ラインドライバー・レシーバは、デジタル信号を長距離で伝送する際に使用されるデバイスです。一般的に、長いケーブルを介してデータを送受信する際に使用されます。
1.概要
ラインドライバー・レシーバはデジタル信号の送受信に適しており、産業用途や通信機器、コンピュータネットワークなど、様々な分野で広く利用されています。
ラインドライバーは一般的にシリアル通信やネットワーク通信の伝送など、デジタル信号を長距離で伝送する場面で使用されます。特に、RS-485という規格は、ラインドライバーを利用してデバイス間の通信を行うために広く採用されています。RS-485はマルチポイント通信をサポートしており、信号伝送距離が数百メートルから数キロメートルに渡る広範囲なアプリケーションで使用する事が可能です。
2.ラインドライバー・レシーバの特徴
ラインドライバー・レシーバ回路は、デジタル通信において信号の送受信に用いられる重要な回路です。主に長距離通信やノイズの多い環境で信号の伝送を安定させるために使われます。
2-1 ノイズ耐性:
ラインドライバー・レシーバは、信号の送受信において外部からのノイズや干渉に対して強力な耐性を持っています。デジタル信号は1と0の2つの状態を持つため、信号の解釈が比較的容易で、誤り訂正やエラー検出が行いやすいです。そのためにノイズが混入してもデジタル信号を正確に復元することが可能です。
①ディファレンシャル伝送方式:ラインドライバーは、ディファレンシャル伝送方式を使用しています。これは、信号の送信に2本の逆位相の伝送線を使用する方式です。受信側では、逆位相の信号を引き算することで、ノイズに対するCMRRが向上します。ノイズは両方の伝送線に同様に影響を与えるため、受信側では差が取られ、信号に比べてノイズが相殺されることになります。
(*)CMRR(コモンモード除去比・同相信号除去比)
CMRR(Common Mode Rejection Ratio)とは、二つの入力回路をもつ差動増器などにおいて、共通する入力信号(雑音成分 Vn など)を除去できる能力のことを言います。
②バランスド出力:ラインドライバーは、バランスド(平衡)出力を持ちます。バランスド出力は、信号を伝送するために2本の対称な伝送線を使用することを意味します。これにより、ノイズへの耐性が向上します。一方の伝送線がノイズを受けても、もう一方の伝送線にも同じノイズが影響するため、受信側ではこれらのノイズが相殺されることになります。
③高インピーダンス入力:ラインドライバーの入力は一般に高インピーダンスです。これは、ラインドライバーが外部回路に対して低負荷を提供することを意味します。高インピーダンス入力は、外部ノイズの影響を最小限に抑えるのに役立ちます。
④グラウンドループ対策:ラインドライバーはグラウンドループを回避するために設計されています。グラウンドループはノイズの発生源となる可能性があるので、これを避けることでノイズを軽減します。
2-2 長距離通信:
ラインドライバー・レシーバは、デジタル信号を高品質な信号レベルで送受信することができます。この特性により、長い距離でも信号の劣化を最小限に抑えることができます。
①ノイズ対策: ラインドライバーは、伝送路上で発生するノイズや干渉に対して抵抗力があります。長距離通信では信号が途中で減衰し、ノイズが混入する可能性が高くなりますが、ラインドライバーは高い信号品質を保持し、信号のクリアな伝送を可能にします。
②高い電圧への変換: ラインドライバーは、入力信号を増幅して高い電圧レベルに変換する能力を持っています。これにより、信号の減衰を補償し、長距離でも強力な信号を送信できます。
③低い出力インピーダンス: ラインドライバーは低い出力インピーダンスを持ちます。これは、信号が伝送路上の負荷に対して強力に送信されることを意味します。伝送路が長い場合、信号が途中でエネルギーを失いやすいため、低い出力インピーダンスは重要です。
④バランスド出力: ラインドライバーの多くはバランスド出力を持っています。これは、信号を2つの対称な信号(正相と反相)として送信することを意味します。バランスド出力は、ノイズ対策を強化し、信号の抵抗力を高めるのに役立ちます。
⑤大容量伝送: ラインドライバーは高速通信に適しており、高いデータレートをサポートできます。これは、長距離通信で大量のデータを効率的に伝送するために必要な特性です。
2-3 コモンモードノイズ対策:
ラインドライバー・レシーバは、コモンモードノイズ(信号の送受信の両方に同じようなノイズが影響を与えるノイズ)を低減する機能があります。これにより、共通のノイズが信号に与える影響を軽減し、正確なデータ伝送を保証します。
①バランスド出力:
多くのラインドライバーはバランスド(差動)出力を持っています。これは、信号を正および負の2つの信号線に分割して伝送する方法です。受信側ではこれらの2つの信号を差動入力として処理するため、ノイズが共通モードとして影響を及ぼすことが少なくなります。
②コモンモード除去比・同相信号除去比(CMRR):
ラインドライバーは一般的にCMRRが高い設計となっています。CMRRとは、差動信号と共通モード信号の振幅差に対するラインドライバーの感度を示す指標です。高いCMRRを持つラインドライバーは、差動信号を効果的に増幅し、同時に共通モードノイズを抑制します。
③シールド化:
ラインドライバーはノイズ対策として内部の回路やコンポーネントをシールドすることが一般的です。これにより、外部からのノイズや干渉を低減し、信号のクオリティを向上させます。
2-4抵抗負荷に対する安定性
ラインドライバーは、負荷の変動に対して安定性を維持するよう設計されています。外部回路が変化しても、出力信号が一定のレベルを維持することで信号の安定な伝送をサポートする仕様になっています。
2-5 標準規格の使用
ラインドライバー・レシーバは、デジタル通信の標準規格に従って設計されています。これにより、異なる機器やシステム間での互換性が高くなり、デジタル信号の相互接続が容易に可能となります。
2-6 シンプルな回路
ラインドライバー・レシーバは、シンプルな回路構成で実現できます。そのため、製造コストが比較的低く、高い信頼性を持ちながら経済的な利点をもたらします。
3.オープンコレクター(Open Collector)との違い
ラインドライバー・レシーバについては利点・欠点について述べましたが、比較的に良く用いられるオープンコレクターについて述べます。
・オープンコレクター(Open Collector)とは
オープンコレクターは、デジタル回路において出力信号を制御するための回路構成の1つです。オープンコレクター出力は、ハイレベル(H)とローレベル(L)の2つの状態になります。オープンコレクター出力は外部のプルアップ抵抗と組み合わせて使用され、プルアップ抵抗がHレベルを出力し、抵抗を接地(オープンコレクターがONする)することでLレベルを出力します。
・オープンコレクターの利点:
①複数の出力をまとめて使用可能:
オープンコレクター出力は、複数の回路をまとめて制御するのに適しています。複数のデバイスを接続し、1つの信号で制御することができます。
②電圧レベルの違いを吸収:
オープンコレクター出力はプルアップ抵抗によって電圧を設定できるため、異なる電圧レベルの回路との間で適切なレベルを調整できます。
・オープンコレクターの欠点:
①プルアップ抵抗が必要:
回路構成上プルアップ抵抗により、信号の安定化が確保されます。
回路(プルアップ抵抗)の追加が必要となります。
②出力のスピード制約:
オープンコレクター回路は、高速なスイッチング動作には適していません。高速なデジタル信号処理が必要な場合は、他の回路構成を検討する必要があります。