プリント基板が壊れる要因について

電子機器の主要部品であるプリント基板ですが、これが故障するとその電子機器は正常に動作することができなくなります。プリント基板が壊れる要因についてのお話となります。

1.加熱

1-1 熱による材料の劣化

・基板材料の劣化:

 プリント基板は一般的にFR-4(ガラスエポキシ樹脂)などの材料を使用していますが、過剰な熱が加わるとこれらの材料が分解することがあります。基板の物理的な強度や絶縁性能が低下し最終的に破損や短絡(ショート)が発生する可能性があります。

1-2 はんだ接合部の破損

・はんだが融解:

 プリント基板上の部品ははんだで接合されていますが過度の熱が加わると、このはんだが再び溶融することがあります。はんだが溶融することと部品が基板から外れたり、接触不良が発生し回路の断線や誤動作が発生します。

・熱疲労:

 繰り返す熱が加わることではんだ接合部にクラック(ひび割れ)が生じることがあります。はんだ接合部にクラックが生じますと時間経過とともに接合部が弱くなり最終的には断線や接触不良となります。

1-3 部品の熱ダメージ

・部品の熱破壊:

 ICやコンデンサ・トランジスタなどの電子部品は、動作温度範囲を超えると内部の構造が破壊され正常に動作しなくなります。

・熱膨張:

 部品や基板の材料が異なるために熱膨張係数が異なります。過度の熱により基板と部品の間で膨張が異なると、接合部に大きなストレスが加わり最悪の場合部品が基板から剥がる又はクラックが発生します。

1-4 ヒートサイクルによるダメージ

・温度サイクルストレス:

 電源をON・OFFするたびに基板や部品が温度変化を受けることがあります。これをヒートサイクルといいます。繰り返し使用することで材料の疲労が進行しクラックやはんだ接合部の劣化が進行します。

1-5 熱による回路の性能低下

・信号劣化:

 高温になると基板上の配線抵抗が増加し信号伝達に影響を及ぼすことがあります。特に高周波回路ではこのことにより信号が減衰し性能に影響を及ぼすことがあります。

・電源供給の不安定化:

 熱が電源レギュレータやパワー素子に影響を与えると、プリント基板自身で使用している電源電圧に影響を及ぼして動作不安定となり他の回路に悪影響を与えて回路全体が不安定になる可能性があります。

2.静電気放電(ESD)

 静電気放電(ESD)によって基板上の敏感な電子部品が損傷を受けることがあります。適切なESD対策がとられていないとプリント基板は簡単に故障する可能性があります。

 静電気放電(ESD)については別の回で述べていますので、ここでは割愛いたします。

3.物理的損傷

3-1 落下や衝撃による損傷

・プリント基板の割れやひび割れ:

 プリント基板が落下したり強い衝撃を受けるとプリント基板自体が割れたり・ひび割れが発生することがあります。このことによりプリント基板の回路が断線し正常な動作ができなくなる可能性があります。

・部品の剥離や脱落:

 衝撃によってはんだ付け接合部に負担が加わり部品がプリント基板から剥がれ落ちるまたは完全に脱落することがあります。このような事もプリント回路の断線や当然ですが誤動作につながります。

3-2 圧力や曲げによる損傷

・プリント基板の曲げによる層間断裂:

 プリント基板が曲げられると、プリント基板内の異なる層(特に多層基板の場合:4層・6層・8層・・・)間で応力が発生し、層間の断裂が生じることがあります。このことによってプリント基板の回路が短絡(ショート)や信号が断絶します。

・トレースの切断:

 圧力が加わるとプリント基板上の細いパターン(銅箔)が切断することがあります。特に基板が薄い場合曲げに弱い(適さない)材料を使用している場合発生しやすいです。

3-3 取扱いミスによる損傷

・はんだ接合部へのストレス:

 プリント基板を不適切な取扱いや・無理な取扱いを行うなど、はんだ接合部に過度なストレスが加わりクラックや断線が発生することがあります。特に大き目のコネクターの取扱いには注意が必要です。

・静電気ショック:

