抵抗器(英語表記:resistor)とは、一定の電気抵抗値を得る目的で使用される受動素子の電子部品の一つです。通常は「抵抗」と呼ばれることが多いです。
1.抵抗器とは(概要)
抵抗器は、コンデンサー・インダクターと同様に基本的な電子部品です。ほとんどの電子・電気機器に使用されています。弊社の様に電子部品(機器)を扱っている方々にとっては当たり前の電子部品ですが、電子・電気回路にとっては重要な部品になります。抵抗器は、一定の電気抵抗値を持った受動部品であり、様々な用途で利用されています。
例えば、LEDやトランジスタなどの電子部品の保護や適切に動作させるために使用されるほか、電圧分圧や電流制限などの機能・電流や電圧を検出する機能・発熱を利用されたりする場合もあります。 また、電流(Ⅰ)・電圧(V)・抵抗(R)の関係はオームの法則に基づいて、以下の式1で表されます。
Ⅴ=ⅠxR・・・・式1
Ⅴ:電圧
Ⅰ:電流
R:抵抗
2.抵抗器の役割
抵抗器は電子回路に流れる電流の流れを制御してその回路に適切な量(電流)にすることが出来ます。
例えばLED回路を例にしますと、LEDと直列に抵抗器を接続し、LEDに流れる電流を定格以下に抑制することで、LEDの焼損を防ぎ適切な光度になる様にします。
この時の抵抗器を制限抵抗と呼ぶ事があります。
②分圧(電圧を分けます)
二つ以上の抵抗器を直列に接続して、その時接続した抵抗値に比例した電圧を任意に分圧(電圧を分ける)することができます。
高電圧から低い電圧を作る時などに利用します。
例えば電圧値のモニターを行う際に直接高い電圧をモニターするのではなく、低い電圧をモニターする事で本来の高い電圧値をモニターする事ができます。この時、電圧をモニターする際の回路に流れる電流でこの分圧電圧が変化する事が有りますので注意が必要です。
③電流検出
抵抗器に電流が流れると、その両端には流れた電流に比例した電圧が発生します。この電圧を測定することでその回路に流れる電流を測定することができます。
例えば、モータに直列に抵抗器を取り付けてモータに流れた電流を抵抗器で検出する事で、モータに流れる電流を制御するのに使用します。
この時の抵抗器をシャント抵抗器と呼ぶ事もあります。
④発熱
通常は抵抗に電流を流すとその消費電力による発熱を敬遠されますが、ヒータやドライヤーの様に熱を必要とする機器では、電気を熱に変換する部品として抵抗を利用します。これらの用途においては、できるだけ多くの電流を流せる抵抗器が必要となりますので、電力容量の大きい巻き線型の抵抗の使用が多い様です。
3.抵抗器の種類
一般的に使用されている抵抗器の種類について説明いたします。
3-1 固定抵抗器
抵抗値が一定(固定)の抵抗器です。
カラーカーボン抵抗
①炭素被膜抵抗器:(外観から 「カラーカーボン抵抗」と呼ぶ事があります)
炭素を主成分としたもので一般的なものです。一定の抵抗値を持ち、小型で安価です。セラミックの円筒の表面に焼き付けられた炭素膜が抵抗体となり、らせん状の切込みを入れて抵抗値を調整しています。
1-2W程度までの電力消費の少ない一般的な電気回路用に使用されています。
名前の通り抵抗値をカラーコードで表しています。
カラーコードの読み方をカラーカーボン抵抗の写真を例に説明します。
1番左:茶色
2番目:緑色
3番目:橙色
4番目:金色 です。
よって、
上図の「3バンド抵抗」を参照下さい。
第一数字:茶色=>1
第二数字:緑色=>5
乗数 :橙色=>3
誤差 :金色=>±5%
「1」「5」「3」「±5%」
第一数字と第二数字で「15」
第三数字は乗数で「3」ですので「1000」となりますので。
15000Ω±5% => 15kΩ 精度±5%
の抵抗値の抵抗という事になります。
②セメント抵抗
比較的電力消費が大きい回路に使用する抵抗器です。
