電子部品【水晶振動子・水晶振動器】とは 

水晶振動子(すいしょうしんどうし、英語表記: quartz crystal unit または crystal unit)は、水晶(石英)の圧電効果を利用して高い周波数精度の発振を起こす際に用いられる受動素子の一つです。 

Xtalと略記されることもあります。クォーツ時計、無線通信、コンピュータなど、現代のエレクトロニクスには欠かせない部品となっています。水晶発振子と呼ばれることもあります。 

1.水晶振動子の概要(原理) 

圧電体である水晶の結晶に電圧を加える(電界を印加する)と、圧電体に変形が生ずる。この現象はフランスの物理学者により発見されました。電気的特性としては、通常はコンデンサとして作用しますが、その固有振動数に近いある特定の周波数帯でのみコイルのように誘導性リアクタンスをもつものとして動作します。この原理を応用した電子部品が水晶振動子です。一般的な水晶振動子であるAT振動子は圧電体である水晶片(水晶ブランク)を2枚の電極で挟んだ水晶振動体を保持器に収めた構造となっています。水晶振動子は自由振動を起こすため、波形は正弦波となります。 

発振回路においては、コイルやコンデンサの接続の組み合わせにより発振の条件が決まる回路があります(ハートレー発振回路、コルピッツ発振回路など)。これらの回路のうち、コイルが発振の条件として必要な回路部品に水晶振動子を使用すると、水晶振動子の固有振動数の発振出力を得る事ができます。その周波数は10の6乗のオーダーの精度が容易に得られ、他の部品に比べて非常にずば抜けた性能であることから、周波数や時間の基準として広く使用されています。 

(*)ハートレー発振回路・コルピッツ発振回路: 

LC発振回路の一種です。 

(*)他の部品: 

CR発振回路・LC発振回路・マルチバイブレータなどです。 

結晶の大きさの関係から、実際に用いられている水晶振動子の周波数は1~20MHz程度のものが多いです。それ以上の周波数が必要なときは、オーバートーン発振させるか(あるいは高い周波数用の水晶振動子は、オーバートーンで使用する前提のものもあります)、周波数逓倍器を使用します。 

(*)オーバートーン発振: 

水晶発振子の基本波の奇数倍(3倍波、5倍波)で発振させる方法です。 

(*)周波数逓倍器: 

ある周波数を元にその整数倍の周波数の信号を発生させる回路のことで、高周波回路の設計では、必要な周波数を生成するために用いられることがあります。 

2.水晶発振子と水晶発振器の違い 

水晶振動子は、前節での説明の通りで圧電現象をもった水晶振動片を専門容器に組み込んだものです。よって安定した発振を得るためには水晶発振子と発振回路のマッチングが欠かせません。 

そこで水晶振動子に、それを振動させるための発振回路を組み合わせ、1つのパッケージに収めたものが水晶発振器です。 発振回路は、使用する水晶振動子に適している必要があります。水晶振動子と発振回路がマッチしていないと特定(希望する)の周波数が得られなかったり、発振が止まったりします。その点水晶発振器は適したマッチング状態で発振回路が組み込まれているため、回路設計者がご自身でマッチング評価を行う必要はなく、手軽に安定した発振周波数を得ることが出来ます。 各メーカ様の水晶発振器を使用する事で各社が開発等されたIC(回路)と水晶を組み合わせているため、お互いの特長を捉えた最適なマッチングにより、周波数安定性の高い発振を得る事ができます。 

言い換えますと、その水晶発振器に定格電圧を印加するだけで仕様通りの発振波を得る事が出来ます。 

3.水晶のカット(切り出し)の種類 

3-1 ATカット(もしくは、R1カット) 

現在広く製造されている切削角度です、水晶原石からATカットと呼ばれる切断角度(X軸に平行でZ軸から35°15‘の角度)で作り出された水晶振動片を内蔵した水晶振動子の事です。周波数温度特性がよく、発振が安定していることが特徴です。 

3-2 SCカット(stress compensated-cut) 

 ATカットで問題となっていた急激な温度変化によって引き起こされる周波数変動(熱衝撃特性)防止目的で製造されました。 

3-3 BTカット 

 Z軸にー49°で切り出した素子で。ATカットに比べ温度特性精度が劣るため,現在ではあまり使用されていません。 

3-4 カットの厚み 

厚みが周波数を決定する重要な要素でとなります、厚みが1mmのときの発振周波数は1.67MHzとなります。この値を周波数定数と呼んでおり、発振周波数f【MHz】は次の式で表します。 

3-4 カットの厚み 

厚みが周波数を決定する重要な要素でとなります、厚みが1mmのときの発振周波数は1.67MHzとなります。この値を周波数定数と呼んでおり、発振周波数f【MHz】は次の式で表します。 

 

この式から、発振周波数は厚みに反比例する事がお分かりかと思います。 

 例えば、 

発振周波数が20MHzの基本波(n=1)であれば厚みは約83μm 

発振周波数が50MHzの基本波(n=1)であれば厚みは約33μm 

となります。 

4.水晶振動子の発振回路とのマッチングについて 

水晶振動子の発振回路のマッチングは、安定した振動子動作を確保し信号の適切な伝送を実現するために非常に重要な事です。水晶振動子は、特定の周波数で共振する性質を持っておりますので、この特性によって正確なタイミング信号を生成します。マッチングの必要性について以下に詳しく説明します。 

4-1 周波数の一致: 

水晶振動子は特定の周波数で最も効果的に動作します。回路内の他の部品との周波数の一致が必要です。これにより、安定した振動が維持され、正確なタイミング信号が生成されます。 

4-2 インピーダンスマッチング: 

水晶振動子の周りの回路において、インピーダンスマッチングが必要です。これは、信号伝送の効率を高め、信号の反射を最小限に抑えるために行われます。適切なインピーダンスマッチングがないと、信号のロスや波形の歪みが生じる可能性があります。 

4-3 信号の安定性: 

マッチングは、水晶振動子からの信号が回路内で安定して伝送されることを確保します。これは、信号の位相や振幅の安定性に影響を与えます。信号が不安定であると、周波数の変動やクロックの不正確さが発生し、システムの動作に影響を与える可能性があります。 

4-4 ノイズの最小化: 

マッチングが適切に行われると周囲の回路との適切な結合状態となり、ノイズの影響を最小限に抑えることができます。これは、水晶振動子が安定して動作するために重要な事です。 

4-5 温度変動への対応: 

水晶振動子の周波数は温度によって変動するため、温度変動に対するマッチングも考慮されます。適切な回路設計とマッチングは、温度変動に対してロバストな動作を実現します。 

(*)ロバスト 

ロバストとは頑強・堅牢・頑強性・強靭性という意味の英単語(robust)です、様々な分野で使用されている単語かと思いますが、我々の様にものづくり(製造業)分野においてのロバスト(robust)には、単なる強い(strong)という表現には含まれない「しなやかさ、ばらつきの少なさ」という意味も含まれています。安定した性能を維持できるということです。 

4-6 パワーの最適化: 

マッチングによって回路の効率が向上し、不必要なエネルギーの損失を防ぎます。これは、電力効率の向上とバッテリ駆動デバイスにおいて電力の最適化に寄与する事になります。 

総じて水晶振動子回路のマッチングは、信号の安定性・周波数の一致・ノイズの最小化・および温度変動への対応を確保するために欠かせないプロセスです。これにより、システムの信頼性や性能が向上し、正確なタイミング(発振動作)が確保できます。 

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