電子部品【トランス(変圧器)】 とは

交流電力の電圧の高さを電磁誘導利用して変換する電力機器・電子部品のことです。トランスや変圧器と呼んでいます。 

1.トランス(変圧器)の役目について 

例えば、発電所で作られた電気は、電線を通して各家庭やビル等に届けられます。しかし、発電所で作られた電気は高い電圧(高電圧)であるため、そのまま家庭やビル等で使用することはできません。 

そこで、使用されるのが「トランス」です。電気をたくさん使うビルや工場には6600V以上の高い電圧(=高圧)、一般家庭には100Vの低い電圧(=低圧)といったように、各々の施設の負荷状況に合わせて、トランスで電圧を変えることで、安全に電気を使用することができるようになります。 

しかしトランス(変圧器)で電圧を変えるくらいなら、最初から各施設で使える電圧で供給すればいいのではないかと思われますね。 

これには、作った電気を出来るだけ無駄にしないための理由が隠されているのです。 

発電所で作った電気を送る送電線には「抵抗」があります。 

抵抗があると、電気の一部が熱となって空中に逃げてしまい、発電した電気に損失(ロス)が発生してしまいます。(送電損失と言います) 

この「送電損失」を少なくするためには、ある工夫をしなければなりません。 

少し専門的な話になりますが、「送電損失は電流の2乗に比例する」という法則があります。 

そのため、電流はできる限り低く抑える必要があります。 

その為に高圧で送電して電流を低く抑えることで、送電損失を最小限にしているのです。 

<具体的な例で説明しましょう> 

送電する電力は 

 電圧(V) x 電流(Ⅰ)  

で求められます。 

 10000(W)(W:ワットといい電力の大きさです。) 

 の電力を送電するとします。 

  1. 電圧が100(V)の場合 

 100V x 100A = 10000W  となります 

  1. 電圧が1000(V)の場合 

 1000V x 10A = 10000W  となります 

 電圧が大きい程電流は少なくなる事がお分かりでしょうか。 

 先ほど述べました様に「送電損失は電流の2乗に比例する」ので 

 送電損失は電流が10分の1になりますので10の2乗=100分の1になります。 

このように、電気を無駄にせず各施設に届けるため、施設ごとに調整できる「トランス」が必要不可欠になります。 

ちなみに、トランス変圧器は電圧の高さによって「超高圧変圧器(11万V以上)」「特高変圧器(2万V~11万V)」「高圧変圧器(6,600V~2万V)」に分類されます。

2.トランス(変圧器)の構造・種類について

電気を使うためには必要なトランス(変圧器)ですが、その構造はシンプルです。鉄心(コア)に1次コイルと2次コイルを巻いた構造です、鉄心とコイルの位置関係にとって呼び名が「内鉄形」と「外鉄形」になります。 

2-2 トランス(変圧器)の冷却方式 

トランス(変圧器)には鉄心とコイル以外にも、意図しない場所への電流の侵入(漏洩)を防ぐための絶縁と、変圧器内での電力損失によって生じる熱を冷やすための冷却装置などが備え付けられるものもあります。 

トランス(変圧器)を冷却する場合の方式は大きく2種類に分類されます。 

・油に浸して冷却する方式(油入式) 

 トランス(変圧器)を絶縁油に浸して油の循環を利用して熱を放熱する方式です。 

・空気やガスで冷却する方式(乾式) 