写真はセメント抵抗と呼ばれるものです。その名前の通り、抵抗エレメントをセメントで充填している構造です。中容量(10W程度以下)のクラスの電力回路用として使用されます。
抵抗エレメントは、多くの場合巻線抵抗ですが、高抵抗(100Ω以上)の場合には酸化金属皮膜抵抗が使用されることもあります。
不燃性のセメントでケーシングしているため、発熱しても発火することはありませんが、高温になる場合は周囲の実装部品に注意が必要です。
また、金属の抵抗体をジャバラ状に打ち抜き、リードを取り付けてセラミックケースにセメント樹脂で封止した抵抗器(金属板抵抗「Metal Plate (Cement) Resistor」)もあります。低抵抗(10mΩから製造が可能)でかつ大電力(数W)でインダクタンスが小さい特徴がありますので、電流検出回路に用いられます。
③金属膜抵抗器:(略して 「キンピ」と呼ぶ事があります)
抵抗体にニッケルクロム合金などの金属による金属膜が使用され、安定性があります。温度による抵抗値の変化やノイズが少ない特徴があり、精密なアプリケーションの使用に向いています。
外観は概ねはカラーカーボン抵抗とほぼ同様の形状です。
④酸化金属皮膜抵抗:(略して 「サンキン」と呼ぶ事があります)
金属皮膜抵抗器の金属皮膜の代わりに、酸化スズなどの酸化金属を使用した抵抗器です。酸化金属の皮膜が熱によって燃焼することがないため、数W程度の中電力用として多く用いられます。燃焼せずに発熱するため、実装に注意が必要です。
こちらも、外観は概ねカラーカーボン抵抗とほぼ同様の形状です。
3-2 可変抵抗器 (ポテンショメータ)
抵抗値を変更する事ができる抵抗器です。
英語では可変抵抗器全般を指してポテンショメータと言われますが、日本語でポテンショメータと言った場合、多回転型で高精度・回転角度や移動量を電圧に変換するのものを特に指すのが普通のようです。
通常ではつまみなどが付き、簡単な操作で抵抗値が変えられるようになっているものを「可変抵抗器」と言っています。
3-3 半固定抵抗器
前項と同様に抵抗値を変更できる抵抗器です。
ユーザーは通常は操作せず基板上に実装された物をドライバ等(工具)で操作し、回路定数の調整等抵抗値を一度変更したらそのままの値で使用します。固定式では目的の抵抗値が得られない場合などに微調整として用います。
写真は103と表記があります、これば乗数表記ですので。
10000Ω=>10kΩ です。
メーカによって表記は違います。「10kΩ」と表記している物もあります。
3-4 シャント抵抗器
電流検出(測定)用に回路に挿入する抵抗器です。抵抗値が小さい(0.2mΩ – 数Ω程度)です。 大電流測定用に数万Aを流せるものや、精密測定用に誤差±0.01%程の高精度なものもあります。
3-5 チップ抵抗
以前は前項で説明致しましたカラーカーボン抵抗等の様なデスクリートタイプが多く使用されていましたが、小型化や自動実装化等で最近ではチップ抵抗が主流となっております。
チップ抵抗の場合はご覧のとおり数字(乗数表記)が書いているのでわかりやすいです。
写真左から
・470=>47Ω
・101=>100Ω
・100=>10Ω
となります。
近年部品は小型化され、チップ抵抗も小さくなっています。
1608サイズ:1.6mmx0.8mm
1005サイズ:1mmx0.5mm
(*)チップ抵抗のサイズ表記:
サイズ表記の数値は【縦・横】の寸法を表しています、覚えておくと便利です。
と1mm以下のサイズもありますので、図の様に抵抗値の数値が記載されていないものがありますので、ご注意下さい。
当然小さくなると電力容量も小さくなります、また小さくなると印加できる電圧(耐圧)にも設計時には注意が必要です。
また小さいからと言って密集させた場合は全体の温度上昇も合わせて注意が必要です。