ロードセルは、力や圧力等の荷重を測定するために電気信号に変換する装置に使用されるセンサーです。主に産業・研究・自動化・一般家庭向けなどの幅広い分野で使用されています。
1.概要
一般的なロードセルでは、ひずみゲージ式が用いられており、起歪体と呼ばれる弾性体にひずみゲージに貼り付けられた金属箔が、微小な変形により伸縮して断面積が変化することにより抵抗値が変化します。
この変化は荷重に比例するため、抵抗値の変化から起歪体に加わった荷重を算出すること出来ます。内部のひずみゲージはホイートストンブリッジを構成するように結線されていて、微小な電圧の変化を検出でき、200 mN(20 gf)の低容量から20 MN(2000 tf)クラスの高容量までの製作が可能です。
ロードセルの主な仕様項目に定格容量があります。定格容量とは負荷荷重に衝撃係数などを考慮した値で、必要とされる分解能・強度・測定精度を満足するように選定します。
一般にロードセルで試験対象となる特性としては、負荷特性・クリープ特性・温度特性・電気的特性・疲労特性・四隅誤差・固有振動数などがあります。
ロードセルの品質については各国で独自の規格を設定し性能検査を行っています。日本の計量法では独自の規格を設定していませんが、性能試験方法としましてJIS(電気式ロードセル性能試験方法 JIS B7602)や JMIF[日本計量機器工業連合会]の 「ロードセルの性能試験方法」で規格化されています。また、はかりに使用するロードセルを対象にOIML(国際法定計量機関)では「「ロードセル」に関する計量法上の規制」」という国際勧告を制定していて、各国の規制はこの勧告と整合性をもつようになっています。
(*)起歪体:起歪体は文字通り外力によりひずみを発生させる部品です。力を起歪体に加えると起歪体にひずみが生じ、起歪体に貼り付けてあるひずみゲージの抵抗値が変化します。
2.ロードセルの原理
ロードセルは表面にひずみゲージと呼ばれる抵抗器がはりつけられていています。このひずみゲージとは導電体が絶縁シートに貼り付けられたものです。 ロードセル本体に力が加わることでこのひずみゲージが変形し、その変位量に応じて電気抵抗値が変化する事でこの電気抵抗値の変化量を計測し力(荷重・トルク)を測定しています。
ロードセルの中には、このようなひずみゲージを複数個配置しています一般的には4個のひずみゲージを使用してホイートストンブリッジと呼ばれている回路が形成されています。ホイートストンブリッジのひずみゲージが変化して電気抵抗が変化(増減)することで、微小な電圧が出力されます。この微小な電気信号を増幅させることで、荷重を数値として用いる事が出来る仕組みになっています。
ロードセルの出力の単位は、mV/Vで表されます。
たとえば、
・定格容量:50N
・出力:20mV/V
の場合、50Nの負荷で印加電圧が1Vとしたとき。
20mVの出力がされます。
このように、ロードセルから出力される電気信号(電圧)は20mVと非常に小さな電圧です。この小さな電圧をさらに1000分の1・10000分の1までに分割して使用(計測)するため使用する計測機器は安定性が高く・精度が高いものが要求されます。また、使用される環境が悪い場合もありますのでノイズ等の不要な信号の影響を受けずに必要とする信号だけを取り出す技術が必要となります。
3.ロードセルの種類
ロードセルには色々な分類方法がありますが、荷重方向に分類と形状による分類について。
3-1 荷重方向による分類
①圧縮力センサー:
このタイプのロードセルは、荷重がセンサーに加わると圧縮されることによって動作します。一般的には、上向きの力(垂直下向き)を測定するために使用されます。
②引張力センサー: 引っ張り荷重を測定するために使用されるロードセルです。センサーは、力が加わると引っ張られることによって変形し、その変形を測定します。
③ ①と②の圧縮方向と引張方向の両方を測定できるロードセルもあります。
④曲げセンサー: このタイプのロードセルは、物体や構造物に加わる曲げ力を測定するために使用されます。センサーは曲げによって変形し、その変形を測定します。
これらは一般的なロードセルの分類ですので。特定のアプリケーションや用途に応じて特殊なロードセルもあるかと思います。
3-2形状による分類
ロードセルの形状には、大きく「ビーム型」、「コラム型」、「S字型」、「ダイアフラム型」の4つがあります。
①ビーム型
ビーム型とは、一端が固定されていてその反対側(もう一端)が自由に動く、飛び込み台のようにたわんで荷重を計測するタイプです。ビーム型ロードセルは、曲げ荷重やせん断荷重を計測するのに特に適した形状のロードセルです。高精度のロードセルで、1トン程度までの荷重域で用いられます。
②コラム型
コラム型とは、ボディが円柱形状になっていて、円柱の高さ方向にかかる荷重を測定できるタイプです。コラム型ロードセルの内部には、圧力を受けて変形する金属製のスプリングがあります、このスプリングに設置されたひずみゲージが変形量を電気信号に変換します。大きな荷重を測定する場合により適したタイプです。
③S字型
S字型とは、その名の通りS字型をしているロードセルです。S字の真ん中の棒状のバネがあります荷重がかかることで変形し、荷重を除くと元に戻る構造になっています、ひずみゲージによってその変形を電気信号に変換しています。S字型は、圧縮荷重、引張荷重の両方を測定するのに適していて、1トン程度までの荷重域で用いられます。引張強度試験機や、材料疲労試験機などに用いられるのも、このS字型のロードセルです。
④ダイアフラム型
ダイアフラム型とは、円型の形状をしたロードセルです。円の裏型に貼り付けられたひずみゲージを使って、主に圧縮荷重を検知する目的で用いられます。高さを低くできるメリットがある一方で、精度が他のタイプに比べてやや劣るデメリットがあります。
4.ロードセルの使用例
ロードセルの用途は多岐に及んでいますが、主なロードセルの使用例です。
4-1計量器具
電気表示式の台はかりや、体重計などの計量器具でもロードセルが用いられています。産業用途の計量だと、タンクの内部にある液体等の重量を計測する目的でのロードセルが使用されています。
(*)電気表示式の台はかり:このタイプが一番よく見かけるのではないでようか、スーパやデーパートなどではかり売りで食品などを購入する時には必ず目にしているかと思います。
4-2医療機器
ロードセルは医療用機器でも用いられています。代表的なのは点滴バッグの液体や生理食塩水の重量を計測して点滴バッグの補充が必要となるタイミングを検出する目的で使用されています。 他には、骨や組織の損傷を防ぐために、手術中の執刀医師にフィードバック情報を提供したり、手術後やリハビリ中の筋肉の状態に関する情報提供したりするときにもロードセルが使われます。ロードセルを人工関節がある義足に搭載することで、地面と義足との間の反応を正確に測定することが可能になりますので近い将来には使用できるようになるかもしれません。
4-3荷重・衝撃試験
ロードセルは材料や製品の強度を調べるための試験でよく用いられます。たとえば、材料の引張試験や曲げ試験、自動車の衝突試験などが特徴的な使用例です。ロードセルを使えば、荷重の大きさ、時間軸での変化を正確に読み取れ容易に記録する事が出来るので、材料の物性や製品の基本的性能を確認する上で役立てられています。