FPGA(Field-Programmable Gate Array)の進化について

FPGAは制御装置の高精度化やリアルタイム性向上において重要な役割を果たしています

1.FPGAの基本概要と特徴

1-1 FPGAの構造

① 論理セル(Logic Cells)

・機能:基本的な論理演算(AND・OR・XOR)や組み合わせ回路、簡単はフリップフロップ(記憶機能)を実現します。

・特徴:FPGA内部には数千~数百万の論理セルが格子状に配置されており、それぞれが独立して動作可能です。

・用途:ユーザが定義するカスタムロジックを構成します。

② コンフィギュラブルロジックブロック(CLB: Configurable Logic Block)

・機能:複数の論理セルを統合し、より複雑な機能を実現します。

・特徴:小規模な演算器やシーケンス制御回路として実現が可能です。ユーザがハードウエア記述言語(HDL)でプログラムが可能です。

・例:CPU周辺のタイミング信号のロジック回路の実装など。

③配線網(Interconnect)

・機能:論理セルやCLBを接続して柔軟なデータフローを構築します。

・特徴:配線パターンはプログラムにて任意に変更が可能で設計に自由度があります。

・用途:制御ロジックの使用変更やデータフロー(dataflow)の調整に対応します。

④メモリブロック(BRAM: Block RAM)

・機能:内部データの一時保存や状態保持に使用します。

・特徴:大容量の組み込みRAMを提供し高速アクセスが可能です。

・用途:制御アルゴリズムのパラメータ保存やデータバッファに使用されます。

⑤DSPスライス

・機能:乗算・加算・減算などのデジタル信号処理(DSP)機能を高速に実行します。

・特徴:高性能な演算能力を提供し、制御用途に於いてリアルタイム計算に対応します。

・用途:モータ制御・フィルタリング・FFT(高速フーリエ変換)等。

⑥I/Oピン(Input/Output Pins)

・機能:論理回路入出や外部デバイスとのデータ通信。

・特徴:高速通信が可能で、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)やPCIeなどの通信プロトコルもサポートしています。

・用途:センサーやアクチュエータとのインターフェースなど。

⑦コンフィギュレーションメモリ

・機能:FPGAの動作構成を保存(格納)します。電源投入時に設定内容をロードします。

・特徴:再プログラムが可能で設計変更などに柔軟に対応が可能です。

・用途:製造ラインの変更や、あたしらしい仕様に対応したプロセスへの適応が可能です。

⑧クロックマネージャ(Clock Manager)

・機能:FPGA全体のクロック信号を生成・管理を行います。

・特徴:クロック周波数を調整して、省電力モードや高性能モードを実現できます。

・用途:高精度なタイミング制御用。

1-2 制御装置におけるFPGAのメリット

FPGAは従来のプロセッサーやASIC(Application-Specific Integrated Circuit)にはない特有のメッリトを持ち制御装置に最適な技術です。

