遠隔監視の活用事例と導入メリット

1.はじめに

近年各分野での遠隔監視の導入が進んでいます。これまで現場に出向かなければ把握できなかった機器の状態や環境情報を離れた場所からリアルタイムで監視・観測・管理ができるこの仕組みはIoT技術の進化とともに急速に普及してきました。特に製造業を中心にした現場の効率化や社会インフラの維持管理コストの削減など業務のスマート化を支える重要な基礎技術となってきています。
またリモートワークの拡大や労働力不足への対応・カーボンニュートラルを目指す取り組みの中でも遠隔監視は注目を集めています。今回は遠隔監視の基本構成や実際の活用事例に交えてその導入メリットについて述べて行きます。

2.基本的構成

遠隔監視は離れた場所から設備の環境をリアルタイムで把握・管理するためには、いくつかの主要な要素が連携して動作しています。

2-1 センサー・計測機器

遠隔監視の「起点」となるのが、センサーや計測機器です。監視対象から必要な情報を正確に取得する役割を果たします。用途に応じてさまざまな種類のセンサーが使用します。

  • 温度センサー:機器の発熱や環境(周囲)温度をモニタリング
  • 湿度センサー:施設内や機器内の湿度をモニタリング
  • 振動センサー:機械設備の振動をモニタリングし異常振動を検知
  • 電流センサー:モータや設備の稼働状況をモニタリング
  • ひずみゲージ:構造物の歪や応力の変化をモニタリング
  • カメラ(画像センサー):目視確認を補助、AI解析などの活用

これらのセンサーはリアルタイムにデータを収集し通信装置などでデータを送信します。特に近年では低消費費電力・高精度なIoTセンサーの普及が遠隔監視の普及に貢献しています。

2-2 ゲートウエイ・通信端末

各センサーから送られるデータを受け取り、ネットワーク経由でクラウドやサーバへ送信するのが、ゲートウエイや通信端末となります。
主な役割は次の内容となります。

  • データ取集:複数センサーのデータを集約
  • データ前処理:ノイズ除去、異常フィルタリング
  • プロトコル変換:センサーごとの通信規格の違いを吸収
  • 暗号化・セキュリティ対策:データの安全な送信を確保

ゲートウエイは現場設置型(屋外防水型など)から小型のIoT向けデバイスまで多様に存在しており用途に応じて選定されます。また最近ではエッジコンピューティング機能(現場での簡易分析)を持つゲートウエイも増えてきておりシステム全体の負荷軽減に貢献しています。

2-3 通信ネットワーク

センサーやゲートウエイで集めたデータを遠隔地の管理センターなどへ届けるには安定した通信ネットワークが必要不可欠となります。用途や環境に応じて通信方法を選択します。

  • LTE/5G:高速・広域通信。都市部や移動体監視に適しています。
  • LPWA(LoRaWAN、Sigfoxなど):省電力・長距離通信。IoTセンサーに適しています。
  • WiFi:ローカルエリア内での高速通信
  • 有線LAN・光回線:重要施設での高信頼・大容量通信
  • 衛星通信:山間部や海上などの地上のネットワークが届かない場所向け

特に近年LPWA技術が進化しバッテリー駆動で数年運用可能なセンサー設備が容易になったことで山間部のインフラ監視や農業分野での導入が急速に進んでいます。

2-4 クラウドサーバ・管理プラットフォーム

通信ネットワークを通じて送信されたデータはクラウドサーバや専用プラットフォームに集約されます。主に次の処理を行います。

  • データの蓄積・保管(データベース管理)
  • リアルタイム監視画面の生成(ダッシュボード表示)
  • 異常検知・アラート発信(しきい値設定やAI予知診断)
  • 履歴管理・レポートのアウトプット(定期点検や監査用)

これによってユーザーは遠隔地からでも常に最新の現場状況を把握できるようになります。さらにAIや機械学習エンジンとの連携することによって異常傾向の予測や運用最適化の支援も可能となります。

2-5 ユーザー端末(PC・スマートフォンなど)

ユーザーが実際にシステムにアクセスし情報を確認・操作するための端末が必要になります。

  • ブラウザベースの管理画面(PC・タブレット対応)
  • スマートフォンアプリ(アラート通知や簡易操作)
  • メール・SNS通知(重要アラート即時連絡)

