ブラシレスドライバ活用について

1.ブラシレスモータとは 

モータとは、電気的なエネルギを機械的な運動エネルギに変換する装置でモータを分類した一種類にブラシレスモータがあります。 

モータの歴史は、19世紀初の電磁現象の発見のころからです。現在までには、直流(DC)モータ、誘導(インダクション)モータ、同期モータと数々のモータが登場してきました。 
 
ブラシレスモータは、永久磁石型同期(Permanent Magnet Synchronous Motor : PMSM)モータとして長年の歴史がありますが、当初は始動が難しく速度可変も難しいため高価な制御機構を使った産業用途以外普及しませんでした。近年では、強力な永久磁石が開発されたこと、半導体素子を用いたインバーターによるモータ制御が容易に出来るようになり、省エネ意識の高まりや商品性の向上により、幅広い分野で近年多く使用されています。 

2.特徴 

ブラシレスモータとはブラシと呼ばれる整流子が無いモータのことですので、誘導電動機・同期電動機・ステピングモータも含まれますが、直流モータでブラシ(整流子)のないモータのことを言います。 
ブラシレスモータの一番の特徴は機械的な接触部分が無いブラシレスです。 
直流(DC)モータ(ブラシ付きモータ)と比べると 

  • 指令信号とフィードバック信号を常に比較しているので、低速域から高速域まで安定した速度精度 が可能 
  • 効率がよい 
  • 寿命が長い 
  • 音が静か(発生するノイズが少ない) 
  • 価格は直流(DC)モータ(ブラシ付きモータ)と比べ位置センサー(ホールIC)などの部品が増えるためコストUPとなる 
  • 特性はDCモータなので同等 

一番の特徴はフィードバック信号により制御を行っていることです。フィードバック制御を行うことで、モータの回転速度が安定します。 また位置の制御を行うことで位置決め制御も可能となります。 
このように、制御回路としては直流(DC)モータ(ブラシ付きモータ)の制御に比べ複雑になりますが利点も多くなり色々な分野や用途で使われています。 

3.構造 

ブラシレスモータは、特徴をDCモータに寄せたモータで,図1の比較からも分かるように整流子とブラシが無くなりました。そして代わりに、電子回路を使用して電流の方向を切り替えてモータ制御して回転させています。整流子とブラシがあると、モータ回転時にはお互いが直接接触するため摩耗が発生してメンテナンスが必要でしたが、それが無くなったことでブラシレスモータは、デメリットであった摩耗によるメンテナンスが不要なモータです。 

位置センサーからの信号に応じて、軸の位置を検出してコイルに流す電流を制御するのに使用します。 

4.ブラシ付きモータとの違い 

モータを回転させるのは磁気の力(磁力)を使っています。 

ブラシ付きモータでは固定子(磁石)が固定されていてこれと一方で反発・他方で吸引するように磁力が働くように ブラシ→整流子と電流が流れ回転します。 回転することで整流子から巻線に流れる電流が順番に変化し回転を継続します。 

ブラシレスモータでは逆で回転するロータに磁石がついていて、固定子は巻線ですこの巻線にドライバーが電流を制御してモータを回転させています。 

ブラシ付きモータはブラシと整流子の接触を通して巻線の電流を制御していますのでモータ線に電流を流すだけでモータは回転しますのでただ回転させるだけであればドライバーは不要で容易に使用知ることが出来ます。 

ブラシレスモータは巻線電流を流すタイミングをドライバーが制御するので専用のドライバーが必要となります。 

ブラシ付モータはブラシという物理的な接触部分があるのが大きな特徴であり違いです。 

ブラシは使用していると擦り減って来ますので、定期的に交換が必要でその擦り減ったカスの清掃も必要です。これに対してブラシレスモータはこのような接触部分がないので、交換・メンテナンスフリーです。特に半導体の生産ラインなどクリーンルームでは一番の大敵の埃が出ないモータは大きな特徴と言えるでしょう。 

