スカラロボットとは、水平多関節ロボットの事でその名前のとおりに水平に動く関節(軸)を複数装備したロボットの事を言います。
水平の動きに特化しているロボットで、他の産業用ロボットにくらべて省スペースで汎用性が高い特徴があります。
1.概要(特徴)
スカラロボットは水平方向の動作に特化した(構造)アームをもっています。アームの先端部分が垂直に動作する構造となっています。
垂直的な動作を多用する工程には対応が難しいため、人間が行う三次元的な複雑な動作をスカラロボットのみで行う事は難しいという欠点があります。
スカラロボットは水平に動作する複数の回転軸と垂直に動作するアームの先端部から構成されているので、水平方向の稼働域は広いです。またこのような構造から上下方向の剛性があります。
スカラロボットに対して、垂直多関節ロボット・直行ロボットというものがあります。
・垂直多関節ロボット:
垂直多関節ロボットは人間の腕に近い構造をしており、軸数は4軸・5軸・6軸のものが一般的です。
原理上は6軸あれば、人間の手先の動作や姿勢を一通りカバーできるようになりますが、軸数は多いほど複雑な姿勢を取ることが可能となりより汎用性が高くなります。
垂直多関節ロボットは人間の腕の構造に似ているため、人間の代替作業をさせる装置として最も近い存在となります。 また稼働範囲に比べて設置面積が少ないためレイアウトしやすく、水平多関節ロボットと比較し上下方向の動作範囲全てに手先が届く事が特徴です。
・直行ロボット:
角座標ロボットは、直線的な動を得意とするロボットで、直交型ロボット・ガントリーロボットなどと呼ばれることもあります。縦・横・高さという3方向をスライド動作で直交(往復)して、組立・搬送・検査といった作業が可能となります。
安価で位置決めが高精度・剛性が高いといった特徴を持ちます。
座標型による分類では、他にリンクで旋回しながら上下動作をする円筒座標型、旋回軸を中心にアームの上下回転と伸縮を組み合わせた極座標型などがあります。
2.スカラロボットの構造
スカラロボットは、大まかに3つの水平方向に回転する回転軸と、垂直に動く先端部分で構成されています。
2-1 スカラロボットの原理
スカラロボットは、水平方向の3軸の回転軸でアームの先端部を精密に水平移動させて先端部の垂直に移動する軸によって作業を行わせます。
正確にアームを動作させるためにカメラやセンサーを使用して位置を把握しその位置に正しくアームを制御し動作させます。
2-2 ベース
ベースはスカラロボットを固定するための装置(部品)です、床(土台・基礎)とアーム部分をつなぐ役割を果たします。アームが移動した際に発生する振動や衝撃を吸収して最小限に抑える役目を果たすように設計されています。
2-3 回転軸
回転軸は、アームを回転させるための関節部分になります。ベースやアームに取り付けられています。回転軸はアームの動きによって応力が加わりますので、耐久・剛性が求められます。
2-4 水平アーム
先端部を正確に動かすためのアームです2本のアームが平行に取り付けられており、これらのアームが回転軸の制御によって動作します。
短時間で同じ動作を行えるようにするため、軽くて丈夫(剛性のある)な素材でできています。
3.スカラロボットの用途
高速・高精度の動作を実現できるスカラロボットです。
・組立
・搬送
・ネジ締め
・塗布
3-1 組立
スカラロボットが開発された当時の用途は主に組み立て作業の自動化が目的でした。そのため現在でも組み立て工程ではスカラロボットが数多く使用されています。
スカラロボットは作業者1人分ほどのスペースがあれば十分に設置でき、ひとよりも高速でさらに正確な組み立てを行うことが可能です。
そのため面積あたりの生産力で比較すると、スカラロボットによる生産ラインはひとだけの生産ラインの数倍の生産力があると言われています。
3-2 搬送
スカラロボットは搬送コンベアからコンベアへの製品の移動(搬送)や、製品を梱包などで容器などに整列する目的で用いられます。 搬送作業では水平移動を得意とするスカラロボットの特徴が最も発揮できる工程ですので大幅な効率アップに貢献しています。
3-3 ネジ締め
スカラロボットの先端部分にネジ締め用の電動ドライバーを取り付けることで、ネジ締めの工程を自動化かつ高速なネジ締めが実現可能となります。さらに複数のスカラロボットを組み合わせて搬送とネジ締めを高速一元化することが可能となります。\
3-4 塗布
スカラロボットの先端にディスペンサー(吐出機)のユニットを取り付けることで、そのディスペンサーに対応した液体材料を塗布する工程を自動化することが可能となります。
4.安全性について
産業用ロボットの安全対策には法令・規格がかかわってきます。
4-1 労働安全衛生規則(法令)
産業用ロボットの安全対策は、「労働安全衛生規則第150条の4」により規定されています。 この規則では、産業用ロボット(定格出力が80Wを超えるもの)に接触することにより危険が生ずるおそれがある場合、さく又は囲い等を設ける必要があります。ただし、近年の改正により、産業用ロボットと人との協働作業が認められる場合もあります。
その例といたしまして、
①リスクアセスメントにより危険の恐れがなくなったと評価できる場合:
厚生労働省「平成25年12月24日付基発1224号第2号通達」にて、人とロボットが安全に共存するための対策(リスクアセスメント)を実施し安全が評価された場合には、人とロボットが安全柵なしで協同作業をすることが認められます。
・リスクアセスメントの具体例:人感センサーなどで作業員の動きを感知してロボットを減速または自動停止させる措置などがあります。
②IOS規格に定める措置を実施した場合:
国際標準化機構(ISO)が定める産業用ロボット規格に準じた措置がとられている場合にも、ひととロボットが安全柵なしで協働作業をすることが認められています。