IPアドレス(Internet Protocol Address)は、インターネット上のネットワークデバイスを一意に識別するために使用される番号です。IPアドレスは、コンピュータ、スマートフォン、サーバー、ルーターなど、ネットワークに接続されたあらゆるデバイスに割り当てられます。
1. IPアドレスの概要
IPアドレスは、IPv4(Internet Protocol version 4)とIPv6(Internet Protocol version 6)の2つのバージョンがあります。IPv4は32ビットのアドレスで構成されており、通常、4つの数字(0から255までの範囲)で表されます(例:192.168.1.1)。IPv6は128ビットのアドレスで構成されており、通常、8つのグループに区切られた16進数で表されます(例:2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334)。
IPアドレスは、パケット通信において送信元と宛先を識別するために使用されます。データを送信する際、送信元デバイスは自身のIPアドレスをパケットに含め、宛先デバイスのIPアドレスも指定します。これにより、ネットワーク上のルーターやスイッチ(スイッチングハブ)などのデバイスが、パケットを正しい宛先に転送することが可能となります。
IPアドレスは、インターネットサービスプロバイダ(ISP)やネットワーク管理者によって割り当てられます。一般的に、個人や家庭向けのインターネット接続では、ISPから動的に割り当てられるダイナミックIPアドレスが使用されます。一方、ビジネスやサーバー環境では、静的IPアドレスが割り当てられる場合もあります。
IPアドレスはインターネット上のデバイスの識別に使用されるため、特定のIPアドレスを追跡することで、そのデバイスの所在地やネットワーク上での活動を特定することができます。ただし、IPアドレス自体には所有者の情報は直接含まれておらず、追跡するためには追加の手続きやデータを使用する必要があります。
2.IPアドレスの使われ方
2-1「グローバルIPアドレス」
その名前のとおりに全世界で通用するアドレスで、世界中どこからでもデータ送受信の際に送り間違えのないよう、世界にただひとつインターネットに接続する際に割り振られるIPアドレスです。
グローバルIPアドレスは特定の国や地域に属さない「ICANN」という組織によって世界的に管理 されており、ICANNから日本の管理組織であるJPNICに割り振られ、そこからインターネット・サービス・プロバイダ(以下ISP)を経由して利用ユーザーへと割り振られています。
そのため、利用ユーザーがプロバイダ(ISP)と契約すると、ISPに割り当てられたIPアドレスのなかからPCやルーターが接続した際に通信が重複しないよう割り振られるため、同じグローバルIPアドレスが存在することはありません。
(*)ICANN:(英語: Internet Corporation for Assigned Names and Numbers、アイキャン)
インターネット上で利用される識別情報の割り当てや管理などを行う国際的な非営利法人です。
1.ドメイン名の管理: ICANNは、トップレベルドメイン(TLD)と呼ばれるドメイン名の最上位部分(例: .com、.org、.jpなど)を管理しています。ICANNは、新しいTLDの創設や既存のTLDの変更を承認し、各TLDの運営者(レジストリ)と契約を結んでいます。
2.IPアドレスの割り当て: ICANNは、インターネット上で使用されるIPアドレスの割り当てと管理を行っています。これには、IPv4とIPv6のアドレススペースの管理、地域インターネットレジストリ(RIR)へのアドレスブロックの割り当て、RIRの監督などが含まれます。
3.ルートゾーンファイルの管理: ICANNは、インターネットのDNSルートゾーンファイルの管理を行っています。ルートゾーンファイルは、インターネットのDNSシステムの基盤となる重要なデータベースであり、TLDの情報を含んでいます。
4.ポリシーの策定: ICANNは、インターネットの基盤に関連するポリシーの策定に関与しています。ICANNは、多様なステークホルダー(政府、企業、技術者、一般ユーザーなど)からなるコミュニティによって構成される多国籍の機関であり、ポリシー決定のための議論や合意形成のプロセスを実施しています。
