静電気(static electricity)とは文字通り静止した電荷による物理現象です。物体同士の摩擦などで発生します、特に乾燥した冬場によく発生しやすいです。ドアノブなど触ったときにパッチと手にショックを受けた事があるかと思います。
1.概要(発生する原理)
静電気も電気ですので、大きさは電圧【V:ボルト】で表します。おおむね1mmで1000Vと言われていますので、ドアノブ等で10mm離れた位置でパッチとしたらそれはおおよそ 10000ボルトになります。また、雷も静電気によって発生しています。
静電気は、物質が電子を持つことによって引き起こされる現象です。物質は、原子や分子から構成されており、それぞれには陽子(正の電荷)と電子(負の電荷)が存在します。通常、物体は電気的に中性であり、陽子と電子の数が等しい状態です。しかし、物体が摩擦や接触によって他の物体と相互作用すると、電子が移動することがあります。これにより、物体の電荷バランスが変化し、静電気が発生します。例えば、毛布をこすると、毛布と身体の間で電子が移動し、身体が帯電します。
帯電した物体は、正の電荷(陽性)または負の電荷(陰性)を持つことがあります。同じ電荷同士は反発し、異なる電荷同士は引き合います。これが静電気の基本原理です。
静電気は、私たちの日常生活においてさまざまな現象として観察されます。例えば、冬にウールのセーターを脱ぐときに静電気が発生し、軽いショックを感じることがあります。また、靴を履いてカーペットを歩くときにも静電気がたまり、金属のドアノブを触ると感電することがあります。
静電気は、電子機器にも影響を及ぼすことがあります。例えば、静電気の放電がコンピュータや携帯電話などの電子部品に直接当たると、機器の故障やデータの損失が起こる可能性があります。そのため、静電気対策として、静電気を発生させにくくするための導電性素材や接地装置が使用されます。
2.静電気を制御する方法
静電気の制御には、いくつかの次のような方法があります。
2-1湿度を保つ:
静電気は乾燥した環境で発生しやすいため、室内の湿度を上げることで抑えることができます。加湿器を使用したり、湿度を保つために植物を配置することも方法の一つです。一般的には電子回路の組立に於いては湿度40%を超えると静電気が発生しやすくなると言われています。湿度は高い方が良いですが結露はしない様に注意する必要があります。
2-2アンチスタティックスプレー(静電気防止対策スプレー)を使用する:
アンチスタティックスプレーは、静電気を発生しにくくする効果があります。衣類や家具などにスプレーをかけることで、静電気を抑えることができます。
2-3適切な衣類や素材を選ぶ:
ナイロンやポリエステルなどの合成繊維は静電気が発生しやすい素材です。静電気を抑えるためには、天然繊維の衣類や靴下を選ぶことがおすすめです。また、革製品や靴底にも注意しましょう。
2-4靴下や靴の中敷きを変える:
静電気は靴や靴下から発生することが多いため、靴下や靴の中敷きを静電気を抑える素材に変えることが有効です。静電気を逃がす効果のある素材を選ぶと良いでしょう。
2-5地面との接地を確保する:
静電気は体と地面の間の電荷の不均衡から発生することが多いため、地面との接地を確保することが重要です。静電気対策用の靴(足から床間に静電気を逃がす)を使用する、導電性のマットを使用することで接地を改善できます。
さらに、リストバンドを使用して作業者と作業用マットを接地する方法もあり一般的に良く使われている方法です。
用途に応じてこれらの方法を組み合わせることで、静電気を効率よく抑える事が出来ます。
電子部品の組立などで一般的に用いられる方法と致しまして。
・静電対策の作業服の着用
・静電対策の作業靴の着用
・作業現場の床材を静電対応の床材の使用
・電子部品の組立作業台には導電マットの使用
・電子部品の組立作業者は静電対策用リストバンドの着用
などは最低限の方法です。
静電気を発生させない、発生した静電気は接地に流す(逃がす)が基本です。
3.静電気の規格
静電気の管理に関しての規格で代表的なものをご紹介しておきます。
詳しくお知りになりたい方はJIS規格など該当規格書をご覧ください。
・RCJ-5-1 ESD保護アイテムに対する要求事項
RCJS-5-1は国際規格(IEC61340-5-1)を基にした国内の団体規格です。
一般財団法人 日本電子部品信頼性センター(RCJ)が公表した規格で、「静電気現象からの電子デバイス保護一般要求事項」として、JISで制定されていない試験方法(手袋・指サックなど)を含めた静電気対策のアイテムやシステムについての要求事項を定めています。
電子デバイスの保護を目的とした静電気対策には、この規格に沿ったアイテムの使用が求められます。
具体的には、HBM※100V以上の静電気放電(ESD)が起こらないようにコントロールすることを目的としています。静電気対策用品には、電撃(スパーク)を防ぐためのものや、樹脂製品にホコリが付着しないようにするためのものなどがありますが、これらのアイテムでは放電対策の設定電圧が高く、電子デバイスを保護するのに適さない場合があります。
・JIS C 61340-2-1 材料及び製品の静電気電荷拡散性能の測定方法
この規格は,絶縁性及び静電気拡散性の材料及び静電気電荷の拡散性能の測定方法について規定すされたものです。この規格は,試験方法の一般的な規定とともに,具体的な適用に関する試験手順の詳細について規定されています。
・JIS C 61340-2-2 静電気-測定方法-帯電特性の測定
この規格は,物体と他の物体との間の接触,剝離,摩擦などによって発生する静電気電荷を評価するための静電気の帯電特性の測定方法についての規定です。また,この規格で取り扱う静電気の発生過程は,エレクトロニクス産業に限定したもので,測定対象についてもエレクトロニクス産業で一般的に用いるものに限定されます。
・JIS C 61340-4-1 特定応用のための標準的な試験方法-床仕上げ材及び施工床の電気抵抗
この規格は,静電気対策に使用するすべての種類の床仕上げ材及び施工床の電気抵抗(以下,抵抗という。)の求め方について規定されたものです。
・JIS C 61340-4-3 静電気-特定応用のための標準的試験方法-履物
この規格は,人体の静電気電位を制御するために用いる履物の電気抵抗の測定方法について規定されたものです。この規格は,履物の製造業者及び使用者が使用するのに適しており。履物単体での電気抵抗の測定方法を規定し,履物の受入試験に役立つものです。
・JIS C 61340-4-5 静電気−特定応用のための標準的試験方法-人体と組み合わせた履物及び床システムの 静電気防止性能の評価方法
この規格は,人体と組み合わせた履物及び床システム(帯電防止性能をもつ履物を履いた人体から床までの系)の静電気防止性能を評価するための試験方法について規定されたものです。
・JIS C 61340-4-6 特定応用のための 標準的試験方法−リストストラップ
この規格は,リストストラップの評価試験,受入試験及び都度試験のための電気的及び機械的な試験方法及び限度値について規定されたものです。
・JIS C 61340-4-9 特定応用のための標準試験方法-衣服
この規格は,静電気管理応用に用いる衣服の電気抵抗を測定するための試験方法について規定されたものです。 この試験方法は,均質な導電性若しくは均質な拡散性がある外衣,又は表面導電性若しくは表面拡散性をもつ衣服の部分若しくは衣服の構成要素を用いた外衣を評価するために用います。