JIS規格は身の回りにある多くの製品などで活用されています。しかし、聞いたことはあっても詳しく知らない方は多いのではないでしょうか。ここでは、JIS規格の目的や実際に活用されている製品の実例、取得方法などをわかりやすく説明します。品質や安全性を示す指標となる、JIS規格への理解を深めましょう。
1.JISとは
JISとはJapanese Industrial Standardsの略で「日本工業規格」の事を言います。日本国内産業の標準化を目的に「産業標準化法」という法律により制定された日本の国家規格です。
※産業標準化法
この法律の「目的」「定義」は(法律の目的)
第一条 この法律は、適正かつ合理的な産業標準の制定及び普及により産業標準化を促進すること並びに国際標準の制定への協力により国際標準化を促進することによつて、鉱工業品等の品質の改善、生産能率の増進その他生産等の合理化、取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化を図り、あわせて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「産業標準化」とは、次に揚げる事項を全国的に統一し、又は単純化することをいい、「産業標準」とは産業標準化のための基準をいう。
となります。
【昭和二十四年法律第百八十五号 産業標準化法 施行日:令和元年七月一日(平成三十年法律第三十三号による改正) から抜粋】
日本産業規格は、様々な製品の形状や寸法、品質などの仕様や、加工技術などについて定めている規格です。製品や技術に一定の標準を設けて日本全国的に統一し、互換性や品質の確保、安全性の確保を行うことを目的としています。
例えば、パソコンなどのコンピュータ製品で使う日本語キーボードは、文字配列がJIS規格で定められています。もし製品ごとにキーボードの文字配列が異なっていたら、不便で使いにくいですよね。
私たち消費者が一時的に他のキーボードを使っても操作性が変わらないのは、JIS規格により標準化されていることが理由になります。
製造事業者側にとっても、消費者のニーズに合わせてキーボード配列を変える必要がない為、生産効率の向上につながります。
また、必要な審査を受けて基準に適合していると認証された製品や技術には、JISマークの表示が可能です。JISマークは基準に適合していなければ使用できないため、JIS規格で定められた品質や安全性が確保された製品であることを証明できます
2.JISマークはどのような製品につかわれるのか
JISマークがどのような製品についているか何点か例を挙げてみましょう。
2-1 電池
サイズ・電圧などが決まっていますので、同一(単一とか単三などの表現をします)サイズの電池を買ってくればどこのメーカでも問題無く使えますね。
電池に関しては
・JIS C 8500 一次電池通則
・JIS C 8513 リチウム一次電池の安全性
・JIS C 8514 水溶液系一次電池の安全性
・JIS C 8701-1 小型制御弁式鉛蓄電池 第1部:一般要求事項、機能特性及び試験方法
・JIS C 8702-2 小型制御弁式鉛蓄電池 第2部:寸法、端子及び表示
の様なJIS規格があります。(一部抜粋)
サイズだけではなく、安全性についても規定されています。
テレビのリモコンの様に一度入れると半年から1年程度は普通に使えますね。
と言っても長時間使用しない時はその機器等から電池を外して保管するようにしましょう。
2-2 ヘルメット
ヘルメットの規格には
・産業用ヘルメット(JIS T 8131)
・乗車用ヘルメット(JIS T 8133)
・自転車用ヘルメット(JIS T 8134)
等の種類がありそれぞれにJISで規定されています。
衝撃吸収性や耐貫通性など、人間の頭部を危険から守るための安全性能をチェックしています。使用する用途により求められる強度等が異なるため、試験方法や検査内容、認証条件は同じではありません。ヘルメットにJISマークがついていれば、それぞれの用途に合わせて検査したJIS規格適合のヘルメットだと判別が出来るので、消費者は安心して使用する事が出来ます。