①並列処理能力

・内容:FPGA内部では複数の演算ユニットが並列で動作が可能。これによってタスクを並列実行しリアルタイム応答性を向上します。

・メリット:モータの多軸制御を同時に処理が可能となります。高速生産ラインにおいて複数センサーのデータ解析など。

②リアルタイム性

・内容:FPGAの動作はクロックサイクル単位で制御可能ですのでソフトウエア制御のような不確定な遅延発生がありません。

・メリット:応答時間がμ秒(マイクロ秒)単位な為、モーション制御の精度が向上します。振動抑制や負荷変動に対する即時応答が可能となります。

③柔軟性

・内容:FPGAは設計変更に応じて再プログラムが可能です。ASICとは異なりハードウエアの設計後でも機能(内容)の変更が可能です。

・メリット:生産ラインの変更に応じた制御ロジックの更新や、あたらしいプロトコルや規格への対応が可能です。

④高度な信号処理

・内容:FPGA内のDSPスライスにより高度なデジタル信号処理が可能となります。

・メリット:画像処理を伴う形状認識や高精度なフィルタリングやノイズキャンセル。

⑤高いI/Oの柔軟性

・内容:FPGAは多様な通信プロトコルに対応し、複数の外部デバイスと連携が可能です。

・メリット:センサーとアクチュエータ間の高速データ転送やマルチプロトコル対応によりシステム間の相互運用性が向上します。

⑥コスト効率

・内容:少量生産ではASICの様な専用回路を設計するよりもFPGAを使用のするほうが初期コストが低いです。

・メリット:試作段階での敏速な設計変更が可能で、新製品開発における初期投資の抑制になります。

⑦セキュリティ

・内容:FPGAはソフトウエアベースのシステムよりも外部からの侵入が困難になります。

・メリット:制御装置の不正改ざん防止や機密性の高い製造プロセスでの利用が可能です。

2.FPGAを活用した最新技術

2-1 リアルタイム制御

・FPGAはタイミングの厳しい制御タスクに対応可能です。例えばモータ制御ではPWM信号を高精度で生成し、回転数や位置をナノ秒単位で制御が可能です。

・使用例としまして、CNCマシン(コンピュータ数値制御機械)での高精度な起動制御やドローンやロボットの姿勢制御があります。

2-2 産業用通信のサポート

 FPGAは産業用イーサネットプロトコル(EtherCAT、PROFINET、TSNなど)の実装に用いられています。これによってデータ通信の遅延を最小化装置間の同期を正確に実行します。

・使用例としまして、高速生産ラインのセンサーとアクチュエータ間のリアルタイム通信や複数装置間での時間同期などがあります。

2-3 デジタル信号処理(DSP)

 FPGAはフィルタリングやフーリエ変換など高度なデジタル信号処理をリアルタイムで実行することができます。

・使用例としいたしまして、製造ラインでの欠陥検出や形状認識の画像処理。

振動やノイズ抑制をおこなう音響制御などがあります。

2-4 AIアクセラレーション

 最新のFPGAはAI推論のアクセラレーションにも対応しており、制御装置でのリアルタイムAI処理が可能となっています。

・使用例といたしまして、異常検知や予防保全のためのディープラーニングモデルをFPFGで実行などがあります。

2-5 ハイブリッドアプローチ

 FPGAとマイクロプロセッサ(CPU)を統合したSoC(System on Chip)が普及。FPGAのハードウエアアクセラレーション能力と、CPUの汎用性を組み合わせて高性能なシステムの構築が可能になっています。

3.FPGAの進化と新しい機能

3-1 高性能化

 最新のFPGAは次の点で性能が向上しています。

①ファブリックの密度向上:

より多くの論理セルとメモリブロックが搭載され規模の翁設計が可能となります。

②高速I/O:

データ転送速度が向上することで外部デバイスとの通信も高速化が可能となります。

③動作クロックの向上:

最大動作周波数がGHzオーダ達し、高速処理が可能となります。

3-2 低消費電力化

 特にバッテリ駆動の用途やポータブルデバイス向けに低消費電力モードが搭載されています。

3-3 開発ツールの進化

 FPGAの設計は複雑ですがツールの進化により開発効率が大幅に向上しています。

・HDL(Hardware Description Language):VerilogやVHDLによるハードウエア設計。

・HLS(High-Level Synthesis):C/C++やOpenCLを用いてFPGAロジックを自動生成する設計。

4.FPGAの制御装置への応用事例

4-1 産業用ロボット

・多軸制御での同期精度の向上。

・センサー情報をリアルタイムで解析して動作に反映させる。

4-2 半導体制御装置

・リソグラフ工程でのナノレベルの位置決め制御の実現。

・温度や振動の高精度な補正の実現。

(*)リソグラフ工程:半導体デバイスの微細なパターンをウェハ上に転写する工程

4-3 電力機器

・電力変換装置での高効率なスイッチング制御の実現。

・スマートグリッドの制御装置としての利用。

以上です。

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