サージ電流(SURGE CURRENT)とは、電気回路等について、その電源投入時等に生じる瞬間的な規格外の大電流のことをいいます。
1.サージの概要
サージ電流とは、電気回路や電子機器などにおいて、電源投入時などに瞬間的に規格外の大電流が発生する現象をいいます。具体的には、サージ電圧の発生に伴って予測不可能な大電流が一時的に流れる現象となります。
この現象は通常、スイッチの開閉・磁場の急激な変化・コンデンサの放電などによって引き起こされ発生します。 サージ電流は、電気機器の回路に影響を与えて機能を停止させ、または損傷を与る可能性がありますので適切な対策が必要となります。
特に落雷によるサージは、他のサージとは桁違いの規模であり、広範囲にわたる電気機器の損傷を引き起こすことがあります。したがって、市販の電気製品では適切な防護策が講じられています。
2.サージ電流の種類
サージ電流は、電子機器などを損傷する電圧の急激な上昇を指します。サージは、外部要因によって瞬間的に大電圧や大電流が印加されるノイズです。これにより、電子機器の実装部品の耐圧を超える信号が入り、機器が故障や破損する原因となります、サージ電流の主な種類とその特徴については次の様になります。
2-1雷サージ:
雷によって発生するサージで、1億ボルト級の電圧になり周囲に甚大な影響を与えます。直撃雷、誘導雷、逆流雷3つの種類があり、それぞれ対策が必要です。
・直撃雷
建物自体や建物のアンテナ等、建物に入る送電線・電柱に直撃した落雷のことです。雷の持つエネルギーの多くが導体に伝搬し、大きな電磁力が発生することから、建物内の電子機器に致命的なダメージを与えるほか、雷のエネルギーによって建物自体にダメージが入ることもあります。
高層ビルなどでは避雷針による雷の誘導や、雷の電流を地表に上手く逃がす工夫がされていますが、対策が完璧とは言えません。一般住宅などでも可能性は低いものの落雷の危険性はあり、家電等にダメージが入ることもあります。機器ごとの対策にも限界があるため、万が一でも破損を防ぐのであれば、機器を絶縁、もしくはサージを逃がす対策回路をしっかり作りこむ必要があります。
・誘導雷
誘導雷とは、近くに落ちた雷から電磁場が発生することで、送電線やアンテナ、アース線などに高電圧が発生(誘導されて)する現象のことです。誘導雷が発生する範囲は広く、直撃雷よりも発生頻度が圧倒的に高くなるそうで、雷サージというとほとんどの場合、誘導雷のことを言います。
誘導雷で発生する電圧は数十kV程度であり、直撃雷よりエネルギーは小さく電流の流れる時間も短いですが、電子機器を破壊するには十分なエネルギーを持っていますので対策は必須です。
・逆流雷
逆流雷とはアース(接地)側からサージが入る現象のことです。通常雷は建物などに落ちると、アースに対して電流が流れ込み拡散して消えていきます。ただ、雷が落ちた直後はアースに大量の電流が流れるために、アースの電位も他の場所と比べて高くなります。そうすると、周囲の電子機器ではアースから電子機器の電源入力などに電流が逆流し、サージ破壊の原因となります。
2-2スイッチングサージ:
電子機器の電源をON/OFFするために、電源や信号線にはリレーやトランジスタなどのスイッチが取り付けられています、これらのスイッチもサージを発生させる事があります。 スイッチングサージが生じる理由は、回路上のインダクタンス成分によるものです。
インダクタンスは電流の変化に対し、変化を妨げる向きに電流を流しますが、スイッチを遮断すると回路に流れる電流は一気に減少するため、インダクタンスは電流を増やす方向に働きます。しかし、スイッチOFFにより回路が遮断されているため、電流は流れることができず、行き場のなくなった電荷によって高電圧が発生します。電圧は数kV程度と雷サージよりは低い電圧値になりますが、特に電源回路ではほとんどの場合スイッチとコイルが接続されているため、回路設計時は高い頻度で対策が必要となります。
2-3ロードダンプ:
ロードダンプとは自動車などの発電機とバッテリーを使った機器に生じるサージです。バッテリーの接続が切れた際に発生し、数100V程度の電圧値となります。
自動車など発電機(オルタネータ)とバッテリーを使った機器に発生するサージになります。自動車の運転中(稼働中)に、接触不良などでバッテリーの接続が遮断した際に発生します。
通常自動車はオルタネータとバッテリー・駆動部分の負荷が接続した状態で動作しますが、何らかの要因でバッテリーの接続が遮断された場合、オルタネータの電流は一気に減少します。
この場合でもモータなどにある寄生インダクタンスによって電流を流し続けようとする動作が生じるために結果的にオルタネータの出力電圧が上昇することになります。この場合は数100V程度の電圧ですが、サージの持続時間は長く、通常の対策では発生したサージを吸収することができない場合があるそうですので、注意が必要です。
2-4静電気(ESD):
静電気によるサージで、人が帯電して電子機器等に触れた際に放電するもので日常的によく体験するタイプではないでしょうか。(冬場などドアノブなどに触った時に指先に「パッチと」感じるアレです。)
電子機器に致命的なダメージを与えることがあります。
静電気のサージの持続時間は非常に短いですが、数十kV単位の高電圧が電子機器などに印加されるので、大きな影響を受けることがあります。電子機器・電子回路(基板)は筐体で保護されていますが、筐体やコネクタに静電気が印加した際に不具合(誤動作)を起こさないかの確認が必要となります。
3.サージのモードと対策部品について
サージのモードは、ノーマルモード・コモンモードの二つに分類されます。
3-1 ノーマルモード
ノーマルモードとは、サージが電源側から侵入し、GNDを通って出ていくサージのことを言います。電源ラインとGND線に流れる電流が逆方向になることから、ディファレンシャルモードとも呼ばれます。サージによって電源とGND間で電位差が発生するため、電源・GND間にサージ対策用の部品を入れることで対策することができます。
3-2 コモンモード
コモンモードとは、電源とGND、両方に同じ電圧が侵入するサージのことで、外部のアースを通してサージ電流が流れます。電源・GND間には電圧差が生じないことから、これらの間にサージ対策部品を入れても効果がありません。ノイズの経路が分かりづらいため慎重に対策を行う必要があります。
3-3 対策部品について
サージ電流には様々種類があります、サージの電圧や場面に合った対策部品を使用することで対策は可能な場合が多いようです。
ごく一部ですが紹介させていただきます。
・ツェナーダイオード
このダイオードは、逆電圧が一定電圧以上になると降伏電流(もしくはツェナー電流)による電流がながれる特性をもっています。一定以上の電圧はカットされる事になります。通常使用する電圧以上を選定すれば通常回路には影響はありません。ただし、一方向のサージでないと効果が無いデメリットがあります。
一般的にはDCの入力回路などに使用されます。
・バリスタ
バリスタ(英語表記:variable resistor)は一定の電圧を超えると極端に抵抗値が下がる電子部品です。この特性を利用してサージを逃がしています。一般的にはAC電源の入力回路などに使用されます。