アクチュエーターは英語で表記するとactuatorで、直訳しますと「作動させるもの」となります。アクチュエーターは駆動装置とも呼ばれる事があります、機器(装置)を任意に動かすためのデバイスです。
1.アクチュエーターの概要
アクチュエーターは電動機やエンジンのようにものを動かす駆動装置と、その動作により制御を行う機械・油・空圧・熱・電磁など物理的な装置を指します。利用する作動原(入力・出力するエネルギー)によりさまざまなものがあります。伸縮・屈伸・旋回といった単純な動作をするものに限る場合と、電動機(モーター)やエンジンのような動力を持続的に発生させるものも含む場合があります。
アクチュエーターは基本的にエネルギーを与えることで運動を発生させます。何らかの装置に組み込む場合は電気的な信号によって制御できるようにするなどして制御機構に組み込みます。制御方式は利用するエネルギーの種類やアクチュエーター自身の用途にも色々と有ります。単純な開閉器(スイッチ)やバルブの様なものや、ハンドルやレバーといった操作部分に連結しているものもあります。大きな力を発生させるアクチュエーターを動作させるために動力伝達装置の開閉器に取り付けられた小型のアクチュエーターなど、様々な利用のされ方があります。
近代化に向け、船舶が大形化してそれまで人力での操舵を行っていたものが困難になり油圧式の制御装置が導入されました。その事が建築機械への油圧式アクチュエーターの普及にも大きな役割を担ったそうです。空気圧式アクチュエーターは鉄道が普及しだしたころから鉄道車両のブレーキやドアの開閉装置などに利用されました。また射出成型や産業用ロボットでは当初は油圧式が主流でしたが、パワーエレクトロニクスの発達により電動式の部品・装置の信頼性が向上してくると制御性・エネルギー効率の優れた電動式の使用が増えましたが、アメリカのロボット研究開発企業が多軸ロボットに精密油圧制御を導入したことにより、再びロボットへの油圧式アクチュエーターの使用も増えているそうです。
2.アクチュエーターの種類
電磁石で得られる磁力を動力として利用するものをソレノイドアクチュエーターと呼びます。航空機や産業用ロボットなどによく用いられれる油圧により駆動するものもあります。また人類も含め動物の筋肉も化学エネルギーを利用したアクチュエーターの一種とみる事も出来ます。形状記憶合金を使用して電圧を印加することで発生するジュール熱により変形することを利用したアクチュエーターもあるそうです。
代表的なアクチュエーターの種類を説明いたします。
2-1電気式アクチュエーター
電気をエネルギー源とするアクチュエーターです、エネルギー効率が良く精密な制御が可能です。パワーエレクトロニクスの発達により、電気式のパワー密度と信頼性が向上したことで主流になりました。
「モーター」がもっとも多く使われています。「サーボモーター」「ステッピングモーター」「リニアモーター」など、色々な種類があります。電気自動車や工場の機械など、さまざまな装置に使用されています。小型化しやすい為スマートフォンや家電など小さな機械・装置にも組み込まれています。
サーボモーターやステッピングモーター等の位置決めが得意なモーターを使用するので、アクチュエーターの停止位置を細かく(多点停止の運転)設定する事が可能になります。
2-2油圧式アクチュエーター
油圧式アクチュエーターは、油の持つ流体動力(圧力×流量)を利用するアクチュエーターで、小型であっても大きな動力を得ることができます。そのため油圧式アクチュエーターは工場や建設機械など、大きな動力が必要な機器によく用いられます。
油圧式アクチュエーターには、油圧シリンダ、油圧モーター、揺動形アクチュエーターなどの種類があります。それぞれ油の流体動力を直線運動・回転運動・揺動運動させて、機械的な動力に変換しています。
2-3電磁アクチュエーター
電磁石による磁力をエネルギーとして動作するアクチュエーターです。
「ソレノイドアクチュエーター」「ボイスコイルモーター」とよばれるものなどが代表的です。内蔵されているコイルに電気を流して磁力を発生させ、コイル内の鉄芯を動かすことで作動します。他のアクチュエーターと比べて早く細かい動作ができるのが特徴で、前後運動や回転運動に適しています。
(*)ボイスコイルモーター:簡単に言いますとスピーカの様な構造です。
2-4ピエゾアクチュエーター
ピエゾ素子(電圧を印加する事によって伸びたり縮んだりする特性を持った素子)を使用したアクチュエーターです。発生するパワー自体は大きくは有りませんが、精密な動きが必要とされる機器・装置に使用されています。
2-5空気圧式アクチュエーター
空気の圧力を利用したアクチュエーターです。単純でトルクが出せるので単純な動作に使用されています。以前は位置決め精度が電動式と比較して劣っていましたが精密制御が可能になりつつあります。
2-6化学式アクチュエーター
化学エネルギーを力学エネルギーに変換させています。まだ実験段階で複数の方式が検討されている様です。
3.アクチュエーターの用途
ロボットの関節を動作させるなどの利用が見られます。この中にはエネルギーを与えたときだけ縮み、エネルギーを絶つと外部の力に対して受動的になるアクチュエーターも多く関節を動作させる場合には、関節を曲げるアクチュエーターと伸ばすアクチュエーターとセットになっていたり、或いは片側をばねの弾力で肩代わりさせるなどの設計仕様も見られます。複雑な所では力の合成を利用して複数アクチュエーターから得られる力を利用して、軸を支点として複雑な運動を行う場合もある様です。
この様に複雑な動作を必要とするアクチュエーターはその制御のために状態(位置)を検出するセンサと同時に組み込まれ、状態(位置)を監視(センシング)しています。これによってアクチュエーターに入力されるエネルギーを調節して、希望するとおりの動作を行いますが建設機械のような動作では操縦者が各々の関節の状態を目視で確認・調節(操縦)することからこういった状態把握のためのセンサ類は利用されていませんでした。
しかし2000年代では制御用コンピュータの高性能化・小型化が進んだ事によりロボットがより身近な装置として開発され、その一方でアクチュエーターもより効率よく動作するものが求められており、センシング技術(位置制御)も並行する形でセンサの小型化・高精度化や一定の情報処理機能を備える知能化が進化する事によってロボット工学全体的の発展を促しています。
さらに最近では、建設機械の自動化もすすみ無人(遠隔操作)で稼働(操作)出来るものが登場しています、これらには今までは操縦者(オペレーター)が目視で行っていた作業(動作)をアクチュエーター・センシング技術・コンピュータによる制御で実現しています。
とある建設用遠隔装置メーカでは、既存の建機の操作レバーにアクチュエーター(小型ロボット)を取り付けるだけで遠隔操縦を可能にしているものがあります。
機械の遠隔操作ではなく、人間動きを感知して作業者の屈伸や歩行を補助してくれる「パワーアシストスーツ」なるものも登場してきています。これもセンシング技術で位置や動きを感知してコンピュータ制御によってモーター等で人間の動きを補助してくれます。重い荷物の運搬や介護などでの利用がふえているそうです。