工場の現場などで着用する安全ヘルメットとバイクの乗車用ヘルメットは規格が違うので安全ヘルメットでバイクの乗車用に使用する事は出来ません。
2-3 マスク
マスクにもJIS規格はあります。
マスクのJIS規格は、新型コロナウィルスの感染によるマスク需要の増加により、布マスクやウレタンマスクなど、マスクの多様化が進んだことをで、2021年6月に制定されたそうです。
制定された規格は
・JIS T 9001「医療用及び一般用マスクの性能要件及び試験方法」
・JIS T 9002「感染対策医療用マスクの性能要件及び試験方法」
があります。どちらも、ウイルスや花粉などの捕集機能、通気性、安全・衛生面を考慮した試験項目など、さまざまな規定があります。パッケージなどのJISマークを確認することで、一定の性能基準を満たしたマスクで有る事がわかり安心して購入・使用できます。
2-4 鉛筆
鉛筆にもJIS規格があります。
・JIS S 6006:2000「鉛筆、色鉛筆及びそれらに用いるしん」
鉛筆の種類「9H~2H,H,F,HB,B,2B~6B」品質とその試験方法について
表示(一本毎に種類と製造者名を表示)
寸法(鉛筆の長さ・しんの直径)
等があります。
2-5 電子・電気機器関連
電気・電子に関してのJIS規格は多種ありますが、一例をあげます。
・JIS C 0617 電気用記号
回路図等図面に用いる電気・電子部品のシンボルを規定したものです。
・JIS C 60068 環境試験方法(電気・電子)温度変化試験方法
温度変化または温度変化の繰返しが,部品・機器またはその他の製品に与える影響を確かめるための試験方法について規定しています。
・JIS Z 0202 梱包貨物―落下試験方法
輸送過程で落下衝撃を受ける包装貨物の落下試験方法について規定しています。
2-6 ねじ類
ねじにもJIS規格がありますのでサイズを指定すれば何処で購入しても同じものが購入できます。
・JIS B0205:2001(M)「一般用メートルねじ(M)の呼び径及びピッチの選択について規定」 ねじに関してはほかにも色々とJIS規格がありますが省略します。
2-7 QRコード
皆さんもよくお使いかと思いますがたくさんの情報量を、小さなスペースで表現できるQRコードは、開発した日本企業が「みんなに自由に使ってもらいたい」との思いから、QRコードの仕様は公開されています。JISでの規格化も行われ、制定されています。
・JIS X 0510 「情報技術-自動認識及びデータ取得技術-QRコード バーコードシンボル体系仕様」
仕様がオープンになっていることで、事業者も個人も安心して利用できる為、多くの分野で導入が進み、現在は海外での活用も広まっています。
3.JISの取得について
JISの認証を取得するには、国に登録された登録認証機関の審査を受け、JIS規格に適合していると認証をもらう必要があります。該当する製品や技術の試験以外に、工場や作業場の品質管理体制が基準に適合しているかも審査される対象です。
JIS認証の流れとしましては次の様になります。
〇認証の申請
〇工場審査、製品試験
〇認証決定
〇JISマーク使用許諾契約の締結、表示の確認
〇JIS適合性認証書の発行、認証製品の公表
認証後は定期的な認証維持審査が必要となりますので認証を貰っても維持する事も重要です。 認証取得までの期間は規格によっても異なるそうで、3~4ヵ月程度かかるのが一般的との事です。 海外の工場や長期間の試験が必要な場合は、さらに期間を要することもあるため、取得までの時間軸の設定には注意が必要です。
また、認証手続きに必要な費用は、登録認証機関や製品規格、工場の規模や場所、条件により異なります。各登録認証機関のホームページ等に掲載されている料金表でおおよその目安(予算)を立てて、諸条件により変動など、具体的な費用を知りたい場合は、直接問い合わせで詳細を伝え、見積もりを行う様にしましょう。
JIS規格は国内の産業を標準化し、互換性や品質の保持・安全性の保持を目的として制定された規格だそうです。JIS規格は、消費者の製品選択時の補助になるだけではなく、売り側の事業者が製品の品質を高め、安全性などの機能を消費者にアピールすることにもなっています。