エージング試験とは

エージング(またはエイジング)は、機械や電子機器などの出荷前に行われる稼動試験、または使用開始前に行われる「慣らし運転」のことも指します。

1.エージング試験の概要(目的)

1-1エージング試験の目的

エージング試験の目的は、機械や電子機器が長期間にわたって正常に動作することを確認するために行う試験の事です。

エージング試験は製品を一定期間動作させて初期不良を発見し除去する工程です。完成品は出荷前に動作チェックを行いますが、これは言葉の通りの「動作チェック」ですので、実際の使用条件とは異なります。よってその製品に応じた時間運転する事で不具合など初期不良を発見するのが目的です。

①信頼性の確認:

エージング試験は、製品が設計(要求)仕様に基づいて正しく動作して、故障しない事を確認するために実施します。一定時間の運転を行うことにより、潜在的な問題や欠陥が発生し修正・改善が必要となる事もあります。

②パフォーマンスの評価:

エージング試験は、製品のパフォーマンスが使用時間の経過とともにどのような変化が発生するかを評価するためにも行われることがあります。例えば、電子部品の特性や信号伝達の安定度の評価を行います。

③寿命の予測:

製品の寿命を予測するためにエージング試験を行うこともあります。これによって、その製品の耐久性や耐用年数の評価を行い、ユーザに対して適切な情報を提供する事に使用します。

④安全性の確認:

その製品を長時間運転する事によって、製品の異常発熱(加熱)・異常な挙動(振動など)を起こす事が無いかを確認します。この事で製品の安全性の確認を行います。

1-2 耐久評価としてのエージング試験

主に開発段階または製品出荷と平行して製品の耐久評価として行う方法として次の方法もあります。

①初期不良(故障)発見:

製品を実際の使用環境と使用方法(定められた温度・一定の電流又は負荷)で一定時間動作させることで、故障が発生するか・仕様通りの性能が出ているのかを判断します。これは初期不良の発見に役立ちます。

②寿命加速・耐久性評価:

熱や負荷(高温・低温、多湿、高負荷など)の過度なストレスの基で連続運転を行う事で、劣化を加速させて経年変化を早めて劣化を評価することで、製品寿命を推測します。

最近では信頼性や製品工程の品質向上に伴って、短時間のエージング試験で発生(発見)する初期不良・初期故障は以前に比べて減少していますので、耐久評価(加速劣化試験)を目的に行われる事が多くなってきているそうです。

2.エージング試験の方法

2-1 初期不良(初期故障)発見のためのエージング方法

出荷製品に対して行う試験ですので、あまり製品に負荷・負担となる(製品寿命に影響するような方法)やり方は行いません。通常定格状態(電源電圧など)で一定時間運転(通電)を行います。

例1 定格AC100V(±10%)であれば。

 試験電圧を+10%なら110V または -10%なら90Vで1時間動作を行い異常状態にならないか。

例2 電源のON―OFF試験

定格の電源電圧にて、一定間隔で電源ON・電源OFF を一定時間(例えば1時間)繰り返す試験を行い試験終了後異常状態にならないか。

例3 例1と例2の複合で試験を行う方法。

電源電圧を+10%又はー10%にて、一定間隔で電源ON・電源OFF を一定時間繰り返す試験を行い試験終了後異常状態にならないか。

機構製品の場合:機器の使用開始前に行われるエージングには機械製品などの初回使用時や検査、修理などの後に初めて使用する際に実施するもので、ある程度の時間(機器の種類などにより異なります)実際と同じように運転・動作させることで、内部の部品や接合部などの物理的な特性が安定し、常に同じ能力を発揮できる状態に慣らすために行われます。(いわゆる慣らし運転ですね)

2-2 耐久評価(加速劣化試験)を目的のためのエージング方法

このエージング試験は通常の出荷製品に対してではなく、主に開発段階の評価試験または量産後の耐久試験として行います。

①温度サイクル試験:

目的:急激な温度変化による製品の構成部品の熱による(膨張・収縮・熱応力)製品へ影響を評価します。

通常は部品や製品の内部では穏やかな温度変化が起きますが急激な温度変化が受ける事を想定したエージング試験です。

方法:部品や製品を低温と高温の間を(低温槽と高温槽を用意します)移し替える方法です。 低温・高温の状態の時間(さらし時間)は試験の「厳しさ」によって規定されています。

・さらし時間:

 3時間、2時間、1時間、30分、10分(10分は小さな部品や製品に適用されます)一般的には3時間で行うそうです。

・サイクル数:一般的に5サイクル行うそうです。

 

・移し替え時間(通常は高温槽・低温槽の2槽でおこないます):

 高温から低温、低温から高温へ移し替える時間は3分以下で行うのが望ましいそうです。

規格:JIS C 60068-2-14(環境試験方法 電気・電子:温度変化試験方法)

②温度・湿度試験:

目的:高湿度の環境で温度変化を繰り返す事で、部品や製品への影響(腐食・絶縁体の劣化・金属部分の錆・電気の漏洩・漏電や輸送又は保管の適正)を評価・判断する試験です。

方法:高湿度を維持した状態で温湿度サイクルを1回以上行う試験です。

部品や製品を高湿度状態で高温から25℃で温度サイクル試験を行います。

サイクル数は高温温度によって「厳しさ」が規定されています。

サイクル数:

・高温温度が40℃:

 サイクル数:2,6,12,21

・高温温度が55℃:

 サイクル数:1、2又は6

規格:JIS C 60068-2-30(環境試験方法 電気・電子:温湿度サイクル)

③振動試験:

目的:部品や製品の輸送時や実際の使用中に発生する振動による影響を評価・判断する試験です。

方法:要求される規格によってちがいますが、下記規格では。

その部品や製品で規定する「厳しさ」の正弦波振動を加えます。

・振動周波数の下限値:

 0.1、1、5、10、55(Hz)

・振動周波数の上限値:

 10、20、35、100、150、200、300、500、1000(Hz)

振動周波数の範囲例は下記規格をご参照下さい。

規格:JIS C 60068-2-6

ここで上げました規格は一例ですので、エージング方法はその製品や業界などによっても異なります。それぞれの業界や製品によってそれぞれの規格がありますので、要求・適用される規格を参照され事が重要かと思われます。

④電気ストレス試験:

目的:部品や製品が電気的ストレス(電界、磁界、電圧、電流)に曝された際に耐えうる能力を評価・判断する試験です。

方法:電磁ノイズ、電圧(静電気・放射イミュニティ・サージ試験)等を与える。

・耐電圧試験: 高電圧の印加下で絶縁の耐久性を評価します。絶縁が破壊されたり導通が発生したりすることなく、製品が安全に動作し続けることを確認します。

・絶縁抵抗試験: 絶縁材料の耐久性を評価し、絶縁の劣化や絶縁抵抗の低下を検出します。絶縁抵抗が低下すると、ショートや故障のリスクが高まります。

・放射イミュニティ:製品に対して外部から放射性電磁界によって影響を与え製品の挙動を確認します。

・サージ試験: 瞬間的な電圧や電流の急激な変化によって引き起こされる電磁ノイズや電気的なダメージを評価します。雷やスイッチング動作などの瞬間的な電気的イベントに対する耐性が重要な場合に使用されます。

規格:JIS C61000-4-2

   JIS C61000-4-5 等

以上です。

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