主に大規模な産業プラントや製造設備で使用される制御システムの一種でシステム全体を複数の分散したコントローラやコンピュータで管理を行う方式の事です。
1.分散制御システム(DCS)の特徴
分散制御システム(DCS)は分散したコントローラで制御を行いながら集中監視や冗長性を備えたシステムです。大規模かつ複雑なプロセスを自動化しリアルタイムで管理することで信頼性・効率性を確保しています。分散制御システム(DCS)の柔軟性・拡張性・信頼性がプラントや製造現場において重要な事となります。主な特徴について説明致します。
1-1 分散された制御アーキテクチャ
分散制御システム(DCS)の最大の特徴は制御機能が分散していることです。システム全体を中央の制御装置で集中管理するのはなく、複数のコントローラが設備の各場所に設置されそれぞれが個別の制御を担当します。この分散アーキテクチャによるメッリトとして次の内容が挙げられます。
①局所的な制御:
各コントローラが特定のプロセスや機器を管理するため制御がより正確かつ敏速に実行されます。
②障害の局所化:
システムの一部に障害が生じても他の部分は正常に稼働し続けることができシステム全体の信頼性が向上します。
1-2 リアルタイム制御
分散制御システム(DCS)ではリアルタイムでデータを収集し即座に処理・制御を行います。これにより製造プロセスや設備の状態を常に最適に保つことができます。
①センサーとアクチュエータとの連携:
分散制御システム(DCS)ではセンサーから収集したデータを基にプロセス制御を実施します。たとえば温度・圧力・流量などのデータをリアルタイムで監視し必要に応じて自動で調整を行います。
②プロセスの最適化:
これによって製品品質の向上や効率的な運転が可能になります。

1-3 集中監視と分散制御の組み合わせ
①集中監視システム:
オペレータは中央の制御室から分散制御システム(DCS)全体を監視できます。分散された各コントローラのデータが中央に集められプラント全体の状態を総合的に把握することができます。これによってオペレータは異常が発生した場合に即座に対応することができます。
②分散制御のメリット:
各エリアやプロセスに対応するコントローラが独立しているため制御の柔軟性が高く応答速度も向上します。これによってシステム全体の運用効率を高められます。
1-4 スケーラビリティ(拡張性)
分散制御システム(DCS)はプラントの規模や構成に合わせて柔軟に拡張が可能です。
①新しい設備やプロセスの追加:
分散制御システム(DCS)は分散構造のため新しいプロセスを簡単に追加することができます。 これによってプラントを拡張する際にも対応が容易で長期的な運用に適しています。
②既存システムへの統合:
既存の設備と新しい設備を効率的に統合することが可能でシステム全体の管理が容易となります。
1-5 冗長性と高い信頼性
分散制御システム(DCS)は特に産業分野での稼働停止が大きな損失を生むような状況で非常に高い信頼性が求められます。そのために冗長性(レッドンサンシー)がシステムに組み込まれています。
①冗長化されたコントローラとネットワーク:
重要なプロセスを担当するコントローラやネットワークは障害が発生してもバックアップが動作するように二重化されています。これによりシステム全体が停止するリスクが軽減されます。
②無停止運転:
一部の機器が故障しても他の機器やコントローラが代替して動作するため設備全体の運転を停止することなく修理やメンテナンスが可能です。
1-6 プロセスの自動化と柔軟性
分散制御システム(DCS)は高度なプロセス自動化もサポートしており製造工程の自動化やプロセスの最適化も行えます。
①柔軟なプログラム:
分散制御システム(DCS)は各プロセスに合わせてプログラムを設定することで、仕様変更や調整が容易となり異なる製品や工程に対応することができます。
②自動化のサポート:
工程が複雑であっても分散制御システム(DCS)は自動制御と監視を行うため手動操作の負担を減らし生産性を高めます。
2.分散制御システム(DCS)の利点と欠点
分散制御システム(DCS)の利点と欠点についてです、利点は先ほどの特徴とが利点となりますので欠点についての説明となります。
※分散制御システム(DCS)の欠点
2-1 初期導入コストの高さ
①高額なシステム導入費用:
分散制御システム(DCS)の導入には初期費用が高額になることが多いです。特に大規模なシステムの場合ハードウエアやソフトウエア・インフラの設置にかかるコストが非常に大きくなります。また冗長構成や高い信頼性を実現するためにはさらに高額となります。
2-2 複雑な設計と設定
①複雑なシステム設計:
分散制御システム(DCS)は柔軟性がある反面システム設計が非常に複雑で初期設定や構築に時間がかかることがあります。特に大規模なプロセスや工場での導入時にはシステムのカスタマイズが必要となり専門的な技術が求められます。
②メンテンナスの複雑さ:
複雑なシステムとなりますので保守やメンテンナンスが必要な場合、専門知識を持った技術者が必要となります。定期的なメンテナンスを怠るとシステムのパフォーマンスや信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

2-3 複雑な遅延や障害
①ネットワーク依存:
分散制御システム(DCS)は複数のコントローラ間で通信を行うためネットワークのパフォーマンスに依存します。ネットワークに問題が発生するとデータの遅延や通障害が発生し、プロセスの制御に影響を及ぼす可能性があります。
②通信障害のリスク:
分散システムの特性上コントローラ間の通信障害が発生すると、各エリアの連携が崩れる可能性がありこれが全体の制御に影響を与えることもあります。
2-4 技術者の不足
・熟練技術者の必要性:
分散制御システム(DCS)の設計や運用・メンテナンスには高度な知識が求められる場合が多くそのために熟練した技術者が不足している場合にはシステムの運用や保守に支障をきたす可能性があります。また新しい技術やシステムの更新に対応できる人材を確保する必要があります。
2-5 ソフトウエアの依存性
・特定ベンダーに依存:
分散制御システム(DCS)は通常のベンダーのソフトウエアやハードウエアに依存することが多く、長期的にはそのベンダーに縛られるリスクがあります。またベンダーによるソフトウエアのサポートや更新が停止するとシステム全体の運用に影響を与える可能性があります。
2-6 サイバーセキュリティリスク
・サイバー攻撃の対象:
分散制御システム(DCS)はネットワーク接続を活用するためにサイバー攻撃のリスクが存在します。特に近年の工業システムに対するサイバー攻撃の増加に伴い分散システム(DCS)も攻撃のターゲットとなる可能性が大きいです。強力なセキュリティ対策が求められますがその対策にかかるコストや技術的対応が欠点といえる場合があります。
※まとめ
分散制御システム(DCS)は高い信頼性や柔軟性・スケーラビリティを持ちリアルタイム制御やプロセスの最適化に優れたシステムです。その一方で初期導入高ストの高さや複雑な設計・設定・技術者の確保・ネットワークやセキュリティリスクなどの課題もあります。分散制御システム(DCS)を導入する際にはこれらの利点と欠点をバランスよく考慮し・設備やプロセスに最適なシステム設計を行うことが必要かと思われます。