故障モード影響解析(英語表記: Failure Mode and Effect Analysis の頭文字)は故障・不具合の防止を目的とした、潜在的な故障の体系的な分析方法です。
1.FMEAの概要
故障モード影響解析(FMEA)とは、製品や製造プロセスに潜在する故障モードを事前に洗い出しを行い、影響の分析を行い対策を講じる解析手法の事です。故障モードとは故障を引き起こす不具合(原因)を示し、故障そのものを意味するものではありません。故障モードの洗い出しにはFMEA評価フォーマット(FMEAシート)を活用します。 なお、類似した分析手法として「FTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)」があります。FMEAとFTAとの違いはアプローチの仕方にあり、FMEAはボトムアップ解析、FTAはトップダウン解析です。
(*)FTA:英語表記のFault Tree Analysisの頭文字。日本語では「故障の木解析」の事です。
不具合現象(事象)をトップ(頂上)にして、不具合(故障)の要因を階層状に分解しツリー状の図で原因調査を実施し、因果関係を明確にする手法です。
2.工程FMEA(Process FMEA:工程故障モード影響解析)
工程FMEA(Process FMEA:工程故障モード影響解析)とは、FMEAの考え方を製造工程管理に適用したもので、工程管理部門で利用されるのが一般的です。P・FMEAまたはプロセスFMEA等とも呼ばれます。製造工程に潜在する不具合を洗い出し、起こりうるミスやトラブルを予防します。製造プロセスの改善、品質保証や信頼性の向上が目的です。工程FMEAにおける故障モードの対象は、設備・人・材料・方法・計測などになります。
工程FMEA(故障モードおよび影響解析)は、製品やプロセスの設計段階での潜在的な故障や問題を特定してその影響を評価するための手法です。製品やプロセスの品質向上と問題の予防に役立ちます。工程FMEAの詳細については次のとおりです。
①目的:
工程FMEAの主な目的は、潜在的な故障モードや問題を特定し、それらが製品やプロセスに及ぼす影響を評価し、その結果を最小化するための対策を提案することです。
②手法:
工程FMEAは通常、クロス機能的なチーム(担当者)によって実施されます。製品やプロセスの設計や運用に関する専門知識を持つメンバーで構成されます。以下の手順に基づいて実施されます。
・故障モードの特定:製品やプロセスがどのような故障モードを持つかを識別します。故障モードとは、製品やプロセスが予期せず失敗する方法や状態を指します。
・故障の原因の特定:各故障モードについて、その原因を特定します。これには、設計の欠陥、材料の欠陥、操作ミス、環境の影響などが含まれます。
・故障の影響の評価:各故障モードが製品やプロセスに与える影響を評価します。これには、安全性、品質、生産性、顧客満足度などが含まれます。
・リスクの評価:各故障モードの発生頻度、検出可能性、および重大度を評価し、リスク優先度番号(RPN)を計算します。RPNは、リスクの高い順に故障モードを優先順位付けするための指標です。
・対策の提案:高いRPNを持つ故障モードに対する対策を提案し、その有効性を検証します。これには、設計の変更、製造プロセスの改善、検査およびテストの追加などが含まれます。
③利点:
工程FMEAの利点は、以下の通りです。
・製品やプロセスの問題を事前に特定し、リスクを最小限に抑えることができる。
・品質の向上と顧客満足度の向上に貢献する。
・製品の寿命を延ばし、メンテナンスコストを削減する。
・製品の信頼性と安全性を向上させる。
④注意点:
工程FMEAを実施する際には、以下の点に留意する必要があります。
・担当者の多様な視点を反映することが重要です。
・データの品質と正確性を確保するために、信頼できる情報を使用する必要があります。
・適切なリーダーシップとリソースの割り当てが必要です。
・定期的なレビューと更新が必要です。 工程FMEAは、製造業や自動車産業など、製品やプロセスの設計と開発に関わるさまざまな分野で広く利用されています。
3.設計FMEA(Design FMEA)
製品やシステムの設計段階で使用される品質管理ツールの一つです。製品やシステムが顧客の期待を満たし、安全性や信頼性を確保するために、潜在的な問題やリスクを特定し、それらに対する予防措置を講じることを目的としています。
①担当者の決定と計画:
・担当者を決定し、必要に応じて関連する専門家(設計エンジニア、品質管理者、製造エンジニアなど)を集めます。
・分析の範囲を明確にし、対象となる製品やシステムの機能、要件、設計仕様についての共通の理解を確立します。
②要因の特定:
・製品やシステムの設計に関連する潜在的な障害、故障、欠陥を特定します。
・それぞれの潜在的な失敗モードを記述し、それが発生した場合の影響を評価します。
③影響の評価:
・各失敗モードが製品やシステムに及ぼす影響を評価します。これには、品質、安全性、性能、および顧客満足度への影響が含まれます。
④原因の特定:
・各失敗モードの原因を特定します。これには設計上の欠陥、製造プロセスの問題、材料の選択、環境要因などが含まれます。
⑤予防策の設計:
・各失敗モードとその原因に対する予防策を開発します。これには、設計の変更、製造プロセスの改善、品質管理手法の強化などが含まれます。
⑥リスクの優先度付け:
・各失敗モードのリスクを評価し、重要度を優先順位付けします。これには、リスクの発生頻度、影響の深刻さ、検出可能性などが考慮されます。
⑦文書化と追跡:
・分析結果を文書化し、報告書を作成します。これにより、設計プロセスの進行と変更管理が追跡可能になります。
設計FMEAは、製品やシステムの設計段階で問題を事前に特定し、予防措置を講じることで、製品の品質や信頼性を向上させるのに役立ちます。また、製品の開発プロセス全体においてリスク管理を組み込むことで、後の段階での問題やコスト増加を回避するのに役立ちます。
4.機能FMEA
機能FMEAは、製品やシステムの各機能について、機能不全や故障を引き起こす可能性のある原因を特定し、問題を解決するための手法です。製品やシステムの構成要素ごとに機能要件を定義し、機能の失敗モードやその原因、それによる影響を評価します。
機能FMEAは、設計FMEAの一環として実施される手法です。
5.FMEAの評価方法
FMEAは、「故障モードの影響度(厳しさ)」「発生頻度」「検出難易度(検出可能性)」をそれぞれ1~10の段階で評価し、これらを掛け合わせたRisk Priority Number(RPN)を算出します。
・影響度(厳しさ):
故障モードが発生した場合に、どの程度の影響があるかを評価する指標。評価1は影響が小さく、10は重大な影響があることを示します。
・発生頻度:
故障モードが発生する頻度を評価する指標。1は非常に稀であることを表し、10は頻繁に発生することを示します。
・検出難易度(検出可能性):
故障モードを発見するために、どの程度の工数や費用が必要かを評価する指標です。1は容易に発見できることを表し、10は非常に困難であることを示します。
これらのスコアを掛け合わせたRPNを算出し、RPNが大きいほどその故障モードの重要度が高いことを示します。
RPN=影響度(厳しさ) x 発生頻度 x 検出難易度(検出可能性)
の式で求められます。
例えば:
影響度(厳しさ) =10
発生頻度 =2
検出難易度(検出可能性)=2
の時のRPNは 10 x 2 x 2 = 40
となります。
この例のRPN=40が高いか・低いかの評価の範囲や閾値はそれぞれの企業・業界又はその製品によっては異なるかと思います。
以上です(最後まで購読頂きありがとうございました。)