IP規格とは 

IP(英語表記:Ingress Protection)とは、IEC規格で規定されている筐体(キャビネット)の塵等の固形物及び水に対する保護構造の等級を記号で表記したものです。 

1.IP規格の概要

IP規格とは、電子機器の防塵・防水性能を表す国際的な規格です。IPはIngress Protection(侵入に対する保護)のことで、機器内部への塵や水の侵入にどれだけ耐えうるかを表しています。 

IEC(国際電気標準会議)が定めたIP規格は世界各国で利用されており、日本のJIS(日本工業規格)も準拠している国際的な規格です。カメラやスマートフォンなど身近なものから、産業用ロボットや監視カメラなど専門的なものまで幅広い機器などに適用されています。 

日本産業規格(JIS0920)からIPコードの説明を抜粋しますと、「外郭による、危険な箇所の接近するひとへの保護、外来固形物の侵入にたいする電気機器の保護、水の浸入に対する電機機器の保護。 保護等級およびそれらの付加的事項などをコード化して表す規格(システム)。」と記載されています。 

(*)外郭 

外郭とはある種の外部からの影響に対して、内部の電気機器を保護する部分であり、また、あらゆる方向からの直接接触(人または家畜の充電部への接触)に対して保護するために設けられた部分」と記載されています。 

1-1 IP規格の見方(読み方) 

IP規格は2桁の数字で表され、1つ目の数字が防塵性能、2つ目の数字が防水性能を表します。例えば、IP67の場合、6が防塵性能、7が防水性能を表す数字です。基本的には数字が大きいほど保護性能が高く、防塵性能は0~6の7段階、防水性能は0~8の9段階に分かれています。 

防塵・防水いずれかの保護性能だけを表す場合は、もう一方を「X」にすることで表示が可能です。例えば以下のようなパターンがあります。 

IP67:防塵性能は6、防水性能は7 

IP6X:防塵性能は6、防水性能はなし 

IPX7:防塵性能はなし、防水性能は7 

電子機器メーカーにとっては防塵性能・防水性能どちらかだけをアピールしたい場合にも使えるため、幅広く利用されている方法です。 

1-2 IP規格の防塵性能の分類 

IP規格の防塵性能を表す7つの等級は次のとおりに分かれています。 

【IP規格】保護レベル 

【IP0X】防塵性能なし 

【IP1X】人の手など、直径50mm以上の固形物が内部に侵入しない 

【IP2X】人の指など、直径12.5mm以上の固形物が内部に侵入しない 

【IP3X】工具の先端など、直径2.5mm以上の固形物が内部に侵入しない 

【IP4X】ワイヤーなど、直径1.0mm以上の固形物が内部に侵入しない 

【IP5X】機器の動作に支障をきたしたり安全を損なったりするほどの粉塵が侵入しない 

【IP6X】粉塵の侵入を完全に防止する 

防塵性能は0~6の7段階に分かれており、数値が高いほど耐性は高くなっています。IP4Xまでは具体的な固形物のサイズによって防塵性能が分類されていますが、IP5X以降は粉塵の侵入レベルによる規格となっています。 

防塵性能が高くなるにつれて、機器内部の気密性をより高く保つことが必要となります。そのため、製品価格も高くなる傾向となります。 

・【注意】IP6Xなら塵は一切侵入しない? 

IP6Xは粉塵の侵入を完全に防止すると定義されているため、どのような塵の侵入からも保護されていると考えがちです。しかし、IP6Xでも常に完全な防塵が成り立つとは限りません。 

例えば、外部機器との接続部分などに粉塵が舞い込めば、故障を起こす可能性は十分あります。スマートフォンでいえば、イヤホンジャックや充電器の差し込み口、スピーカー部分などが該当します。 IP6Xの電子機器だとしても、必要なとき以外はフタやカバーを閉じておくこと、粉塵の舞う場所で使用しないことなどが安全な利用のためには不可欠となります。取扱説明書には必ず目を通し、メーカーが推奨する環境でのみ使用するようにしましょう。 

