試作段階で失敗を防ぐ設計支援|東阪電子機器(株)

電子機器開発において、試作段階は「仕様を形にする重要なプロセス」であると同時に、「失敗が顕在化する工程」でもあります。量産開始後に発覚する不具合は、コスト増大・納期遅延・信頼低下といった重大なリスクにつながります。そのため、試作段階でどれだけ問題点を抽出し、設計へフィードバックできるかが、開発成功の鍵を握ります。

本コラムでは、試作段階での失敗を未然に防ぐための設計支援の考え方と具体策について、産業用電子機器開発の視点から体系的に解説します。


なぜ試作段階で失敗が起こるのか

仕様の解像度不足

多くの不具合は、設計ミスそのものよりも「仕様の曖昧さ」から生まれます。
要求仕様が抽象的なまま設計が進むと、設計者ごとの解釈差が生じ、完成後に「思っていたものと違う」という事態が発生します。

特に産業機器では、温度環境、振動、ノイズ耐性、連続稼働時間など、使用条件の詳細定義が不可欠です。これらが曖昧なままでは、試作段階で初めて問題が顕在化します。

回路・基板設計と実装条件の乖離

理論上成立する回路でも、実装や配線レイアウトによって性能が大きく変化します。
例えばスイッチング電源やモータ制御回路では、グランド設計や配線インダクタンスの影響によりノイズが増幅されるケースがあります。

このような現象は、回路図だけでは見えにくく、基板試作によって初めて明らかになります。

評価項目の不足

試作評価が「基本動作確認」にとどまってしまうと、潜在的なリスクを見逃します。
温度上昇試験、ノイズ試験、長時間連続運転試験などを実施しなければ、量産後に不具合が発生する可能性があります。


失敗を防ぐ設計支援の基本アプローチ

試作段階の失敗を防ぐためには、単なる「試してみる」工程ではなく、「検証前提の設計支援体制」が必要です。

上流段階からの設計レビュー

開発初期段階で設計レビューを実施することで、構造的なリスクを事前に排除できます。
ブロック図レベルでの機能分解、インターフェース確認、電源容量の妥当性検証などを行うことで、試作回数を減らすことが可能です。

リスク洗い出しと優先順位付け

FMEA(故障モード影響解析)の考え方を活用し、想定される故障モードを整理します。
特に電源系、発熱部品、外部接続部は重点管理対象とし、設計段階で安全マージンを確保します。

段階的試作(スモールステップ化)

いきなりフル機能試作を行うのではなく、機能単位で検証を進める方法が有効です。
たとえば制御部とパワー部を分離評価することで、トラブルの原因切り分けが容易になります。


基板設計段階での具体的対策

レイアウト最適化とノイズ対策

高電流経路と信号ラインを分離し、ループ面積を最小化することが重要です。
デカップリングコンデンサの配置、グランドプレーン設計、シールド検討などを試作前に検証します。

EMC対策は後付けが難しく、初期設計段階での配慮が不可欠です。

熱設計の事前シミュレーション

発熱部品の配置と放熱経路を検討し、ヒートシンクや筐体との熱結合を考慮します。
温度上昇が部品寿命に直結するため、試作段階での温度測定は必須です。

部品選定のリスク管理

EOL(生産中止)リスクや納期長期化リスクを考慮し、代替品を想定した設計を行います。
特定メーカー依存を避けることで、量産移行時のトラブルを防止できます。


試作評価プロセスの高度化

評価計画書の作成

評価項目、判定基準、測定方法を明文化します。
曖昧な評価では再現性がなく、改善につながりません。

環境試験の実施

高温・低温環境、振動環境での動作確認を行います。
産業用途では「通常動作する」だけでは不十分で、「環境変化下でも安定する」ことが求められます。

長時間連続運転試験

初期不良や熱暴走は、一定時間経過後に発生する場合があります。
連続稼働テストにより、信頼性を事前確認します。


設計支援体制がもたらすメリット

試作回数の削減

設計レビューと事前検証を徹底することで、無駄な再試作を防ぎます。
結果として開発期間短縮につながります。

コスト最適化

量産後の手直しは、試作段階の修正に比べて数倍のコストがかかります。
早期対策はトータルコスト削減に直結します。

品質信頼性の向上

設計段階からリスクを可視化し、評価を重ねることで、製品の信頼性が向上します。
顧客満足度の向上にもつながります。


近年、製品開発のスピード向上や開発リソースの最適化を目的として、ODM 形態を採用する企業が増えています。ODMでは、設計・試作・評価・量産準備までを一貫して担うため、試作段階での完成度がそのまま量産品質に直結します。そのため、単なる設計代行ではなく「設計支援力」が極めて重要になります。


ODM開発における設計支援の重要性

近年、製品開発のスピード向上や開発リソースの最適化を目的として、ODM 形態を採用する企業が増えています。ODMでは、設計・試作・評価・量産準備までを一貫して担うため、試作段階での完成度がそのまま量産品質に直結します。そのため、単なる設計代行ではなく「設計支援力」が極めて重要になります。

以下に、ODM開発における設計支援の具体的な意義を整理します。

要求仕様の翻訳力が成否を分ける

ODMでは、お客様から提示されるのは「完成イメージ」や「必要機能」であることが多く、技術仕様として完全に整理されているケースは少なくありません。

そのため、設計支援の第一歩は「要求を技術仕様へ翻訳する作業」です。

  • 使用環境条件(温度・湿度・振動)
  • 寿命・稼働時間
  • 安全規格やEMC適合要件
  • コストターゲット
  • 将来的な拡張性

これらを整理せずに設計を開始すると、試作段階で想定外の条件が判明し、やり直しが発生します。
ODMにおける設計支援とは、単なる図面作成ではなく「仕様定義の共同作業」でもあるのです。


