フロッピーディスクは、磁気ディスクの一種で、磁性体を塗布・蒸着した樹脂製小円盤を樹脂製の保護ケースに入れたもので、1970年代から1980年代にかけて最も普及した外部記憶装置です。
1.概要
磁気ディスクの一種で、駆動装置からの取り出しが可能(リムーバブル)な記憶媒体です。磁性体を塗布したプラスチック円盤を駆動装置で回転させ、円盤の片面ないしは両面に同心円状にデータを記憶する構造です。円盤に記録された信号(データ)の読み書きはフロッピーディスクコントローラを介して行います。
現在では一般的なハードディスクとは異なり、駆動装置から媒体を取り外すことが出来るのが特徴です。ディスクの直径で、8インチ・5 1/4(5.25)インチ・3 1/2(3.5)インチの3種類があります。1969年に読み取り専用の8インチフロッピーディスクが誕生してから1990年末にかけてパソコン等の記録用に広く用いられました。
その後、パソコン等の性能の向上に伴い取り扱うデータの容量も増大した為に、CDやDVD・BD等の記録タイプの光ディスクドライブが使用される様になり、2000年頃からは徐々に使用されなくなっていきました。
2000年頃よりノートパソコンでその後ディスクトップパソコンでもフロッピーディスクドライブを内蔵しない製品が増えて現在では内蔵されているパソコンはほぼ無いと思われます。
一部ではフロッピーディスクの使用が必要となる事が有る様でその時は、USB接続の外付けドライブを利用しています。代替メディアとしましては、記録型CD・DVD・BD、USBメモリ、SDメモリーカード等の各種メディアがあります、配布・保管などの役割で分けて普及しています。またネットワークの発達によって、物理的な媒体でのデータ交換に使用すること自体が減少しています。
(*)ドライブ・フロッピーディスクドライブ・光ディスクドライブ
フロッピーディスクや光ディスク等の記憶媒体はそのままの単体ではデータの読み書きを行う事は出来ないのでドライブといわれる駆動装置(読み書きする事ができる装置)を使用します。これはそのPCやコンピュータ等に組み込まれているものや、USB接続等で外付けタイプのものがあります。
【PCにUSB接続されたフロッピーディスクドライブ】
2.サイズ
円盤(バース)のサイズ(直径)で分類されています。
2-1 8インチフロッピーディスク
1970年、IBM社によってIBM System/37のIPLローダーとして8インチのIBM23(23FD―2) フロッピーディスクが開発されました。その容量は80キロバイトでした。1972年には同じくIBMから新たなIBM33フロッピーディスクが開発されました。この時の容量は400KBで、ディスケット1枚で当時は主流で使用していたパンチカード1900枚に相当するデータを格納する事ができて当時としては画期的なもので、フロッピーディスクの基本となりました。その後ディスクを両面化し容量を800KBとしたIBM43フロッピーディスクとなり、さらに倍密度化して1.6MBのIBM53フロッピーディスクが登場しました。その後小型コンピュータやワードプロセッサの記憶媒体として利用されました。
初期の8ビットや16ビットパソコン用としても1980年代後半前後まで使われていました。
2-2 5.25インチフロッピーディスク
ミニフロッピーディスクとも呼ばれていました。8インチフロッピードライブでは通常のディスクの上で使用するには大きいとのことから小型化されたものです。
1976年に5.25インチのディスクとドライブユニットが発表・発売され当時の容量は109.4KBと少ない容量でした。1980年には両面・倍密度で容量が約4倍の437.5KBとなりまた。
その後フロッピーディスクはコンピュータによっては必要不可欠なものとなって、広く普及しました。
5.25インチのディスクは、1Ⅾ(片面倍密度)・2Ⅾ(両面倍密度)・2ⅮⅮ(両面倍密倍トラック)からその後主となった2HD(両面高密度)になりました。
しかし、信頼性に於いては8インチフロッピーディスク同様に問題点がありました。その構造上磁気に弱く外装も変形しやすく読み取り用ヘッド部分が常に露出しているなどです。これらのために、保管時は専用の封用状の入れ物に入れるなどの注意を払う事が必要でした。
2-3 3.5インチフロッピーディスク