1-3 IP規格における防水性能の分類 

IP規格の防水性能を表す7つの等級は次のとおりに分かれています。 

【IP規格】保護レベル 

【IPX0】防水性能なし 

【IPX1】垂直に落ちてくる水滴によって有害な影響が起こらない 

【IPX2】垂直から15度以内の傾きから落ちてくる水滴によって有害な影響が起こらない 

【IPX3】垂直から60度以内の傾きから落ちてくる水滴によって有害な影響が起こらない 

【IPX4】いかなる方向からの飛沫であっても有害な影響を受けない 

【IPX5】いかなる方向からの噴流水であっても有害な影響を受けない 

【IPX6】いかなる方向からの強い噴流水であっても有害な影響を受けない 

【IPX7】一定の時間・水圧のもとで水中に没しても内部に水が侵入しない 

【IPX8】IPX7より厳しい条件のもとで水中に没しても内部に水が侵入しない 

防水性能は0~8の9段階に分かれており、防塵性能と同様に数値が高いほど保護性能も高いです。 

分類の基準については、IPX1~IPX3までは水が落ちてくる角度、IPX4~IPX6までは水圧の強さ、IPX7~IPX8は水没時の防水性能によって定められています。ただし、IPX8は明確な試験方法が規定されていません。メーカー側の独自基準によって設定されているので、IPX8の性能にはバラつきがあることを理解しておく方が無難ですね。 

【注意】IPX8は完全防水か? 

防水性能が最高レベルのIPX8でも、完全な防水とはいえません。防水性能を前提として使用するのではなく、「万一手を滑らせて水に濡れてしまっても、故障する可能性が低い」くらいに理解しておくべきですね。 

まず、防水試験は常温の真水で実施されますので、海水などの塩分や化学物質を含む水に対する保護性能を保証するものではありません。身近な存在では海水やアルコールなどに濡れた場合、同じ保護性能を発揮できるかどうかは不明となりますので使用の際は十分注意しましょう。 

また、水蒸気にさらされる場合も故障のリスクがあります。IP規格の防水性能は、湿度に対する保護を兼ねていません。身近な存在ではサウナや浴室の中など水蒸気が発生しやすい場所(環境)で使用した場合は内部で結露が発生し故障の原因となる事があります。 

さらに、IPX0~IPX6までとIPX7以降では試験の種類が異なるため、IPX7以上だからといってIPX6以下の保護性能を備えているわけではない点にも注意が必要です。そのため、噴流水に対する防水性能と水没に対する防水性能を備えている場合は「IPX5/IPX7」のように併記されることがあります。 

2. 【IP規格別】具体的な防塵・防水性能の違い 

最近の電子機器は防塵・防水性能が高く、IP65~IP68の性能についてそれぞれを具体的に説明致します。 

※IP65・66・67・68の防塵性能 

IP65・66・67・68の防塵性能については、すべてIP6Xにあたるため違いはありません。 

【IP規格】 【防塵性能】 

IP65・66・ 最高レベルの6であるため、接続端子など保護が必要な部分を除き、粉塵が 

67・68共通  機器内部に侵入することはありません 

※IP65・66・67・68の防水性能 

【IP規格】防水性能 

【IP65】一定レベルの噴流水には耐えられるが、水圧が強くなると浸水する可能性があるほか、水没への耐性は保証されていません。 

【IP66】強い噴流水に耐えられるが、水没への耐性は保証されていません 

【IP67】一定の水圧・時間において水没しても浸水しないが、噴流水への耐性は保証されていない。 

【IP68】IP67よりも強い水圧・長い時間の水没に耐えられるが、厳密には基準はメーカーによって異なるなど、噴流水への耐性は保証されていません。 

IP65なら、一般家庭のシャワー程度であれば耐える事ができるレベルですが、台風などの強風雨下での使用は故障する可能が高くなるでしょう。 

【最後に】 

屋外で使用する電子機器をご使用・ご購入される際には、想定される使用環境に対応したIPレベルの製品を選定される事が大切です。ただし、等級が最高レベルだからといって完全な防塵・防水が成り立つわけではない事には注意が必要です。メーカーの取扱説明書などをよく読み、推奨されている環境下で使用をするようにしましょう。 

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