これらによって現場にいなくても異常を即座に把握が可能となり、必要に応じて遠隔から機器を制御することも可能となります。
モバイル対応の管理画面を採用することで、外出先や出張中でも敏速な初動対応が可能となりリスクを大幅に低減することが可能となります。

3.活用事例

実際のさまざまな業界で活用されている遠隔監視の事例になります。

3-1 工場設備のモニタリング

製造業において機械設備の稼働状況を常時把握することは、生産性向上とダウンタイム削減の鍵となります。遠隔監視を導入することによって稼働率・温度・振動などの異常をリアルタイムで検知が可能となり、故障の兆候を早期に発見することができます。これによって計画的なメンテナンスが可能となり、突発的なトラブルによるライン停止を防ぐ事が可能となります。 とある製造ラインでは主要設備に振動センサーを取り付け、異常振動を検知した時点でメンテナンス担当チームに自動で通知を行う仕組みを導入することで、年間10%以上の設備トラブルを未然に防止する成果を上げた例もあるそうです。

3-2 インフラ監視(橋梁・ダムなど)

社会インフラの老朽化が進む中、橋梁やダムといった大型構造物の定期点検・保守には膨大な労力とコストがかかります。遠隔監視を活用することで構造物に取り付けたひずみセンサーや傾斜計からデータを収集して劣化兆候や異常を早期に把握することが可能になります。
例えばある自治体では橋梁にセンサーを設置して常時モニタリングを実施し、基準を超える異常値を検知すると自動的に警告が発報され迅速な点検対応に繋がっています。これによって点検コストの削減と重大自己の未然防止が実現しました。

3-3 エネルギー管理(太陽光発電・風力発電)

再生可能エネルギーの普及に伴って遠隔地に設置された発電設備の管理が課題となっています。遠隔監視を活用すれば発電量や装置の温度異常・通信障害などをリアルタイムで把握でき敏速な障害対応が可能です。

太陽光発電業者での事例となりますが、各発電所にゲートウエイを設置し、発電データをクラウドに送信し異常発生時にはアラートが自動発報され保守担当のチームが現地に向かう体制を整備することによってダウンタイムを最小限に抑えて発電効率を最大限化する運用を実現したそうです。

3-4 農業分野(スマートアグリ)

農業現場では遠隔監視が「スマートアグリ」として注目を集めています。

ハウス内の温度・湿度・土壌水分量などをセンサーで常時計測してスマートフォンなどで遠隔確認できる仕組みが普及します。
農園の一例となりますが、ハウス内環境をセンサーで監視し自動潅水システムと連動して必要なときに必要な量の水を供給することによって、水資源の効率利用と作物の品質向上に成功したそうです。さらに、労力削減にも繋がり省力化農業の現実にも貢献できているそうです。

4.導入によるメリット

遠隔監視の導入は「設備の状態を離れた場所から見ることができる」という利便性だけではなく、業務全体の高度化と持続的な競争力向上につながる多くのメリットをもたらします。

4-1 業務の効率化・省人化

遠隔監視は手による巡回・目視点検に頼っていた作業をデジタル化し自動でデータを取得・記録できるようにしることによって次の効果が期待できます。

  • 巡回回数の削減:特に広大な工場や複数の拠点をもつ企業では稼働時間と人的コストが大幅に削減されます。
  • 夜間・休日の無人監視:人の常駐が難しい時間帯でもセンサーと通信機器によって24時間タイセイの監視が可能
  • 異常の早期発見による対応時間の短縮:定期巡回では気づけなかった突発的な異常もリアルタイムで把握が可能

4-2 データの蓄積と分析による新たな付加価値の創出

遠隔監視では機器や設備の状態を継続的・定量的に記録することが可能です。このデータは単に現在の状態を把握するだけではなく、招待的な戦略や改善策に活用できる資産となります。

  • 予防保全(予知保全):過去の振動・温度変化のパターンから、異常の兆候をAIで予測し計画的な保守に活用
  • 設備ごとの稼働実績分析:稼働率や消費電力量を分析することで、省エネ対策や生産性向上に寄与が可能

モーションコントロール、ODM開発のご相談は東阪電子機器へ

大切にしているのは、お客様とのコミュニケーション。
22業界・1,700機種の開発実績を有する弊社の専門スタッフが、
お客様のお困りごとに直接対応させていただきます。