回生ブレーキ(回生エネルギー) とは

回生とは「生き返る」という意味になりますので、本来は熱などになって捨てられていたエネルギーを電気エネルギーなどで利用する=「生き返らせる」ことです。 

1.回生ブレーキ(回生エネルギー)の概略 

 通常時は電動機(モーター)として電源入力を変換して駆動回転力を出力としているのに対して、それとは逆に軸回転を入力に発電機として動作させて運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収または消費することで制動として利用する電気ブレーキの一手法で、発電時の回転抵抗を制動力として利用するもので、電力回生ブレーキ、回生制動とも呼ばれております。電動機を動力とするエレベーター、鉄道車両、自動車などで広く用いられています。 

図1 回生ブレーキのイメージ 

エンジン車に使われているブレーキ(摩擦ブレーキ)は油圧式の「摩擦ブレーキ」を採用しています。タイヤと一緒に回転するディスクローターや円筒状のドラムにブレーキパッドを押しつけることで摩擦熱を発生させてタイヤが回転する運動エネルギーを熱エネルギーに変換しています。この熱エネルギーは大気に放出され、それによって車が減速する仕組みです。つまり、摩擦ブレーキは、加速するために使ったエネルギーを熱にして捨てることで車を減速させているわけです。 

2.回生ブレーキの仕組み (回生ブレーキはエネルギーを捨てずに再利用します) 

エンジン車と違ってモーターで走るEV車は、減速時にもモーターを使用します。モーターはアクセルを踏むと駆動力を発生しますが、アクセルを離して減速する時はその逆の力が働いて発電機に変身します。この発電に使用する力がタイヤの回転の抵抗になって減速するのが回生ブレーキの仕組みです。 

少し古い自転車の前輪のタイヤに付いているライトの発電機をイメージすると分りやすいと思います。夜間走行で自転車でライトを点灯させると発電機の抵抗で自転車を漕ぐことが重くなって速度が落ちることがあるかと思います。これは運動エネルギーを電気エネルギーに変換している為です。 

回生ブレーキのキーポイントは、通常の摩擦ブレーキの様に熱にしてエネルギーを捨てるのではなく、運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーに回収し走行のエネルギーに活用することです。 

エネルギーを無駄にせずに有効活用を行っている事は、回生ブレーキはEV車などの電動車では非常に有効なシステムです。(バッテリーに返すことで走行距離も伸びます。) 

*少し余談です: 

「エネルギーとは何でしょうか??」 

運動エネルギーを熱エネルギーや電気エネルギーに変換すると言っても、いまいち理解出来ないかと思います。 

そもそもエネルギーは消えたり無(何もない状態)から発生したりすることはありません。エネルギーはその姿(形)を変化しますが、その全体量は変化する事はありません。これを【エネルギー保存の法則】といいます。 

例えば車が動く(走る)時の燃料(ガソリン)や電気のエネルギーを運動エネルギーに変化させているのです。車が減速・停止する時にはこの運動エネルギーを何らかの他のエネルギーに変換して車の速度を減速させます。 

 摩擦ブレーキではこの運動エネルギーを熱エネルギーに変換していますが熱エネルギーは貯める事は難しいので捨てています。電気エネルギーはバッテリーに蓄える(充電)事が出来るので、回収(蓄えて)再利用が可能です。 

3.回生ブレーキのメリット 

回生ブレーキは「エネルギーを無駄にすることなく、有効に利用をする」というものです。 

3-1 燃費ならぬ電費が良くなって、走行距離が伸びる 

エンジン車では減速の時熱として捨てていたエネルギーを電気エネルギーに変換して回収しそのエネルギーを再利用しているので、EV車などでは電費の向上になる事が可能となります。 

回生ブレーキで電費がどれくらい向上するかは、モーターの種類等によって変わります。また、発電した電気を直流電流に変換したり、バッテリーに取り込んだりする時には、厳密にはロス“抵抗による熱”としてエネルギー(電気)は少し失われます。 

それでも、ローター(回転子)に永久磁石を使用する「永久磁石型同期モーター」を利用しているEV車の場合、回生ブレーキで運動エネルギーのおよそ60%程度を回収できると言われていますので、エネルギーを回収でき電費が向上できるのは大きなメリットではないでしょうか。 

電費が向上すれば、当然ながら航続距離も伸びます。このことを強く実感できるのが、回生ブレーキを働かせて山などで長い坂道などを下っているときではないでしょうか。 

坂の上にいるとき、車には「位置エネルギー」が貯まっている状態です。坂道を下って速度が上がるのは、位置エネルギーを運動エネルギーに変換していますので。回生ブレーキはその運動エネルギーを電気に換えてバッテリーに貯めています。 

EV車で、長い坂道を下りているときにメーターに表示されるバッテリー残量が増える=航続距離が伸びていることをリアルに確認できるのではないでしょうか。 

3-2 ブレーキパットの減りが軽減されて寿命が延びる 

エンジン車ではブレーキを踏む事でマスターシリンダーからの油圧がブレーキパッドに加わり、ブレーキパッドがディスクローターに押しつけられる事で、このときに発生する摩擦が、タイヤの回転力を押さえ込みます。 

しかし、EV車ではブレーキパッドによる摩擦ではなく、タイヤが回転する運動エネルギーを電気エネルギーに変換するときに起こる抵抗によって減速します。その間ブレーキパッドはほとんど消耗しないため、その分メンテナンス費用が安くなるわけです。 

ただし、回生ブレーキの減速力だけに頼らず、摩擦ブレーキを併用することも必要となります。ですが、ブレーキパッドが作動するような急減速の機会は少なくなり、エンジン車に比べてブレーキパッドの寿命が長くなります。 
 

3-3 エネルギーに対する意識 

エネルギーを有効に効率的に使う回生ブレーキは、環境性能の高いEV車などならではの制動システムです。加えて、EV車に乗っているとそれだけで「エネルギー意識が高まる」というメリットがあります(その人によるかもしれませんが・・・)。 

具体的には、EV車に乗ると車を走らせるためにどれだけ多くのエネルギーを使っているかがよくわかるそうです。それを最も実感するのが上り坂ではみるみるうちに電気が減っていくのに、先ほどのように回生ブレーキを使って長い坂道を下ると、逆に充電されていくので実感できると言われます。これはエンジン車では味わえない感覚だそうです。EV車の運転時だけでなく、ご自宅のエネルギーなどにも興味・関心を抱き、省エネや環境に意識を持つ方が増えるそうです。 

3-4 回生ブレーキのデメリット 

回生ブレーキについて色々と述べてきましたが、デメリットについてまとめました。 

・ブレーキの利き方の違和感 

特にEV車の場合ですと、ガソリン車から乗り換えたばかりの時はモーターの抵抗によるブレーキがかかるので、違和感があるそうです。これは慣れるしか無い様ですので慣れるまでは安全運転に留意ください。 

・バッテリーが満タン(満充電)時は作動しない 

回生ブレーキは発電時に作動しますので、その発電電力が充電できない状態=バッテリーが満タン(満充電)の時には作動しません。 

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