フォトカプラは、Photo Coupler「光でカップリングする」という意味の英語を語源とした電子素子です。発光素子と受光素子で構成されており、光信号を通して入力側回路と出力側回路を結合しています。この回路間には電気的な繋がりはなく、絶縁した状態となっています。そのため入出力間の回路的接続を分離し、信号のみを伝達しています。入出力で電圧レベルが大きく異なる回路同士を安全に接続することが出来、入出力間を高耐圧で絶縁が可能です。さらにこの光信号を通したり遮断したりすることで、スイッチングの役割を果たすこともできます。
フォトカプラの発光素子LED(発光ダイオード)で構成されています。LEDが発明され、その技術進歩が目覚ましかった1960年代~1970年代にかけて、オプトエレクトロニクスが一つのブームとなりました。その波に乗って色々な光デバイスが発明され、フォトカプラもまたそのうちの一つです。物理的に接触せずに光を介して動作できるオプトエレクトロニクスは今では各種の業界に浸透していきました。
1.概要(原理・仕組み)
1-1原理
フォトカプラの原理は、発光素子が入力された電気信号を光に変換し、受光素子がその光を再び電気信号へと変換して出力側回路に伝えるというものです。この発光素子と受光素子は外界の光を遮断したパッケージ内に、両方を向かい合わせの状態で取り付けられています。発光素子に使われる半導体はLED(発光ダイオード)を使用しています。
一方受光素子に使われる半導体には、いくつかの種類がありますが、使用環境や外形寸法、価格面などで決定されますが、一般的にはフォトトランジスタが最も多く用いられます。
次いで、主にリレーなど大出力で使用するフォトICまたはフォトサイリスタの使用が多いです。フォトトランジスタは、何もしない状態では通常の半導体同様にほとんど電流を流しません。そこで光を入射するとp型半導体とn型半導体が接合している面で光起電力が生じ、n型半導体内の正孔がp領域へ、p型半導体内の自由電子がn領域へと流れ込み、電流が流れる構造となっています。フォトトランジスタはフォトダイオードに比べると応答性は鈍いですが、入力された信号の数百~1000倍の出力に増幅させる効果もあるため(内部電界による)、微弱な信号もキャッチしてくれるという感度の高さが利点としてあります。
なお、同じ原理・仕組みを持つ電子素子にフォトインタラプタというものがあります。フォトインタラプタはセンサとして活用されることが多く、発光素子・受光素子の間に遮光物体を通すことで性能を発揮します。
1-2特性
繰り返し同様の事を言いますが、フォトカプラは光を介して信号伝達を行う構造の為、入力側と出力側の絶縁性が有る事が大きな特徴です。絶縁性が有るという事は、ノイズの影響を受けづらいことに加え隣り合う回路間で予期せぬ電流が流れ込むことを防ぎ、安全面で非常に有効な作用を発揮します。
また、構造自体がシンプルで比較的リーズナブルです。
昔から使われている為、色々なメーカーからラインナップが豊富なこともフォトカプラの特性でありメリットとなります。物理的な接点がないので、パーツ同士の摩耗はほぼ無く、比較的長寿命な部品となります。一方でLEDが経時や温度変化によって劣化し、発光効率が変動するという特性もありますが、機械的接触を持つ有接点に比べれば長寿命と言えます。
また、フォトトランジスタはフォトダイオードなどと比べると速度が遅いことも多く、高速通信などでは用いられません。しかしこれも、出力側に増幅回路等を設けて高速化を行った部品もあります全ての電子回路に高速化が必要なわけではないことから、一概にデメリットな要素とは言えません。
2.フォトカプラの使い方・選び方
フォトカプラを選定する際、なんでも良いとはいきません。
2-1 出力電流と印加する電圧
フォトカプラは信号を増幅させる特性がありますが、適当に電圧・電流を流しても良いわけではありません。定格というものがありますので、必要とする出力電流に応じた電圧を入力側から印加することが必要となります。部品のデータシートを見ますと、縦軸が出力電流(コレクタ電流)、横軸が入力電圧(コレクタ・エミッタ間電圧)になっているグラフを確認することできます。LEDの光の強さに応じてコレクタ電流は変わってくるので、必要な出力電流に応じた電圧を印加するようにします。
しかし、この時算出した出力電流が、意外と小さいと思うことがあるかもしれません。これはLEDの経年劣化を考慮したうえで確実に出力できる電流の数値となるため、最大定格などと比べると小さくなります。逆に出力電流がそう大きく必要なわけではないという場合もあります。そのためにフォトカプラを選定する際には、仕様として「どれくらいの電流を流すのか」を確認し、それに見合った製品(部品)を選定することが必要となります。
2-2 最大オン電流
フォトカプラがオンの時、どれくらいの電流まで耐えられる(流すことができる)かの最大値を示したものが最大オン電流(コレクター電流値)です。
こちらは、どれくらいの出力が必要で、入力する電圧は何Vかをしっかりと確認してから部品を選定する必要があります。部品の許容最大値と使用する時の電流がギリギリではなく、ある程度の余裕を持った選定(設計)を行う必要があります。
2-3 出力回路の使い方
一般的にフォトカプラをパルス伝達やスイッチングに使うと場合、出力側の接続は次の様な図になります。
この二種類は出力信号の論理(極性)が異なりますが、伝達特性はほぼ同じになります。 どちらを選択するかは、主に電源投入時の初期状態として、出力をLow(0V)にするか、Hi(Vccレベル)にするかなどの設計仕様で決めます。一般的にこれらの出力回路では、フォトカプラの出力端子間電圧が既定以上、または負荷抵抗に発生する端子間電圧が既定値未満のときの出力側を「OFF」状態といいます。既定値とは、フォトカプラを使用する回路の設計仕様として、設計者が決定する値です。
3.フォトカプラの誤動作について
フォトカプラは、直流的には完全に絶縁されており比較的にEMIに強いと言われていますが、発光素子と受光素子が絶縁されている為に、部品内に寄生容量(疑似的なコンデンサ)が存在します。 寄生容量はコイルやコンデンサからの残留電荷放出、あるいは高周波による電磁・静電誘導で結合し、帯電・放電することがあります。放電時の電圧はdV/dtで現され、小さなエネルギーでも誤動作を引き起こすスパイク電圧になることがあります。そのスパイク電圧が発光素子(LED)に対し順方向のスパイク電流(下記①)となるか逆方向のスパイク電流(下記②)となるか、またゼロクロス制御(下記③)をしているかなどで誤動作のモードには種類があります。さらに許容を超えた電圧が誘導されると発光素子が破壊されることもあります。
①意図しないON動作:発光素子(LED)に対し順方向すなわち、発光させるスパイク電流が流れると、誤って発光素子が点灯しON動作となります。これは勝手に電源が入るという様な誤動作になります。
②意図しないOFF動作:発光素子(LED)に対し逆方向すなわち、発光を打ち消す方向のスパイク電流が流れると、誤って発光素子消灯しOFF動作となります。これは勝手に電源が落ちるという誤動作になります。
③意図しない出力半減 ゼロクロス制御の場合、半サイクルが出力しない誤動作がおきることがある。これは突然出力が半分になるという誤動作になる