 プリント基板の取扱い中に静電気放電(ESD)が発生しますと、基板上の電子部品にダメージを与えます。静電気放電(ESD)対策は必要です。

3-4 プリント基板エッジやスルホールの損傷

・プリント基板エッジのチップアウト:

 プリント基板のエッジ(基板端)が衝撃を受けるとエッジ部分が欠ける(チップアウト)ことがあります。エッジ(基板端)に配置されたトレース(銅箔)やビアが損傷するとプリント回路全体に影響を与えることがあります。

・スルホールの変形や損傷:

 圧力や衝撃でスルホールが変形すると内部のメッキが張れるまたは断線するとことがあります。これによってプリント基板の層間の接続が断線される可能性がありプリント回路全体に影響を与えることがあります。

3-5 取り付け時の過度な取り付け

・プリント基板の変形:

 プリント基板をシャーシやケースに取り付ける際、ビスなどを過度に締め付けるとプリント基板が変形しその応力がプリント基板のトレース(銅箔)や接合部に影響を与えることがあります。このことによってプリント基板や実装部品に損傷が起こることがあります。

・クラックの発生:

 過度な締め付けは特にプリント基板のネジ取付け部周辺にクラックを引き起こす可能性があります。これが進行すると基板全体の強度が低下し破損に至ることがあります。

3-6 異物の混入

・金属やほこりの影響:

 プリント基板製造中や取扱い中に基板上に異物(特に金属変やほこり)が混入すると回路が短絡を起こしプリント基板の一部が損傷や回路が誤動作することがあります。

3-7 はんだ付けや修正作業時のミス

・過度な力をかけたはんだ吸引:

 部品の交換や修正の際のはんだ吸引器で過度な力を加えるとプリント基板のトレース(銅箔)やパットが剥がれることがあります。これによって修正が難しくなり、プリント基板そのものが使用できなくなる可能性があります。

この様な物理的な損傷を防ぐ為には、慎重な取扱い・適切な取り付け・製造工程における細心の注意が必要となります。さらにプリント基板設計段階から物理的強度を考慮した設計を行うことも大切な事です。

4.腐食

4-1 湿気(高湿度環境)

・水分の吸収:

 プリント基板は高湿度の環境に於いては水分を吸収してプリント基板の材質やトレース(銅箔)に浸透すると銅が酸化し腐食が進行することがあります。酸化銅は導電性が低いため、電気的な接触不良や回路の導通不良となります。

4-2 化学薬品や汚染物質による腐食

・化学薬品の影響:

 プリント基板が製造中(実装工程)や使用中に化学薬品にさらされるとトレース(銅箔)やはんだ接合部分を腐食させることがあります。特に酸性物質による酸化がトレース(銅箔)の劣化要因となります。

・大気中の汚染物質:

 工業地帯や都市部などで基板が大気中の硫黄化合物や塩化物などの汚染物質にさらされると、これらの物質が基板表面に付着し腐食が進行することがあります。特に硫黄による流加がトレース(銅箔)を黒く(黒化)させ腐食を引き起こす事があります。

5.電気的過負荷

5-1 過電圧による損傷

・絶縁破壊:

 プリント基板や使用部品の設計限界を超える電圧が印加されると絶縁材料が耐え切れなくなり、絶縁破壊が発生することがあります。この現象によって短絡(ショート)や放電が発生しプリント基板上の回路が損傷する可能性があります。

・コンデンサーの破壊:

 コンデンサーは使用可能範囲がきめられておりますが過電圧が印加されると絶縁体が破損し、コンデンサーが破損することがあります。このことによってプリント基板全体が損傷しプリント基板が破損することがあります。

5-2 サージ電圧(瞬間的な電圧上昇)による損傷

・サージの原因:

 サージ電圧は雷による誘導や電源のスイッチング・あるいは他の外部要因によって発生します。これによってプリント基板上に瞬間的に高い電圧が印加され、回路が損傷することがあります。

 

※プリント基板の破損を未然に防止するには適切な設計・製造・取扱いが重要な事になります。

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