5.使用用途 

小型で高出力、低振動で低騒音、寿命が長いといった特徴を備えたブラシレスモータは、空調機器(エアコン、空気清浄機など)、住宅設備、冷蔵庫、給湯器、自動販売機、複写機、プリンター、プロジェクター、商用機器、計測器、自動車、医療機器などの分野で、多種多様な用途で使われています。 

  • 空調機器
  • 扇風機 
  • 掃除機
  • 住宅設備 
  • 給湯器、バーナーユニット
  • 自動販売機
  • 冷凍・冷蔵ショーケース
  • 金融端末(ATM)、釣銭機、両替機、券売機
  • クリーンルーム
  • 光学製品
  • プリンター
  • 複写機 
  • 健康機器
  • 商用機器
  • 検査・分析装置

など・など多くの分野で使われています。 

運輸・運送などへの用途が増えてきています。今までは、高齢者用電動カートやゴルフカートには容易に使えた直流(DC)モータ(ブラシ付きモータ)が多く使用されてきましたが、最近では、モータ制御性がよく効率が高いブラシレスモータの採用が増えています。ブラシ付きモータより細やかなモータ制御が可能なことで、バッテリーの持続時間が伸びます。ドローンにもブラシレスモータはうってつけです。特に、マルチコプター型のドローンの場合、プロペラの回転数を変えることで姿勢を制御していますから、回転を細やかに制御できるブラシレスモータの利用が有利です。ブラスレス(DC)モータを(DC)を取ってブラシレスモータと呼ぶこともありどちらの呼び方でも同じ意味を表します。 

6.モータの今後について

6-1 次世代技術の進展

 近年ブラシレスモータ(BLCDモータ)の技術革新は加速しておりより高効率で高性能なモータが求められています。次の様な技術が今後の発展の鍵となります。

①高効率化技術の進化(ワイドバンドギャップ半導体の採用)

 BLCDモータはインバータ制御によって駆動されますが、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒素ガリウム)などのワイドバンドギャップ半導体を用いることで電力損失の低減や高周波駆動が可能になりこれによって

  • 変換効率の向上
  • モータの小型化
  • 発熱の低減

といったメリットが期待できます。特に電機自動車(EV)や産業機器向けモータにおいてインバータの高効率化が進むことでBLDCモータの性能がさらに向上します。

②磁化レスモータの開発(レアアースレス(磁石不要)モータ)

 現在のBLDCモータは強力なネオジム磁石を使用していますが、レアアース資源の高騰や供給リスクへ対応として、磁石を使用しない「磁石レスモータ」の開発が進められています。

  • スイッチトリラクタンスモータ(SRモータ):シンプルな構造で耐久性が高く電気自動車や家電製品で採用が増加。
  • 同期リラクタンスモータ(SynRM):誘導モータに近い構造でありながら高効率を実現し、産業用ポンプやファンに採用されています。

6-2 スマート化・デジタル制御技術

BLDCモータは従来の単純な駆動制御から、AI・IoTを活用したスマート制御技術へと進化しつつあります。

①AI・IoTを活用したスマート制御

  • AIによる自己学習モータ制御

モータの動作パターンをAIが解析し最適な駆動制御をリアルタイムで実施。

異常検知・予防保全にも活用され、モータの故障を未然に防ぐ事が可能。

  • IoT連携による遠隔モニタリング

 工場やビルのHVAC(空調)システムでは、BLDCモータの動作データをクラウドに送信し最適なエネルギー管理の実現が可能となります。

②ワイヤレス給電技術との組み合わせ

非接触給電により配線のないモータ駆動が可能となることで、次世代のロボットや医療機器の設計が大きく変わる可能性があります。

まとめ:ブラシレスモータの未来

  • SiC・GaNによる高効率化、レアアース不要のモータ開発が進む
  • EV・産業用ロボット・家電・医療など幅広い分野で市場が拡大・AI IoTによるスマート制御技術が次世代の標準に
  • ワイヤレス給電などの新しい技術の可能性を生むます

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