5.インターネットの安定性とセキュリティ: ICANNは、インターネットの安定性とセキュリティに関する取り組みも行っています。サイバーセキュリティの向上やDNSの安全性の維持、ドメイン名の紛争解決など、インターネット上の脅威や問題に対処するための活動を行っています。
2-2「プライベートIPアドレス」
自宅や会社など特定のネットワークの範囲内で用いられるIPアドレスのことです。ローカルIPアドレスとも呼ばれます。グローバルIPアドレスとは違い、そのネットワーク内(自宅や会社内のみ)で識別できれば良いので、ほかのネットワークでは同じ番号が使われている可能性があります。
ちなみに、このプライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスはそれぞれ番号の割り当て範囲が決まっており、詳しい人が番号を見れば、どちらのIPアドレスか判別することができます。
「192.168.xxx.yyy」の様なアドレスはローカルネットワーク内で使用する「プライベートIPアドレス」です。
2-3グローバルIPとプライベートIPの関連性について
グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの関係性について説明します。
例えば、家族で共用のWi-Fiを使用するケースの場合、グローバルIPアドレスが割り振られるのはWi-Fiルーターで、そこに接続するスマホやPC、家庭用ゲーム機などにはプライベートIPアドレスが設定されます。これにより各機器はルーターを介してインターネットに接続できます。
各機器はプライベートIPアドレスを経由し、グローバルIPアドレスを持つルーターを通してインターネットに接続しています。グローバルIPアドレスが外部と連絡するための“外線電話”なら、プライベートIPアドレスは“内線電話”ということになります。
カフェなどの公衆Wi-Fiでも、各機器にはプライベートIPアドレスが割り振られ、ルーターを介してインターネットへと接続しています。マンションの共用Wi-Fiも同様で、各部屋に専用線(プロバイダー契を行っていない様な場合です)を引いていない場合は各部屋ではプライベートIPアドレスが割り振られるケースが多いです。
3.IPアドレスの割り振り方
IPアドレスがどのように割り振られるかについて説明します。IPアドレスの割り振り方は、動的タイプと固定タイプの2種類があります。通常プロバイダ(ISP)から割り当てられるのは動的タイプで、固定タイプはオプションになっていることが多いです。それぞれ「動的(可変)IPアドレス」「固定(不変)IPアドレス」などと呼ぶのが一般的です。
3-1動的(可変)IPアドレス
インターネットに接続する度に、プロバイダ(ISP)から新たなIPアドレスが自動的に割り振られるのが動的(可変)IPアドレスで、普段スマホやPCなどを利用するときに割り当てられるのがこちらのタイプとなります。一定時間が経過したり、ネットを切断するたびに番号が変更されます。家庭用Wi-Fi(ルータ)はもちろん、公衆Wi-Fi(ルータ)などでもこちらのタイプが採用されています。
動的タイプの場合、IPアドレスはプロバイダ(ISP)から自動的に割り振られる為、特別な接続設定などは不要です。またIPアドレスが変動するので、ユーザーが特定されるリスクは低くなります。
3-2固定(不変)IPアドレス
常に同じIPアドレスで接続するケースに対応したものが固定(不変)IPアドレスです。会社内のシステムなど特定の許可した人(機器)しか通信できないよう設定する場合は、接続の度にIPアドレスが変わってしまっては、どこからのアクセスか特定できない。接続が許可された人であることを特定するために固定IPアドレスが必要になります。
固定IPアドレスでインターネットに接続する際はユーザーが手動で接続設定する必要がありますが、リモートワークで自宅から会社にアクセスする場合や遠隔監視を行うネットワークカメラなど、固定IPアドレスを必要とするケースも少なくありません。
固定IPアドレスはほとんどのプロバイダ(ISP)ではオプションプランになっており、プロバイダー(ISP)ごとにその取り扱いや料金も違うため、利用用途に応じて比較検討しましょう。