整流作用(電流を一定方向にしか流さない作用)を持つ電子素子です。最初のダイオードは2極真空管で、後に半導体素子である半導体ダイオードが開発されました。その後も研究が進み、近年では非常に様々な種類のダイオードが誕生しました。
1.ダイオードの概要
ダイオードは、電流を一方向にのみ流す電子素子のことです。
pn接合という構造を有した半導体素子で、電圧を印加する向きによって電流が流れたり、流れなかったりする特性を持っています。
これらの特性を利用して、電源回路や・無線機器などの用途に使われています。
・ダイオードの回路記号
一般的なダイオードは2端子で構成されています。それぞれをアノード・カソードと名前が付いています。
順方向には電流は流れますが、その逆方向には電流は流れません。
・ダイオードの向き
写真はリード部品の一例ですが、カソード側に印(線)が入っていますので
ダイオードの向きは分かる様になっています。
2.ダイオードの原理
2-1 pn接合
ダイオードはp型半導体とn型半導体を接合したpn接合という領域を持った半導体素子です。
p型半導体とn型半導体を接合すると、p型領域にある正孔はn型の方へ、n型領域にある電子はp型の方へそれぞれ移動します。
すると、接合部付近で正孔と電子が結合して消滅し、キャリアが無い領域ができます。
これを空乏層といい、キャリアが無いため絶縁体と同じ状態になっています。
キャリアとは
半導体のキャリアとは,動ける状態の電子 (伝導電子)とホール(正孔)のことです。半導体ではキャリアが移動することで電流が流れます。まず、原子は原子核 (陽子と中性子)と電子で構成されています。通常は陽子と電子の数は同じですが、電子が原子から抜けることがあります。この抜けた箇所をホール (正孔)といいます。ホールは電子と違い粒子ではなく、電子が抜けた仮想的な正の粒子です。ホール(正孔)も電子と同様に移動します。ホール(正孔)の近くにある原子の電子が、そのホール(正孔)に移動します。そうすることで新たなホール(正孔)ができます。それが繰り返し起こることでホール(正孔)も移動します。
2-2 順方向電圧の動作
次にp型に電圧源の+側をn型にー側を接続しますと、p型領域に正孔が注入されn型領域には電子が注入されます。
正孔、電子は空乏層側へ移動して結合して消滅しますが、電源からキャリアがどんどん供給されるため、電流が流れ続けます。この電流を順方向電流と呼びます。
2-3 逆方向電圧の動作
今度は逆に、p型に電源の-側を、n型に+側を接続しますと、キャリアはそれぞれ電源端子側に引き寄せられるため電流は流れません。
すなわち、逆方向に電圧を印加した時には電流は流れません。
2-3 電流―電圧特性
順方向電圧と逆方向電圧の応答によりダイオードの電流・電圧特性は特徴的な特性になります。
順方向に電圧を印加した時は電流を流すのですが、電流が流れない領域があります。これは先ほどの説明でありました、電子や正孔が空乏層を乗り越えるのに必要なエネルギーと考えて下さい。このエネルギー(電圧)はダイオードの物質によって変ります。(一般的に、シリコンダイオードでは約0.7V:ゲルマニウムダイオードでは約0.2V)
逆方向電圧を印加した時は、ある電圧で一気に電流が流れる特性があります。この特性(現象)を「降状現象」といいます、この時の電圧を「降状電圧」と言います。
この降状現象の特性を利用したダイオードもあります。
3.ダイオードの種類
3-1 一般整流ダイオード(汎用ダイオード)
・最も一般的な汎用タイプのシリコンダイオード
・逆回復時間が長い
=>数10μs~100μs程度
・順方向電圧が大きい
・耐圧電圧が高い
=>高耐圧の整流に適しています(AC240Vの整流等)
・ブリッジダイオードと呼ばれるダイオードを組み合わせたものがあります。
=>整流用に用いられます。
名前の通りに電流を整える(整流)用途に使用されています。交流電流を直流電流に整流する事を主な使用目的として使用されています。逆回復時間が長い為に、使用される周波数は1kHz程度以下となります。商用電源(50/60Hz)の整流用途で主に使用されています。
逆回復時間:
順方向電圧を印加した状態から逆方向電圧を印加した際に、ON状態(ダイオードのアノードからカソードに電流が流れる状態)からOFF状態(電流が流れなくなる状態)なるまでの時間のことをいいます。
3-2 スイッチングダイオード
・主にスイッチング回路等で使用するダイオードです。
=>周波数が数10kHz以上などに使用されるシリコンダイオードで、小信号をスイッチングするのに使用されます。
・逆回復時間が比較的短い
=>高速でのスイッチングが可能です。
一般整流用ダイオードよりは短いですが、ファストリカバリダイオード
(FRD)やショットキーバリアダイオード(SBD)よりは長いです。
・順方向電圧が大きい
=>一般整流用ダイオードと同等
3-3 ファストリカバリダイオード
・逆回復時間が非常に速い
=>その名前のとおり「ファストリカバリ」なので、逆回復時間がが非常に短い(100μs以下)の特徴を持ったシリコンダイオードです。
・耐圧が高い
・順方向電圧が大きい
高周波のスイッチング回路(数10kHz~数100kHz)などに使われます。主にPFC回路(力率改善回路)やスナバ回路等で使われることが多いです。
『ショットキーバリアダイオード(SBD)』も逆回復時間が非常に短いですが、耐圧が低い(200V程度)という特徴があります。一方、『ファストリカバリダイオード(FRD)』は耐圧が高い(800V程度)という特徴があります。
しかし、『一般整流ダイオード』よりも順方向電圧VFが大きく(2V程度)なっています(最近ではVFを低減したタイプも増えています)。
3-4 ショットキーバリアダイオード(ショットキーダイオード)
今まで説明致しましたダイオードと構造が違います。今まで説明したダイオードはP型半導体とN型半導体を接合したPN接合のダイオードですが、ショットキーバリアダイオードは金属と半導体が接合されており(これをショットキー接合といいます)、電位障壁(ショットキー障壁)を利用したダイオードです。
・逆回復時間が非常に短いダイオード
・耐圧が低く、漏れ電流が大きい
・順方向電圧が小さい
ショットキーバリアダイオード(SBD)は、PN接合のダイオードと比べると、逆回復時間が非常に短く、かつ順方向電圧も小さいという特徴を持っています。そのため、高速なスイッチングが可能となり、かつ高効率が求められる回路に適しています。しかし、逆電流(漏れ電流)が大きく、耐圧が低いというデメリットがあります。そのため、DC/DCコンバータやAC/DCコンバータの電圧が低い2次側での使用が代表的な用途となっています。
3-5 ダイオードブリッジ
・整流ダイオードを4つ組み合わせたダイオードです。
・耐圧が高い
・交流電圧を直流に変換するときに用いることが多い
素子に「+」と「-」が記載されているため、極性は簡単に見分けることができます。交流部分を「~(またはAC)」につないで使用します。
コンセントから供給される交流電圧を直流に変換するときに用いることが多いです。
(*)ダイオードブリッジ
ダイオードとダイオードをつなげた形が「橋(ブリッジ)」のように見えることから、ダイオードブリッジと呼ばれているそうです。
ダイオードブリッジは『整流ダイオード』を4つ組み合わせて自作することも可能です。