チョッパ制御とは 

電流のON-OFFを高速で繰り返すことによって直流または交流の電源から、実効値として任意の電圧や電流(一般的には直流、交流の場合も含まれる)を擬似的に作り出す電源回路の制御方式のことを言います。「チョッパ」(chopper) とは英語では「切り刻むもの」の意味です。電流(電圧)を切り刻んでいるかのように制御している意味です。主に電車の主電動機の制御や直流安定化電源(ACアダプタ)等に用いられえいます。入力電圧より出力電圧を下げる制御を「降圧チョッパ」、スイッチング時に発生するスパイク電流を用いて入力電圧より上げる制御を「昇圧チョッパ」と呼びます。 

1.チョッパ制御の概要 

任意の電力を取り出す際に、抵抗制御やシリーズレギュレータを用いた方式では余分な電力を「熱」として捨てていました。これに対して、チョッパ制御では制御素子で電流を高速でON-OFFを行い、必要な電力を取り出す為、熱によるエネルギーの損失が少なくなります。制御素子にはサイリスタやパワートランジスタなどを使用します。制御としてON-OFFを繰り返すことからノイズが発生する為に安定化電源等では2次側にノイズフィルタを用いることが多いです。 

一般的なチョッパ制御回路では出力電圧・電流などに応じてON時間とOFF時間の割合(デューティ比)を変化させ、負荷が変動しても安定した出力を得られるようになっています。電子回路においては回路が複雑になりますが、直流出力の製品では必要な部品を殆どワンパッケージ化したDC-DCコンバータや、スイッチング素子やチョークコイルなど数点の部品を追加するだけでチョッパ制御回路が実現できるICが発売されています。商用電源-直流出力(AC-DC変換)の製品においてはスイッチングACアダプタなどとして、従来のトランス式電源回路に置き替わっています。 

チョッパ回路は、素子の高速スイッチングによって、コンパクトな回路設計が可能です。また、高周波変換によってトランスの小型化も可能です。 

チョッパ回路は、高速スイッチングによって生じる雑音・振動が少ないため、静かな動作が可能です。 

ただしオーディオ・ビジュアル(アナログ回路)家電においては、スイッチングによるノイズを嫌って、あえて従来のトランスやシリーズレギュレータ等(アナログ回路)を用いた電源回路が採用される事があります。 

2.降圧チョッパ制御と昇圧チョッパ制御 

チョッパ方式ではコイルが重要な働きをします。スイッチング素子のON/OFFのたびに回路に流れる電流は急激に変化しますが、コイルは電流変化を妨げるように起電力(電圧)にて誘導電流を発生させます(レンツの法則)。電流変化を繰り返す交流電流に対しては抵抗のように振舞い、あたかも電流は“息が詰まる(choke)”ようになるという意味から、この性質を利用するコイルはとくにチョークコイルと呼ばれます。 

チョッパ方式のDC-DCコンバータはスイッチング素子とチョークコイル・コンデンサ・ダイオードなどの電子部品を組み合わせたシンプルな回路で、直流電圧を降圧あるいは昇圧しています。 

図(チョッパ方式DC-DCコンバータ(降圧)基本回路)に示すのは、チョッパ方式の降圧型DC-DCコンバータですバックコンバータ(ステップ・ダウン・コンバータとも言います)と、図(チョッパ方式DC-DCコンバータ(昇圧)基本回路)は昇圧型であるブーストコンバータ(ステップ・アップ・コンバータともいいます)の基本回路です。 

スイッチング素子(図ではトランジスタを使用しています)・チョークコイル・ダイオードの位置がそれぞれで異なるところが、回路(動作)を理解するポイントとなります。チョークコイルはスイッチONとなって電流が流れ込むとエネルギーを蓄えて、スイッチOFFとなったとき蓄えたエネルギーを放出することで、電流変化を妨げる向きに誘導電流を流します。図では省略しましたが、トランジスタのベースは制御回路へ接続され、制御回路で発生する方形波がスイッチングを行います(方形波の電圧のハイ/ローによってON/OFFします)。 

スイッチONの時間が長いほど出力電圧は上がり、スイッチOFFの時間が長いほど出力電圧は下がりますので、ON/OFFの時間(デューティ・サイクル)を制御することで必要な出力電圧が得られます(PWM=パルス幅制御)。制御回路は複雑な回路をもちますが、IC化されているので基板上ではそれほどスペースをとりません。基板上で大きなスペースを占めるのはコンデンサ(電解コンデンサ)やチョークコイルの電子部品です。チョッパ方式のDC-DCコンバータとしては、上記の2タイプのほか、降圧・昇圧ともに可能なバックブーストコンバータというタイプもあります。これはバックコンバータのダイオードの向きを逆にしたもので、出力電圧のプラス・マイナスが反転するため、極性反転型とも呼ばれます。 

3.トランスを使用した絶縁型のDC-DCコンバータ 

チョッパ方式のDC-DCコンバータは回路もシンプルなため、基板に搭載される小型オンボードタイプのDC-DCコンバータとして多くで使用されています。チョッパ方式のようなDC-DCコンバータを非絶縁型というのに対して、トランス(スイッチングトランスなどと呼ばれています)を用いたタイプを絶縁型といいます。トランスはコア(鉄心やフェライトコアなど)に1次巻線と2次巻線を巻いたもので1次巻線に電流変化が起きると、レンツの法則に従いそれを妨げるように電流方向とは反対向きの起電力(逆起電力といいます)が発生します。そしてコアを通じた磁束変化により2次巻線にも起電力(誘導起電力といいます)が発生して誘導電流が流れます。 

チョークコイルの働きと原理的には同じ電磁誘導によるものですが、チョークコイルにおいては自己誘導といいます、トランスでは相互誘導と呼ばれています。チョッパ方式ではチョークコイルがエネルギーを蓄える性質を利用したように、絶縁型DC-DCコンバータではトランスが溜めるエネルギーを利用して電圧変換を行っています。トランスによって入力側と出力側が電気的に絶縁されているため絶縁型と呼ばれます。伝導ノイズの遮断や感電防の効果もあります。 

絶縁型DC-DCコンバータにもさまざまなタイプがありますが、最も基本的なのはフライバック・コンバータ(他励式)とフォワード・コンバータ(1石式)で、下図はその基本回路です(制御回路は省略してあります)。 

回路の読み解きのポイントはトランスです。トランスの回路図の脇に●印がついていますが、これは巻線の“巻き始め”の記号です。つまり、1次巻線、2次巻線が発生する起電力(逆起電力、誘導起電力)の向き(極性)を表しています。 

絶縁型DC-DCコンバータでは、この極性が重要な意味をもちます。レンツの法則に従い、1次巻線、2次巻線の起電力(逆起電力、誘導起電力)の向きは、●印に対して同じ向きになります。そのための目印と考えてかまいません。フライバック式とフォワード式では●印の位置が違うことに注意して見てください。 

「フライバック・コンバータ」「フォワード・コンバータ」を基本として、「プッシュプル・コンバータ」「ハーフブリッジ・コンバータ」などの、絶縁型DC-DCコンバータにはさまざまなタイプがあります。 

DC-DCコンバータは奥深い技術があり、さらなる高効率化や小型・軽量化、ノイズ低減・高効率化に向けて、各メーカ・企業様では最新の回路技術を投入しています。 

(*)レンツの法則 

レンツの法則は誘導電流の向きに関する法則です。 

レンツの法則とは、「誘導電流は磁界の変化をさまたげる向きに流れる」という法則のことをいいます。 

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