インピーダンス(英語表記: impedance)とは、交流回路における電気抵抗の値を指します。
1.概要(インピーダンスとは何?)
インピーダンスとは、交流回路における電気抵抗の値を指します。インピーダンスの値が高くなるほど電気が流れにくくなりますので、インピーダンスは交流回路における電気の流れにくさを表しています。インピーダンスを表す量記号は「Z」、単位は直流回路と同様に「Ω(オーム)」です。インピーダンスには、電圧を出力する回路での出力インピーダンスと電圧が入力される回路での入力インピーダンスがあります。
インピーダンス:Zは次の式で表す事ができます。
※:単位はΩなので、オームの法則(直流回路)の R=V/Ⅰと同様の式です。
という事は、交流回路では抵抗をインピーダンスに置き換えてオームの法則と同様に適用する事ができます。
よって
となります。
インピーダンスが大きい程電流が流れにくく小さくなります。
インピーダンスの値は電圧と電流の比によって求めることができます。インピーダンスの計算方法は、回路の構成によって異なるため、求めたいインピーダンスの値に対して適切な計算ができているかには注意が必要です。
2.種類(インピーダンスの種類)
インピーダンスには周波数の影響によってその値が変化しないレジスタンス(抵抗)・周波数によって電流の流れやすさが変化するリアクタンスを合成(合わせた)ものになります。
インピーダンスは、抵抗やコンデンサー、コイルといった特定の部品ではなく、接続される回路(負荷)の電流の流れにくさを表します。
入力側から見た負荷側のインピーダンスを負荷インピーダンスという呼び方をします。
2-1リアクタンスとは
リアクタンスとは、キャパシター(コンデンサー)やインダクタ(コイル)における電流の流れにくさです。
リアクタンスが大きければ大きいほど電流の値は小さくなり、リアクタンスが小さければ小さいほど電流の値は大きくなります。本質的には抵抗と似た部分になります。
交流回路でキャパシタによる電流の流れにくさを容量性リアクタンスと呼び、インダクタによる電流の流れにくさを誘導性リアクタンスと呼びます。
2-2容量性リアクタンスとは
容量性リアクタンスは、キャパシター(コンデンサー)による電気の流れにくさです。コンデンサーは蓄電や放電を行う電子部品であり、スマートフォンやパソコン、テレビなど様々な電子機器で利用されています。リアクタンスの記号は「X」ですが、容量性リアクタンスを表す場合は「Xc」が使われます。単位はリアクタンスと同様に「Ω」です。容量性リアクタンスは次の式で表されます。
この式で出てくるωは角周波数で
となりますので、式3 式4 を整理しますと次の様になります。
2πfC
fはその回路信号の周波数でCはコンデンサーの容量になります。式5から分かる様に容量性リアクタンスは周波数(f)が大きくなる(式5の分母が大きくなる)と値が小さくなるが特徴です。
2-3誘導性リアクタンスとは
誘導性リアクタンスは、コイル(インダクタ)による電流の流れにくさです。コイルは電気と磁気に作用する電子部品で、抵抗器やコンデンサーなどと同じく幅広い電子機器で利用されています。誘導性リアクタンスの記号は「XL」、単位は「Ω」です。誘導性リアクタンスは以下の式で表されます。
容量性リアクタンスと同様に角周波数を置き換えると
となります。Lはコイルのインダクタンスです。容量性リアクタンスとは逆に、誘導性リアクタンスは周波数が増えるほど値が大きくなるという特徴があります。
2-4インピーダンスとリアクタンスの関係性
最初の方でも説明致しました様に、インピーダンスは抵抗とリアクタンスを合成させたものです。リアクタンスはインピーダンスの構成要素の一つです。リアクタンスには容量性リアクタンス(コンデンサー)と誘導性リアクタンス(コイル)の2種類がありますので、インピーダンスは抵抗・容量性リアクタンス(コンデンサー)・誘導性リアクタンス(コイル)の3つで構成されている事になります。
3.インピーダンスについてもう少し具体的に
3-1レジスター(抵抗)の場合について
レジスター(抵抗)は式2より
で表されます。
10Ωの抵抗に「振幅10V,50Hzの周波数の交流電源」を接続すると、オームの法則より振幅1Aの電流が流れます。周波数を2倍にした「振幅10V,100Hzの周波数の交流電源」を接続しても、電流の大きさは1Aのまま変化しません、それを式で表すと下記となります。
このように、抵抗は周波数が変わっても電流を妨げる力は変わらないので流れる電流に変化はありません。(式に周波数が入っていない事からも解ります)
3-2 容量性リアクタンス・キャパシタ(コンデンサー)の場合について
容量性リアクタンス・キャパシタ(コンデンサー)は式5より
f:周波数(Hz)
C:コンデンサーの静電容量(F):ファラドと読みます。
で表されますので容量性リアクタンスは周波数(f)に反比例します。そのために、交流回路の周波数(f)が大きい程、容量性リアクタンスは小さくなります。
なお、直流回路では周波数は0Hzとなるので容量性リアクタンスは無限大となります(コンデンサーを開放するのと同じ事になります)。
3-3 誘導性リアクタンス・インダクター(コイル)の場合について
誘導性リアクタンス・インダクター(コイル)は式7より
XL=2πfL ・・・式7
f:周波数(Hz)
L:コイルのインダクタンス(H):ヘンリーと読みます
で表されますので誘導性リアクタンスは周波数に比例します。そのために交流回路の周波数が高いほど、誘導性リアクタンスは大きくなります。なお、直流回路では周波数は0Hzなので誘導性リアクタンスは0Ωとなります(コイルを短絡することと同じ事になります)。
3-3 インピーダンスとは(まとめ)
インピーダンスは『抵抗(レジスタンス)』と『リアクタンス』を合わせたものです。
少し言い方を変えると、電流の流れを妨げるものの総称が『インピーダンス』であり、インピーダンスの中で直流も交流も電流を妨げるものが『抵抗(レジスタンス)』であり、交流成分のみの電流を妨げるものが『リアクタンス』ということになります。
また、インピーダンスを式で表すと下記の式で表されます。
Z=R+jX ・・・式(10)
そのため、インピーダンスの実数部が『抵抗(レジスタンス)』、虚数部(jX)が『リアクタンス』と説明している方(資料)も多い様です。
・おまけ(インピーダンスの記号について)
インピーダンスは英語では「Impedance」と書きますが、記号は「I」ではなく「Z」を使用しています。「I」は電流の記号ですでに用いられているため使用することができないからと思われます。A~Zのアルファベットのうち使用されていなかったものが「Z」なので、インピーダンスの記号が「Z」になったという説が有力との事です。