音響カプラとは

音響カプラとは、電話回線を利用してデータ通信を行うための装置の一種で、データをいったん音声信号に変換し、電話の受話器を通じてデータを送受信する装置のことです。

1.音響カプラの概要

電話機の送受話器と、モデムに接続したスピーカー及びマイクロフォンを密着させ、音声を用いてデータ通信を行うことにより、公衆交換電話網(PSTN)を利用してコンピュータ間の通信を可能にした通信機器の事です。

 初期の頃の製品は変復調部分を内蔵して通信用インターフェースを備えています。その後は音響と電気信号の変換だけの機能となりました。

 音響カプラは、現在の様なインターネットが普及しておらず、モデムの設置にも制約があった頃に、電子メールなどのデータ通信を行う手段としてよく利用されていました。音響カプラに受話器をはめ込んで、受話器のマイク部分に向かって音声信号を出力することでデータを伝える仕組みとなっています。受話器に音声を伝える際、受話器のマイクが周囲の雑音も一緒に拾ってしまいやすい構造になっていたので、伝送エラーを起こしやすいという難点がありました。

その後モジュラージャックにモデムを接続して利用できるようになり、音響カプラは通常の通信手段としては使用されなくなりました。

初期の通信速度は300bps程度で、1989年頃には1200bps ~2400bps、2005年時点では28.8Kbpsの製品が市販されていました。この様に現在のインターネットの速度は比べものにならない遅い速度でした。(現在の一般的なインターネットの速度は1Gbps~10Gbpsと1000万倍程の違いになります。:1Gbps=1000Mbps=1000000kbps=1000000000bps)

(*)モデム:
アナログ信号をデジタル信号に、また、デジタル信号をアナログ信号に変換する機器です。変調機(modulator)と復調機(demodulator)の両方の機能を持つ機器ですので、その言葉を組み合わせてMODEM(モデム)と呼ばれているそうです。

(*)モジュラージャック:
電話線などの信号線をまとめて接続する場合に用いられる端子(コネクター)を言います。電話やFAX・モデムなどを接続する時に用いられています。プラスチック製のプラグに抜け落ち防止の爪のついた形状をしています。最近ではご家庭でも固定電話を使用されていない様なのであまり見かける事が無いかと思いますが。LANケーブル用のコネクターより小さい形状をしています。

2.音響カプラのその後

2-1音響カプラのその後

音響カプラは徐々に使用されなくなり、ダイヤルアップモデムやADSLや日本では1990年代半ば頃電話回線デジタル化方針(INS:Information Network System)に伴い家庭用電話回線のISDN化が推進されました。一般家庭向けには64kbpsの容量のBライン2本と制御のⅮラインをまとめた2B+D回線で最大128kbpsのデジタルデータ通信サービスがありました。

(*)ISDN:(Integrated Services Digital Network)の略
ISDNは、通常の電話線(メタル線)を使ったデジタル回線のことです、音声データをデジタル変換して電話線で送受信する方式です。従来の音声をそのまま電気信号として送るアナログ回線方式と比較して、音声が良かったり盗聴が難しかったりする特長があります。2024年にはISDNのサービスは順次終了するそうです。

(*)ダイヤルアップモデム
電話回線を利用したインターネット接続方法です。1990年代に電話回線があれば利用出来るインターネット回線として普及したものです。

音響カプラに替わってダイヤルアップモデムというものが使われるようになりました。その当時のダイヤルアップモデムの速度は56kbpsが登場した頃で128kbpsのISDN回線はそれなに魅力のあるものでした。しかしISDNはあくまでも従来の電話回線の延長で「あくまでもデジタル電話」でしたので、通話料を支払ってプロバイダーに電話を掛けて接続するというやり方でした。現代の「ブロードバンド接続」と表現できるものではありませんでした。しかし2000年頃には常時接続・定額制のサービスがありましたが64kbpsといスペックではブロードバンド接続の主流にはならなかったそうです。

2-2 ダイヤルアップについて

当時はよく利用されていました、ダイヤルアップ接続の通信速度は技術の進歩もありまして理論値で56kbps~128kbpsほどの速度となったそうです。

ダイヤルアップの仕組みですが、パソコンとLANケーブルでモデムと言われている機器に接続します。モデムの役割はパソコンからのデジタル信号を電話回線のアナログ信号に変換する機器です。モデムには電話回線が接続していて、変換したアナログ信号をそのまま電話回線に中継する役目を持っていました。

2-3 ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line:非対称デジタル加入者線)について

通常ご家庭で利用されている電話回線(通称:メタル回線)の、通常電話の利用していない周波数帯(領域)を利用して高速なデータ通信を可能にするサービスです。そのためADSLでは、1本の電話回線で電話と高速インターネット接続を同時に利用することができるシステムでした。

ADSLは「上り」(パソコンからインターネットへ)と「下り」(インターネットからパソコンへ)の通信速度が異なることが特徴です。また、接地場所と中継局との距離によって通信速度が変わるという事もありました。(距離が近い程速度が速かったそうです。)

ADSLの利用者は2006年3月末の1452万件をピークに、FTTHの普及や携帯電話のインターネット接続の高速化及びWiMAXなどの高速無線インターネット接続の普及に伴って減少に転じて、最盛期の10%未満の131万件(2020年6月末現在)にまで減少し、2023年頃からADSLを提供していた各社は順次サービスを終了予定の様です。

2-4 FTTH(Fiber To The Home)について

FTTHとは、光ファイバーを使った一般家庭向けの通信サービスのことです。また、一般家庭・個人宅に限定せずに同様の形態でサービスの提供を受ける小規模なオフィス向けも含めてFTTHという事もあるそうです。

・FTTHの利点:

電話線を使用していたADSLと比較すると、収容局(中継局)からの線路長が長くても伝送損失の影響が少なく。さらに、周囲からの影響(ノイズ等)も受けづらいです。その様な事を原因とした速度低下や通信切断(再トレーニング)も少なく、安定した通信が可能となっています。収容局(中継局)から加入者宅までの通信可能距離は、概ね 20kmとの事です。

安定したIP電話・IPテレビ電話・光波長多重通信によるデジタルテレビ放送を含む多チャンネルのケーブルテレビの同時伝送など、多くのサービス提供が可能との事です。

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