 空気:自然の空気の対流を利用方式です。 

 ガス:不活性ガスを充填する方式です、不燃性・非爆発性の特徴があります。 

2-3 トランス(変圧器)の配線方式 

配線方式によっても「単相」と「三相」に種類が分かれます。 

単相は電灯負荷と言い、一般家庭やオフィスで使用される100Vの電源のこと。 

三相は動力と言い、たくさんの電力を一度に送ることができる200Vの電源のことで、工場や商店などでよく使用されます。 

3.トランス(変圧器)の原理について 

トランスは、発電所や変電所で使われるものから、電子回路用の小さなものまで種類はさまざまですが、原理は共通して同じです。 

トランス(変圧器)の基本的な原理をあらわした図です。 

トランス(変圧器)には、共通の鉄心に1次側コイル(N1)と2次側コイル(N2)を巻き付けた構造となっています。 

片側のコイル、1次側コイルに電圧(V1)を印加すると、コイルの中を通っている鉄心に磁束が発生します。 

この電圧が直流であれば鉄心は単純な電磁石になりますが、交流の場合は磁束の向きがその周波数に合わせて交互に入れ替わりますので、入力側の1次コイルに交流電圧を加えると交流電流が流れ、1次コイルに磁束が発生します。磁束は鉄心を通って2次コイルを貫きます(電気磁気では「鎖交」といいます)。 

コイルには電磁誘導作用(ファラデーの電磁誘導の法則)という、鎖交する磁束が変化すると電圧が発生する性質があります。「ファラデーの電磁誘導の法則」とは、電磁誘導において、1つの回路に生じる誘導起電力の大きさはその回路を貫く磁界の変化の割合に比例するという法則です。 

また、片方のコイルに電流を流した場合、そのコイルから発生する磁場により、近くのコイルに誘導起電力が発生する現象のことを「相互誘導」と呼びます。 

これにより2次コイル(N2)に電圧が誘導されて、再び交流電流に変換し出力されるという原理となります。 

すなわち、トランスは電磁誘導の法則と相互誘導の法則を利用し、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換し、再度電気エネルギーに変換する電子部品です。 

・1次コイルと2次コイルの関係について 

図の様に 

・1次コイルの巻き数をN1、そのコイルに印加する電圧をV1とします 

・2次コイルの巻き数をN2、そのコイルに発生する電圧をV2とします 

と、1次コイル(N1)と2次コイル(N2)の関係は 

V1/V2 = N1/N2  

となります。 

・1次コイルと2次コイルの巻き数の比率=1次電圧と2次電圧の比率 

となります。 

【例題】 

・1次コイルの巻き数N1=2000回 

1次電圧V1=500Vの場合 

・2次コイルの巻き数N2=400回 

にしますと2次電圧V2は100Vの電圧が発生します。 

V1/V2=500V/100V=N1/N2=2000回/400回 

の関係式が成り立ちますね。 

この原理により、トランスで電圧を自由に変更することができるのです。 

また、エネルギーは入力側と出力側で変わらないので 

[入力電圧×入力電流=出力電圧×出力電流] 

という式が成り立ちます。すなわち、入力電圧より出力電圧を大きくすると、出力電流は小さくなるということです。 

4.トランス(変圧器)の用途について(まとめ) 

4-1 電圧の変換 

(この説明は前項ですでに説明済みですので、詳細は省略させて頂きます。) 

トランス(変圧器)の名前の通りの様に電圧の変換(主に降圧の使用が多い様です)の目的に使用されています。 

4-2 回路間の絶縁 

1次側と2次側を単巻トランス(オートトランス)ではなく、複巻トランス構造にすることで絶縁状態できます。 

(*)単巻(オートトランス): 

1次巻線と2次巻線が同じ巻線共有した構造となっています。同じ巻線を共有することで巻線の量が少なくなるため、小型・軽量という特徴を持ちますが、電気的な絶縁機能はありません。 

4-3 ノイズカット 

1次側コイルと2次側コイルが絶縁されている特性を応用して、ノイズの混入を遮断する目的で使われるのが「ノイズカットトランス」です。 

インバータやモーターは常にノイズを発生させています。このノイズカットトランスを使うことで、電気・電子機器へ影響を及ぼすのを防ぐことができます。 

他にも、スイッチング電源に用いられる「スイッチングトランス」、オーディオ機器に用いられる「オーディオトランス」、伝送機器に用いられる「伝送用トランス」など、使い方によって様々な呼び名のトランスがありますが基本の構造・構成は同じです。 

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