設計と製造の一体最適

ODMの強みは、設計部門と製造部門が密接に連携できる点にあります。

例えば、

  • 実装しにくい部品配置
  • 特殊工程を必要とする構造設計
  • 調整工数が多い回路設計

これらは設計段階で配慮しなければ、量産時にコスト増加や歩留まり低下を招きます。

設計支援が充実している体制では、試作前レビューの段階で製造視点のフィードバックが入ります。これにより、

  • 組立性(DFMA)
  • 実装安定性
  • 検査のしやすさ
  • 保守性

までを含めた設計最適化が可能になります。

つまりODMにおける設計支援とは、「動けば良い設計」ではなく「量産しても安定する設計」を作り込むプロセスなのです。


リスクの前倒し検証

ODMでは、開発期間短縮が求められる一方で、品質保証責任も伴います。そのため、試作段階でどれだけリスクを前倒しで潰せるかが重要です。

具体的には、

  • 熱設計の妥当性確認
  • ノイズ耐性評価
  • 電源余裕度の検証
  • 長時間連続運転テスト

といった評価を、量産前に徹底します。

設計支援が弱い場合、試作は「形状確認」に終始し、潜在的な不具合が残存します。しかし設計支援が強固な体制では、試作は「信頼性検証の場」となります。


小ロット・多品種時代への対応

産業機器分野では、小ロット生産やカスタム対応が増加しています。この場合、試作回数を何度も重ねる余裕はありません。

初回試作の完成度を高めることが、事業性そのものを左右します。

設計支援体制が整っているODMでは、

  • 事前リスク洗い出し
  • モジュール化設計
  • 代替部品想定設計
  • 拡張インターフェース確保

などを計画的に行うため、仕様変更にも柔軟に対応できます。


情報の一元管理と改善サイクル

ODMでは、設計・評価・製造の情報を一元管理することが可能です。
試作評価で得られたデータは即座に設計へフィードバックされ、改善サイクルが短縮されます。

この循環が確立していると、

  1. 不具合原因の特定が早い
  2. 改善設計への反映が迅速
  3. 再試作の回数が減少

という好循環が生まれます。


まとめ:ODMにおける設計支援は「品質保証機能」

ODM開発において設計支援とは、単なる技術サポートではありません。

  • 仕様の明確化
  • 製造性を考慮した設計
  • 信頼性検証の前倒し
  • リスクの可視化
  • 情報フィードバック体制

これらを包括する「品質保証機能」と言えます。

試作段階での完成度が量産品質を決定する以上、ODMにおける設計支援力は企業競争力そのものです。

単なる開発委託ではなく、パートナーとしての設計支援体制を構築できるかどうかが、成功するODM開発の分岐点になるのです。

Q
なぜ電子機器開発では試作段階で不具合が多く発生するのですか?
A

主な原因は「仕様の曖昧さ」と「設計と実使用環境のギャップ」です。

要求仕様が十分に整理されないまま設計が進むと、温度条件・振動・ノイズ耐性・連続稼働時間などの重要要素が抜け落ちます。その結果、試作段階で初めて問題が顕在化します。

試作は単なる動作確認ではなく、「設計仮説を検証する工程」と位置づけることが重要です。

Q
試作回数を減らすために有効な対策は何ですか?
A

有効な対策は以下の3点です。

  1. 上流段階での設計レビュー実施
  2. リスク洗い出し(FMEA的視点)の導入
  3. 段階的な機能分割試作

特に初期設計レビューでは、電源容量、熱設計、ノイズ対策、部品選定リスクなどを重点確認します。

事前検証を徹底することで、無駄な再試作を防ぎ、開発期間短縮につながります。

Q
ODM開発において設計支援が重要とされる理由は何ですか?
A

ODM では、設計から量産までを一括して担うため、試作段階の完成度がそのまま量産品質に直結します。

設計支援が不十分な場合、量産時に以下の問題が発生します。

  • 実装不良の増加
  • 歩留まり低下
  • 調整工数増大
  • 納期遅延

設計支援とは単なる図面作成ではなく、「量産を見据えた品質作り込み機能」といえます。

Q
試作評価ではどのような試験を行うべきですか?
A

基本動作確認だけでなく、以下の評価が重要です。

  • 温度上昇測定
  • 長時間連続運転試験
  • ノイズ耐性確認
  • 電源変動試験
  • 外部環境ストレス試験

特に産業機器では、「通常環境で動く」ことよりも「過酷条件下でも安定する」ことが求められます。

評価計画書を作成し、判定基準を明確化することが再現性確保のポイントです。

Q
小ロット開発でも設計支援は必要ですか?
A

むしろ小ロット開発ほど設計支援が重要です。

小ロットでは試作回数を重ねる余裕がなく、初回試作の完成度が事業性を左右します。

  • 代替部品を想定した設計
  • モジュール化設計
  • 将来拡張を考慮したインターフェース設計

これらを事前に組み込むことで、仕様変更や部品供給リスクにも柔軟に対応できます。

モーションコントロール、ODM開発のご相談は東阪電子機器へ

大切にしているのは、お客様とのコミュニケーション。
22業界・1,700機種の開発実績を有する弊社の専門スタッフが、
お客様のお困りごとに直接対応させていただきます。