用したか」「どの基板がどの製造ラインで作られたか」といった履歴情報が重要になります。
バーコードやQRコードを用いた製品個体管理を行うことで、トレーサビリティを確保し、万一の不具合時にも迅速な原因追跡が可能になります。

さらに、設計図面やBOM情報を適切に管理・共有することで、将来的な修理・改修時にも設計者以外が対応できる体制を整えることができます。

4-3 部品の長期供給性を見据えた選定

電子部品の市場動向は常に変化しており、特に半導体やコントローラICなどは短いサイクルでディスコン(生産終了)となることがあります。
そのため、部品選定の段階で「供給期間の長い汎用品を採用する」「代替部品候補を事前に登録する」などの対応が求められます。

また、長期保守を前提とする場合、寿命部品の交換容易性(基板上での位置・実装密度など)も考慮して設計することが大切です。

4-4 診断機能・ログ記録の実装

保守の効率化を目的に、電子機器に自己診断機能やエラーログ機能を組み込むケースも増えています。
たとえば、電源異常や温度上昇、通信エラーなどを検知した際に自動記録し、保守担当者がPCやタブレットで確認できるようにしておくと、トラブルの原因特定が格段にスムーズになります。

IoT対応機器では、クラウド経由で稼働データを遠隔監視し、異常傾向を事前に検知する「予知保全」への応用も可能です。


5.長期信頼性を支える設計ドキュメントと社内体制

信頼性を高めるための技術だけでなく、それを支える社内の設計・品質管理体制も重要です。
設計段階での判断根拠や試験結果を文書化し、後工程や保守部門と共有することで、製品ライフサイクル全体の品質が安定します。

具体的には、次のような文書管理が有効です。

  • 設計審査記録(DR:Design Review)
  • 信頼性試験レポート(温度サイクル・振動・通電寿命など)
  • 部品代替検証記録・EOL(End of Life)情報

このようなドキュメントを体系的に管理することで、「設計者が交代しても品質が維持できる」仕組みを構築できます。


6.まとめ:設計の段階で“保守を設計する”という発想を

電子機器の信頼性向上は、単に高性能な部品を使うだけでは実現できません。
長期にわたる安定稼働を目指すためには、設計段階で保守性を織り込むことが不可欠です。

  • 使用環境を考慮したマージン設計
  • 故障影響を分析したシステム設計
  • 部品選定・配置における交換性の確保
  • トレーサビリティと情報共有の仕組み化

これらを意識的に取り入れることで、保守現場での負担を減らし、製品の信頼性と企業のブランド価値を高めることができます。

東阪電子機器株式会社では、設計から製造・評価・保守支援まで一貫した体制でお客様の製品開発をサポートしています。
長期安定運用を実現するための信頼性設計・カスタマイズ開発など、ご相談はぜひ当社までお問い合わせください。

モーションコントロール、ODM開発のご相談は東阪電子機器へ

大切にしているのは、お客様とのコミュニケーション。
22業界・1,700機種の開発実績を有する弊社の専門スタッフが、
お客様のお困りごとに直接対応させていただきます。