太陽フレアとは

英語表記:Solar Flare)。太陽の表面やその近くで突然発生する強力なエネルギーの爆発現象です。

1.概要

太陽に於いて時折太陽表面の一部で瞬発的な増光が見られることがあり、これが太陽フレアです。太陽フレアは「数分から数時間のタイムスケールで起こる多波長の増光現象」と定義されています。

多波長の増光とは具体的には、電波・マイクロ波・Hアルファ線・極端紫外線・軟X線・硬X線・ガンマ線における増光が見られます。ただし、光の強度を時間の関数で示した図(ライトカーブ)の形状は波長ごとに大きく異なっています。これはそれぞれの波長の光を放出する物理メカニズムが異なるためです。

太陽フレアは太陽周囲の磁場エネルギーが急速に光・熱・非熱的な粒子のエネルギーに変換される現象であると理解されています。そのエネルギー解放量は10の29乗 ergから10の32乗 ergとなり、水素爆弾10万〜1億個のエネルギーに相当し

ます。太陽系内で起こりうるエネルギー解放現象としては最大のものです。

太陽フレアに伴って形成される特徴的な現象としてフレアループがあります。フレアループは大きさ1~10万km程度のループ状の磁力線にプラズマがまとわりついたものです。フレアループは数千万度の温度に達し、熱的な軟X線放射により輝きます。

太陽フレアは磁気リコネクションにより上空からプラズマが降り注ぐことでフレアループのような構造物が形成されます。

太陽フレアによって多量の非熱的粒子が加速されていると推測されています、これらの高エネルギー粒子が硬X線放射やガンマ線放射を引きおこしていると考えられています。

太陽フレアはしばしば衝撃波やプラズマ噴出(太陽風)を伴って地球に接近し突然の磁気嵐を起こします。

(*)ライトカーブ:

天体の明るさを時間の関数として表した図のことです。一般に光度曲線は、縦軸を天体の明るさ(等級など)、横軸を時間としたグラフになります。

(*)erg:

CGS単位系における仕事・エネルギー・熱量の単位です。名前はギリシャ語で「仕事」を意味する単語εργον(ergon)に由来します。

(*)熱的な軟X線放射:

熱的な軟X線放射は、非常に高温の天体が発生する際に放出されるものです。

2.太陽フレアの地球への影響

太陽フレアは地球上の生命や最新技術に多様な影響を及ぼす宇宙天気現象です。この影響は太陽フレアの強度・地球の大気と磁場との相互作用・さらに我々人類の技術的脆弱性によって異なります。

太陽フレアは私たちが暮らしているこの地球のインフラや自然現象(環境)にも影響を及ぼします。この影響はその時の太陽フレアの強弱・地球までの到達時間・その時の地球の状態等で変わります。

2-1 通信とナビゲーション(GPS)への影響

太陽フレアによって放出される強力なX線と紫外線(極紫外)の放射は地球を覆っている大気の外側の電離層に影響を及ぼします。電離層はラジオの電波の伝播に重要な役目を果たしています。 太陽フレアがこの電離層を乱すことでラジオ(特に短波:HF)通信に影響を及ぼし一時的に通信が途絶えることがあります。このことは航空業界や海運業界で通信に使用されている長距離通信に大きな影響を与えます。また衛星を利用した通信やナビゲーション(GPS)も太陽フレアの影響によって制度が低下する可能性があります。

2-2 電源網への影響

強力な太陽フレアは地球の磁場内で磁気嵐を引き起こすことがあります。これは電力線を通じて地上の電力線に誘導電流が発生し、変圧器や電力設備にダメージを与える原因となります。過去にはこのような現象が原因で広範囲にわたる電源網影への影響により電力供給の中断が発生した事があります。

2-3 近代技術への影響

太陽フレアからのエネルギーは、地球を覆っている大気の外側の電離層に急激な変化を与えることにより、いろいろな通信障害の要因となります。特に、最近は色々な分野で活用されているGPSシステムや衛星通信は太陽フレアの影響を受けやすいです。航空機のナビゲーション・海上船舶の航行・災害時の非常通信システムなどに影響がおよびと安全性や利便性に大きなリスクをもたらすことになります。

2-4 生態系へ影響

太陽フレアがもたらす磁気嵐は、生態系にも影響を及ぼす可能性があります。特定の海に暮らす生物や陸上で生息する動物の中には地磁気を利用して行動しているといわれており、磁気嵐による地磁気の乱れが生物の行動パターンに影響を与えるのではと考えられています。ただしこの影響の研究はまだ完全には解明されていません。



2-5 自然への影響


太陽フレアによる磁気嵐は、地球の極点付近で発生するオーロラの活動を活発化させます。太陽から放出された強力なエネルギーが地球の磁場によって、大気中の分子や原子などと衝突することでの発光は地球上で偉大な自然現象の一つです。



3.太陽フレアによる被害

3-1 停電

 1989年3月 この時は太陽フレアによる磁気嵐の影響で、地上の磁場が影響をうけ送電線に異常な電流が発生しカナダのケベック州で約9時間の停電が発生しました。

3-2 通信障害

 2001年4月 この時は太陽フレアによるX線などの電磁波によって地球の電離層が乱された影響で無線通信ができなくなりある航空では約40分位置が分からなくなり大事故になりかねない状況でした。

3-3 人口衛星の被害

 2022年2月 この時は太陽フレアによる地球上空の大気が加熱されて膨張したことによって人口衛星が受ける抵抗が増えることで正規の軌道を外れ落下しました。

4.太陽フレアの予測

4-1 太陽の観測

太陽フレアの予測には太陽を観測することです。そのために太陽を観測する為の専用衛星によって太陽の活動を様々な波長で常に観測を行い、太陽表面の磁場やコロナの動きを詳細に観測します。

太陽フレアは太陽の表面に存在する強い磁場がエネルギーを蓄積し、そのエネルギーが解放されるときに発生すます。太陽の磁場の動きをモニタリングすることが重要なことです。磁場の観測は、地球上の望遠鏡や宇宙空間の衛星にて行われています。

4-2 太陽フレアの予測

観測データを元に太陽の磁場構造やプラズマの動きをシミュレーションすることで、フレアの発生を予測します。数値モデルやシミュレーション技術を駆使して、太陽表面やコロナでのエネルギー蓄積と解放のプロセスを再現します。

過去の発生データなどを基に統計的な手法を用いての予測も行います。過去の観測状況やフレアの発生頻度やパターンを分析して現在の太陽活動と比較することで、未来の太陽フレアの活動を予測します。

リアルタイムで観測して得られた観測データを解析することで、即時でフレアの予報を行う事が可能となります。太陽のX線や紫外線の急激な増加はフレアの前兆と言われておりますので、これらの前兆を検知することでフレア警報を発することが可能となります

4-3 太陽フレアの専門機関について

アメリカのアメリカ海洋大気庁(NOAA)の「Space
Weather Prediction Center (SWPC)」や日本の「情報通信研究所(NICT)」などの専門機関が、このような観測データや予測モデルを元に太陽フレアの予測や警報を発信しています。

太陽フレアの予測と予報は、このような複数の技術と手法を組み合わせることで精度を高めており、地球の技術インフラや宇宙での活動への影響を最小限に抑えるために重要な役割を果たしています。



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