電子部品【ヒューズ】とは 

定格以上の大電流から電気回路を保護、あるいは加熱や発火といった電気火災事故を防止する電気・電子部品のことです。 

1.ヒューズの概要 

電気回路内に置かれ、普段は導体として振る舞います。しかし何らかの異常によって電気回路に定格以上の電流が流れると、ジュール熱により内蔵する合金部品(ヒューズ)が溶断(ようだん)し、回路を開くことによって回路を保護します。 

ヒューズは溶断する電流の大きさにより、導体部分の大きさ・太さ・構成成分が異なります。導体部分は露出もしくは容器に収められています。容器に収める場合は導体の状態を確認できるよう、容器が透明であったり、表示器を設けるなどしています。 

ヒューズが溶断することを日本語では一般的に「ヒューズが切れる」とか「ヒューズが飛ぶ」と言います。回路を焼き切って作動するという性質上、使い捨てです、一度動作(溶断)したヒューズを再び使用することは出来ません。 

熱(電熱)を利用する機器(ドライヤー、コタツなど)では、設定以上の温度に達すると自動的に通電を遮断する温度ヒューズを使用されている場合が多いです。 

一般的に、ヒューズが切れた場合はヒューズを交換することで復旧する事が多いので、ラグ端子やソケットなど交換しやすい構造となっています。しかし近年の小型化した電子機器等では、ヒューズが直接半田付けされていたり、表面実装型の薄膜ヒューズのように、ヒューズが作動した後の復旧(容易に交換)を想定していない実装も存在しています、これらは電気回路を保護するよりむしろ、大電流によって機器が加熱、発火するなどの事故を防ぐことを主目的に用いられています。 

(*)ジュール熱: 

イギリスの物理学者の名前で呼ばれているジュールの法則による、「導体に電流を流した時に発生する熱」の事です。 

電気抵抗R(Ω)の物質にⅠ(A)の電流をt(秒)間流した時に発生する熱量【ジュール熱】の量Q(J)は 

Q=RxⅠxⅠ(Ⅰの2乗)xt 

となります。ジュール熱量は、抵抗Rと電流Ⅰの2乗の積に比例します。 

身近でこれを利用したものは、最近では電磁調理器が増えてきましたが、炊飯器・電気コンロ・トースター・電気ストーブ(赤外線)等があります。 

2.ヒューズの種類 

ヒューズは過電流が流れると溶断します。溶断のしやすさにより、【速断型】・【タイムラグ型】・【普通溶断型】の種類のヒューズがあります。 

2-1 速断型ヒューズ(ファストブロー) 

速断型ヒューズは、過電流が流れると瞬間的に(即)溶断するヒューズです。 

そのために、モーターの起動や電源回路の起動時に生じるラッシュ(突入)電流には耐えることができません。 

速断型のヒューズは、エレメントの形状を部分的に細くすることで容易に溶断するようになっています。 

定格電流の表記の前に「F」が記載されてあると速断型のヒューズになります。例えば、電流容量10Aの速断型ヒューズは「F10A」の様に記載がされます。 

・速断型のヒューズは「ファストブロー」や「即動溶断型」とも呼ばれています。 

・速断型のヒューズは英語では「Fast Acting Fuse」と書きます。 

2-2 タイムラグ型ヒューズ(スローブロー) 

タイムラグ型ヒューズは、溶断時間を長くすることで瞬間的な過電流では溶断しないヒューズです。モーターの起動や電源回路の起動時に生じるラッシュ電流でも動作(溶断)しないように作られています。 

タイムラグ型のヒューズは、放熱性を高めるために、エレメントの形状を「スパイラルに巻き付ける」等を行うことで容易に溶断しないようになっています。 

定格電流の表記の前に「T」が記載されてあると速断型のヒューズになります。例えば、電流容量10Aの速断型ヒューズは「T10A」の様に記載がされます。 

・タイムラグ型のヒューズは「スローブロー」や「遅延型」とも呼ばれています。 

・タイムラグ型のヒューズは英語では「Time Lag Fuse」と書きます。 

2-3 普通溶断型のヒューズ(ノーマルブロー) 

最もよく使用されているタイプのヒューズです。通常ヒューズといえばこの普通ヒューズとなります。 

速断型ヒューズやタイムラグヒューズの様に、定格電流の表記の前にアルファベットが記載されていない場合、普通溶断型のヒューズとなります。例えば、10Aの普通溶断のヒューズは「10A」のように記載がされています。 

・普通溶断型のヒューズは「ノーマルブロー」とも呼ばれています

3.ヒューズの電流値について 

ヒューズに流れる電流値と溶断時間の関係は

の様になります。 

ヒューズの仕様書やデータシートには主に次の用語が出てきます(記載)。 

3-1 遮断電流 

ヒューズが破壊することなく、安全に遮断する事ができる電流です。 

この電流値を超える場合、ヒューズに亀裂が生じたり、場合によってはヒューズが破壊する可能性があります。 

そのため、ヒューズに流れる電流がこの遮断電流を超えるような場合、1ランク上(遮断電流容量の大きい)の遮断能力を持つヒューズに変更する必要があります。 なお、ヒューズが破壊すると、ヒューズエレメントが飛び散るため、安全規格上では不合格となります。 

この遮断電流は遮断定格電流、定格遮断電流、定格遮断容量、許容電流とも呼ばれています。 

3-2 溶断電流 

ヒューズが(仕様書・データシート等の)溶断特性に従って溶断する時の電流のことです。 

流れた過電流値によって、切れる時間が変わってきます。 

使用するヒューズの仕様書(データシート)にある溶断特性を参考にしてください。 

3-3 定格電流 

そのヒューズに表示(記載)されている電流値です。 

例えば、ヒューズに【5A/250V】と表示されていれば、【5A】がそのヒューズの定格電流となります。 

・因みに【250V】は定格電圧を示し、異常電流を遮断できる最大電圧です。 

 (この定格電圧もヒューズの選定時注意が必要です。) 

ヒューズに定格電流を流しても溶断はしませんので注意してください。(定格電流を流すと溶断すると勘違いする方がいらっしゃる様です) 

ヒューズの定格電流は、その値の電流までは通常は切れないことを表します。 

定格電流を超える電流が流れると、ヒューズの溶断特性により、ある時間経過後にヒューズが溶断します。 

3-4 定常電流 

通常状態時にヒューズに流れる電流です。 

定常電流は定格電流に対して、定常ディレーティングと温度ディレーティングを掛けた値以下にする必要があります。 

式で表すと以下のようになります。 

定常電流≦定格電流×定常ディレーティング×温度ディレーティング 

例えば、定格電流2Aのヒューズにおいて、定常ディレーティングが0.8・温度ディレーティングが0.9の場合では通常時に流れる電流は、 

2×0.8×0.9=1.44[A] 以下でないといけません。 

3-5 ヒューズの選定 

ヒューズの溶断特性はその既定の電流値を超えた場合の遮断性能を表したもので、ヒューズによって異なります。また他にも接続端子などに耐熱加工がされていたり、耐熱性を高めてヒューズ本体の寿命を延ばしたものなどがあります。 

誤った選定をしますと期待した「状態」でヒューズが「溶断」せずに、異常電流が流れ続けてご使用の電子機器の危険性が高まります。そのため、回路の電圧や定常電流・取り付け方法・使用環境・溶断特性などを基準に、適切なものを選ぶことが必要です。 

また、通常使用時には溶断しないことが重要で、通常使用時の異常な状態(電源オンオフ時の突入電流等)も考慮に入れて選ぶことが必要です。 

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