1980年に3.5インチのディスクが開発され、その翌年の1981年に英文ワープロの外部記録媒体として採用され発売されました。8インチや5.25インチのフロッピーディスクは薄い樹脂製の袋に磁気ディスクが収められていましたが、3.5インチではプラスチック製の硬質ケースに改善され、金属製のスライドカバーがあり、5.25インチディスクと比べて磁性面は接触から守られる構造となりました。
その後3.5インチフロッピーディスクは大変普及し、最盛期では世界市場で1995年にディスクが年間約45億枚、2002年にはドライブが年間約14000台製造されましたが、1993年頃からCD―ROMが普及しフロッピーディスクの生産枚数が減少し、ドライブも2002年をピークに生産数が減少しました。
2-4 その他
フロッピーディスクの記憶容量を増やす為に、フロッピーディスクと上位互換を持ついくつかの製品が開発されました。しかしそれぞれの専用ディスクと専用のドライブが必要で製品同士の互換性もなく普及しなかったようです。
・ZIP:100MB、250MB
・スーパーディスク:120MB、240MB
・3.5インチフロッピーディスク(2HD)を特殊なフォーマットで32MBなどの容量を詰め込む手法もあったそうです。
3.フォーマット
- 8インチ
・片面単密度(「Diskette1」:約243KB)
・両面単密度(「Diskette2」:約493KB)
・両面倍密度(「Diskette2Ⅾ」:約985KB)
- 5.25インチ
・片面単密度1S(1sided Single density):約70KB
・片面倍密度1Ⅾ(1sided Double density):約140~ 160KB
・両面倍密度2Ⅾ(2sided Double density):約320~360KB
・両面倍密度倍トラック2DD(2 sided Double density Double track):約640~720KB
・両面高密度(8インチ2Ⅾ相当)2HD(2sided High density Double track):約1~1.2MB
- 3.5インチ
・片面倍密度1Ⅾ(約140~160KB)
・両面倍密度2Ⅾ(約320~360KB)
・片面倍密度倍トラック1DD(約320~360KB)
・両面倍密度倍トラック2DD(約640~720KB)
・両面高密度2HD(約1~1.2MB)
次の2つは一部メーカの専用であり一般には普及していません。
・両面超高密度倍トラック2ED(2 sided Extra high density Double track:約2.88MB)
・両面3倍密度3倍トラック(2TD – 2 sided Triple Density triple track:約9.3MB)
何れの容量をみても当時は便利に使っていましたが、今となってはスマホの写真1枚分も保存できない容量です。
4.その他
4-1ライトプロテクト
読み込みのみを許可し、書き込みを禁止する設定ができる構造です、「書き込み禁止」または「ライトプロテクト」と言います。その書き込み禁止の操作は各メディアによって異なりました。
・3.5インチディスク
ライトプロテクトノッチをスライドさせ、窓が空いた状態にします。
・5.25インチディスク
外装の切り欠きにライトプロテクトシールを貼ります。
・8インチディスク
外装の定位置に切り欠きを作成します。
ノッチを元に戻す、シールを剥がす、シールを貼るなどの逆操作を行えば、再び書き込み可能状態になります。
各々のディスクドライブは、ノッチまたはシールの位置に配置したスイッチまたは光センサ(多くはフォトインタラプタ)で、書き込み禁止の状態を判別していました。
この機能(機構)は結構便利で上書きなどしたくない様なデータには「書き込み禁止状態」にしておけば、誤って上書きや消去する事が出来ないので便利な機能でした。
4-2 耐久性・寿命
フロッピーディスクは磁気ディスクの一種なので磁気対しては弱いものでした。ある程度以上に強力な磁石を近づけると、記録されている情報は破壊されてしいます。ホコリなどの異物の付着や汚れにも弱く、記録面が汚れると情報が読み取れなくなり、破壊に至ることがあります。また高温多湿や紫外線も嫌いました。
フロッピーディスクは構造的に常に磁気ヘッドと接触した状態で読み書きを行っていいますので、利用には限度がありますが一般使用では無視できるレベルだそうです。